娘ばかりで後継者不在?家族会議で娘が後継者に名乗り上げ。経営者保証の解除と贈与税ゼロで株式移転

  • 事業承継計画書作成

ご相談内容

お客様情報

社長(70歳)、長女・次女(ともに40歳代)

従業員15名、食品加工業

ご相談の経緯

現社長は、これまで後継者問題に悩んでいましたが(娘に苦労はかけたくないので娘は後継者候補外と考えていました)、70歳を迎え、いよいよ古参の部長に白羽の矢を立てた。しかし、社長の妻には違和感があり(苦労して育ててきた会社を他に渡すのは忍びないという感情と、これまで幾度となく社長と部長が衝突してきた)、また従業員承継をするにも、株式の買い取り資金をどうすれば良いのか分からないということで、私の事業承継セミナーに参加され、相談を経て、事業承継コンサルティングに至りました。

主な状況

・株式の保有比率は社長70%、妻20%、娘2人で10%。
・会社には借入金があり、個人保証がついている。
・自社株式の株価は3,000万円。
・株式を買い取る、もしくは贈与税を支払う資金は、娘や従業員(部長)にもない。

危惧する点

  • 社長の妻の感情(これまで苦労して育ててきた会社を親族以外に渡すことへの違和感)
  • 後継者候補とする部長も、これまで幾度となく社長と衝突することもあり、退職の申し出も何度かあり、これまでも後継者として指名するには躊躇があった。
  • ちなみに、私が次女と面談した際には、社長(父)のことを尊敬し、子育ても手が離れ始めたタイミングもあってか、父の仕事には興味があるということだった。しかし、その時は本気で事業を承継する気持ちは不安もありなかった。
  • 資産総額は比較的高くはないので、事業承継税制の特例措置(納税猶予)を活用するには負担が大きすぎる。

主な対策

① 家族会議を実施し、次女が後継者として決定

  • 後継者は第三者(従業員)にすることを親族全員から合意をもらうことを目的に家族会議を開催。ただ、中小企業の後継者には親族の感情も踏まえ一族の出身者がベターという考えもあった為、裏目的としては、親族内からの立候補を期待(会社の資産・負債・収益状況が分かっていないことが親族が事業承継を躊躇している可能性もあったため)。
  • ちなみに事前に次女とも面談はしており、会社の状況次第では父の後を継いでみたいという意向は確認していた為、家族会議で次女が立候補する勝算もあった。
  • 家族会議で会社の状況(株価評価額、相続税の概算、収益状況、資産や借入金・個人保証など)を正確に伝え、それに対する対策案を提示したところ、次女が入社の意思を表明し、親族一同もそれを歓迎されました。これまで次女がためらってきた原因は、会社の借入金や代表になれば個人保証があるためだった。

② 相続時精算課税方式により早期に自社株を後継者に移転

  • 次女が入社し、一通りの業務を把握してもらい、入社3年目のタイミングで社長交代を実施。株価が比較的高額ではなかったことや、経営承継円滑化法の特例措置の活用は労力がかかることから、相続時精算課税方式で、早期に株式を後継者に贈与する形に。その際、社長への退職金支給や含み損のある有価証券の売却や不良在庫を処分し、株価も押し下げ、贈与時においては、贈与税ゼロで株式の移転を実現(相続時に精算して課税されることには注意)。

③ 経営者保証の解除

  • また経営者保証の解除を目指し「経営者保証に関するガイドライン」に則って、経営基盤強化に取り組み、金融機関からの経営者の個人保証の解除にも応じていただいた。

担当事業承継士よりコメント

「娘だから継ぐのは無理、苦労はかけたくない」という社長の気持ちの一方、いざ急なこと(社長の急逝など)が起こると結果的には娘が何の準備もなく事業を引き継ぐケース(突然型の事業承継)は増えています。従業員承継ももちろん事業承継の有力な選択肢の一つですが、経営者の子供が承継する方が、普段の生活から経営者の想いや考えを聞くことが多く、知らず知らずのうちに経営者としての遺伝子が承継され、従業員承継よりも「会社をなんとかしたい!」という気持ちは大きいものです。
そして、家族会議においては、出たところ勝負ではなく、水面下での根回しが非常重要です。

文責

中谷 健太

株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/認定経営革新等支援機関/補助金コンサルタント

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