BCP
BCP(事業継続計画)策定のポイントと効果的な取り組み
2023年04月07日
もくじ
BCPが重要視されている理由
昨今、日本国内では地震や大雨による洪水など、毎年のように自然災害が発生していますが、そのような状況下だからこそ、BCPは企業にとって必要不可欠な取り組みとなっています。
実際に過去発生した大型台風では、BCPによって事業を継続した事例も報告されています。
そんなBCPが重要視されている理由を一言で述べると、「企業の事業継続性を保ち、事業の縮小や倒産を防ぐことができるため」となります。
帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルスでの関連倒産は全国で約4,500件に上ります。
世界的なパンデミックにより、社員が出社できず、事業運営が滞る企業が多数発生したのです。また、南海トラフ地震・首都直下型地震等の発生確率の上昇や、台風・大雨による大規模な洪水被害など、自然災害の多い日本では今後も多くの災害が発生する可能性が高いと言えます。
そして、昨今のIT化により、システムや情報インフラに損害が及ぶと、事業継続が危ぶまれる深刻な事態へと発展しかねません。また、通信障害や不正アクセスなどのサイバーテロによる損害も考えられます。
以上のような突発的な緊急事態が発生した際、多くの企業が対応に追われるため、いかに早く商品やサービスの提供を復旧させられるかが企業の生き残りを大きく分けることになります。
そのためには、被害を受けても重要な業務だけは継続できる体制の維持や遠隔地を利用した生産体制・サプライチェーンの確保などが必要です。
また、緊急時にいち早く対応・復旧するだけでなく、被害を受けてもどのような行動の選択肢があるかを、できる限り具体的に明示しておくことが重要です。
そんな時に役立つのがBCPです。BCPを策定していれば、緊急対応のスピードだけでなく、事業の正確性を向上させることが可能です。
そして、早期に事業を復旧することで、お客様や取引先から評価され、新たな顧客の獲得や事業拡大が可能となることから、企業価値の向上や平常時の企業競争力の強化につなげることもできます。
このように、事前にBCPを定めておくで、突発的に不測の事態が発生した際に、できる限りリスクを回避するとともに、スムーズな事業継続を図ることで復旧後の事業縮小や倒産を防止できることが、BCPが重要視されている理由と言えます。
BCP策定の流れとポイント
では、BCPの策定手順とポイントについて確認しましょう。まず、BCPは主に以下の手順に沿って策定します。
BCP策定の基本方針を定める
BCP策定の第一歩は、「何のためにBCPを策定するのか」という基本方針の明確化です。基本方針の立案は、自社の使命や存在意義を再確認することでもあります。
例えば、企業がBCPを策定する主な目的として以下を挙げることができます。
- 従業員とその家族の健康・雇用を守る
- 顧客や取引先からの信用を守る
- 地域経済の活力を守る など
上記に挙げたような目的と自社の経営方針を照らし合わせつつ、BCP策定に向けた基本方針を決定します。
自社の中核事業を選定する
次に、緊急事態の際に優先的に再開・復旧を目指すべき中核事業を明確にしていきます。
緊急事態の際は、当然ながら平常時に行っている事業のすべてを続けることは不可能であるため、平常時を下回る物的・人的資源で事業を継続しなければなりません。
そのため、基本方針に沿って優先して提供すべき中核事業を選定する必要があるのです。
また、中核事業を選定する際に注目すべき主なポイントは以下の通りです。
- 事業が占める収益高・売上高の割合
- 事業の将来性
- 事業の復旧にかかる時間・コスト
- 事業が中断した場合の代替可能性 など
上記の観点をもとに、自社の中核となる事業を洗い出し、そこに物的・人的資源を集中させる体制を構築します。
なお、事業が1つしかない場合には、顧客別に売上高や収益性を考慮し、業務の優先度を検討すると良いでしょう。
中核事業が受ける被害を想定する
災害等が発生した際、自社の中核事業が受ける可能性がある被害について洗い出します。
起こりうる被害を洗い出すことで、事前対策の精度が高まり、被災しても被害を最小限に食い止め、復旧までの時間を短縮できる可能性が高まるためです。
具体的には4つの分野でリスクの洗い出しを行います。
