• 事業承継コラム

増加する「後継者不足による廃業」本当の原因とは?  ~「少子化の影響」で片づけてはいけない!~

増加する「後継者不足による廃業」本当の原因とは?  ~「少子化の影響」で片づけてはいけない!~

ご存知のとおり、中小企業においては「後継者不足」を理由とする廃業が増加しています。
「休廃業・解散企業の半数以上が黒字企業」であり(東京商工リサーチ「2021年「休廃業・解散企業」動向調査」)、利益が出ていても事業継続を断念するという事態に追い込まれています。

2025年には中小企業およそ127万社が後継者不足に悩まされると言われており(2025年問題)、雇用の減少や取引先の消滅など、その影響は非常に大きく、後継者不足による廃業は、まさに国難、社会的な大きな損失であり、最重要課題と言えます。

(1)60歳代の社長の会社は、まだ約半数が後継者不在

社長年齢別に見た、後継者決定状況を見ると、

社長の年齢

後継者不在

40代

83.2%

50代

70.2%

60代

47.4%

70代

37.0%

80代

29.4%

  •  社長が60歳代でも、約半数近くが後継者不在
  •  社長が70歳代でも、まだ約4割近くが後継者不在
    と言われています。(参考:㈱帝国データバンク「全国・後継者不在企業動向調査(2021年)」)

(2)60歳以上の社長の約2割が「まだ事業承継について考えてもいない」

さらに60歳以上の社長の事業承継の意向別の割合を見ても

意向

割合

まだ事業承継について考えていない

24.5%

現在の事業を継続するつもりはない

35.5%

親族内承継を考えている

30.0%

その他の事業承継を考えている

10.0%

  •  「まだ事業承継について考えていない」60歳以上の社長が、約2割超
  •  「現在の事業を継続するつもりはない」60歳以上の社長が、約3割超

と言われています。(参考:中小企業庁「中小企業白書(2020年版)」)

(3)事業承継の相談はある日突然やってくる

事業承継支援の依頼は、ある日突然やってきます。
実際に事業承継の相談に来られるきっかけで一番多いのが、検査入院などで経営者が「重篤な病気が発覚したり、入院することになったり、自分の健康に不安を感じた時」です。
逆に言えば、それを感じないまでは、事業承継対策に本気にならないことが多いように思えます。
そういった方(経営者)になぜ、今に至るまで事業承継対策に取り組んでこなかったのですか?とお話を伺うと、

「自分はまだまだ元気だと思っていた。そんな簡単に死なないから」
「いずれ誰かふさわしい者が現れて、きっと自然に繋がっていくのだろうと思っていた」
「自分が苦労してやってきた会社は、私の人生の全て。渡すのは忍びない、やれるだけやる」
「自分の収入がなくなるから」
「自分代で終えたらいいと思っていた」

といった意見が多いです。

(4)後継者不足の理由を「少子化による影響」で片づけてはいけない

これまで見てきたように、黒字であっても、後継者不足によって事業継続を断念しているケースが増加していることをお伝えしてきました。

では後継者不足の原因は何なのか?
その大きな原因が

・ 少子化により、そもそも後継者候補が少なくなっている
・ 職業選択の多様化(情報があふれていることもあって、親の会社を当たり前のように引き継ぐ時代ではなくなってきた)

と論じているところも多いですが、それを原因として良いのでしょうか?
社会構造の変化を原因としたところで、自分たちの力だけでは対策のしようがありません。

(5)後継者不在の根本原因は「事業承継の準備不足、取り組むのが遅い」に尽きる

後継者不在は、あくまでも「表面的な」原因であり、私は、「事業承継の準備不足」「事業承継に取り組むのが遅い」が根本的な原因と考えています。

会社は社会の公器です。
後継者不足や業績不振を理由に「自分の代で終えよう」と考える経営者も増えてきましたが、廃業は、そこで働く従業員の雇用、その従業員の家族の生活、取引先にとっても大変悩ましい問題になります。

黒字企業の約半数が廃業しているわけですが、どれだけ事業で収益を伸ばし、功績があったとしても、事業を継続することができなければ経営者としては合格点をつけることができないとも言われています。

~事業がうまくいって、事業承継もうまくいって、ようやく合格点~

だからこそ、できる限り早い段階から、計画的に事業承継に取り組まなければなりません。
準備を始めるのに早すぎるということはありません。
「早めの準備」に勝る取り組みはないのです。
思い立った日が吉日です。

文責

中谷 健太

株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/認定経営革新等支援機関/補助金コンサルタント

なかなか進まない事業承継にお困りの方は、新経営サービスにご相談ください。事業承継と経営革新の専門家が現経営者と後継者の間に入り、相続・節税対策、経営権・知的財産の引継ぎと円滑な事業承継を実現します。