- 人:設備や什器の転倒、建物の倒壊などにより一部の従業員が負傷
- 物:工場や店舗などが大破、倒壊、浸水
- 情報:コンピューターシステムが破損し、重要なデータが喪失
- 金:事業の停止により、売り上げが減少
上記は、中小企業庁が想定した大規模地震による被害の一例です。
河川に近い場合は風水害を中心に被害を想定し、傾斜地に近い場合は土砂災害を想定するなど、自社の状況に合わせて詳細にイメージしましょう。
想定される被害に対する事前対策を検討する
緊急時の被害の想定が完了したら、その被害に対する事前対策について検討します。
緊急時に中核事業を運営しつづけるためには、経営資源(人、物、情報、金)が必要になりますが、その経営資源を確保するために平常時から検討・実施しておくのが事前対策です。
事前対策は、日頃から把握している自社の強み・弱みを踏まえた上で検討することが重要です。経営資源ごとの事前対策の例は次の通りになります。
- 人:安否確認ルールの整備、代替要員の確保
- 物:設備の固定、代替方法の確保
- 情報:重要データの適切な保管、情報収集・発信手段の確保
- 金:緊急時に必要な資金の把握、現金・預金の準備
なお、被害状況によっては、自社単独での復旧が難しいケースもあるかもしれません。
工場の場合は他の製造拠点に製造を依頼したり、普段取引のない調達先から原料を調達したりするなどの代替手段を考えておくことも重要です。
早期復旧につなげるために同業他社との協力や、災害復旧会社の活用も含めて対策を立てておくと良いでしょう。
緊急時における体制を整備する
最後に、緊急時の適切な対応を行うための責任者と対応方法を整理します。
緊急事態発生時に、スムーズな対応を行うためには、当日における初動対応や、復旧に向けた対応など、さまざまな状況下において、会社の対応に関する意思決定や指揮命令を行う統括責任者を決定しておく必要があります。
また、万が一、統括責任者が不在や被災してしまう事態も考慮して、代理人も決めておきます。
なお、社員が冷静に行動に移れるよう、どの対策を、どのような順番で実行するかも決めておけると良いでしょう。
BCP運用のポイント
定期的にBCPを見直し、アップデートし続ける
BCPは最初から高いレベルのものを策定する必要はありません。
寧ろ、運用を通じて実効性の高いものになるようアップデートしていくことが重要です。
中小企業庁は「定着」と「見直し」からなる運用を提案しています。
- BCPの定着:従業員にBCPを理解してもらうため、研修をはじめとする教育活動を行う
- BCPの見直し:経営状況の変化(商品・サービスの変更、生産ラインの組み替え、人事異動など)に応じて内容を見直す
また、見直す際には「RTO」と「RLO」という2つの指標を活用します。
- RTO(Recovery Time Objective・目標復旧時間):何日、何週間、何ヵ月で復旧させるか
- RLO(Recovery Level Objective・目標復旧レベル):平常時の何%ぐらいの操業水準まで復旧させるか
上記の指標をもとに、「RTOをできるかぎり短く、RLOをできるかぎり高く」を目標に、計画を見直すことが重要です。
社内への周知や教育を実施する
緊急事態が発生した際、社員が自分達のすべきことを明確に理解できていない場合、対応が後手に回り、結果、事業継続や早期復旧に甚大な影響を及ぼすことになります。
そのため、社員に対しては、定期的な教育や訓練を実施し、緊急事態が発生した際も冷静に行動が取れるように準備しておくことが大切です。
具体的には、BCP策定後に試行期間を設け、社内ルールの周知や社内教育、訓練を実施すると同時に、様々な意見や新たな課題を吸い上げます。
そして、「収集した声や意見を検証・協議」→「必要箇所を修正」→「再運用」といったPDCAサイクルを回し、BCPをアップデートしていくことで、高い実行性と効果を生むBCPを作り上げることができるのです。
BCP(事業継続計画)策定は事業計画プロにお任せください
新経営サービスでは、豊富な実績・経験をもとにBCP(事業継続計画)の策定支援を行っています。
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詳しくは、「BCP(事業継続計画)策定支援」ページをご確認ください。