経営革新計画
経営革新計画の承認を確実にするためのポイントを解説
2022年01月18日
中小企業庁や国税庁、地方自治体、公的金融機関などは、中小企業などを支援するために、数多くの補助金や事業支援、税制優遇、融資などを実施しています。
これらの支援策は、中小企業などの資金繰りを改善させ、利益をダイレクトに増やし、経営を強化するので、経営者様は積極的に利用を検討したほうがよいでしょう。
しかし、いずれの支援制度も税金で運営しているので、どの企業でも簡単に利用できるわけではなく、厳格な審査が行われます。
厳しい基準の1つに、経営革新計画の策定と承認があります。
経営革新計画の承認率や応募数などは公表されていませんが、承認件数からみると、応募数も倍率も高いと考えられます。
非承認となっても、経営革新計画を修正して再申請することは可能ですが、それは労力も時間もかかるので、やはり確実に承認されることを目指したほうがよいでしょう。
承認を確実にする方法を考えていきます。
もくじ
承認済みの経営革新計画を持っている企業は一握り
経営革新計画は、中小企業などが新事業を行うことで経営の向上を果たす計画です。ただ、企業が経営革新計画をつくっただけでは法的な効果が生じません。
中小企業などは、経営革新計画をつくったら都道府県などの審査を受けなければなりません。
都道府県などが承認した経営革新計画しか、補助金などの申請に使うことができません。
承認率については、正確なデータはありません。承認申請の件数が公表されていないからです。
ただ承認件数(承認済になった件数)は各都道府県が公表していて、主な地域の年間承認件数は次のとおりです。
<経営革新計画の承認件数>
- 東京都:663件(2020年度)
- 大阪府:152件(2020年)
- 京都府:63件(2020年度)
日本には350万社以上の中小企業があるので、承認された経営革新計画を持っている企業はほんの一握りであることがわかります。
簡単に承認されない3つの理由
経営革新計画が簡単に承認されない理由は、3つあります。
- 税金で運営していて支援メニューが豊富だから
- 新事業を明確に示さないとならないから
- 数値目標を掲げ、目標達成時期を示さないとならないから
1つずつみていきましょう。
税金で運営していて支援メニューが豊富だから
そもそも補助金や公的融資などを獲得することは簡単ではありません。なぜなら、このような支援制度は税金で運営していて、一企業の利益に直結するからです。
獲得した補助金の額は会計上、ほぼそのまま利益になりますが、税金で企業の利益を増やすことは本来はしてはいけないことです。
ではなぜ補助金や公的融資などが存在するのかというと、特定の企業の利益を増やして成長させることが日本経済の発展に貢献して国民の利益になることがあるからです。
税金で運営しているために、政府や行政機関や公的金融機関には、「支援策の対象企業には積極的に支援しなければならないが、対象外の企業は支援してはならない」というルールが課されます。
また、経営革新計画が必要になる支援策には、補助金、融資の優遇措置、海外展開に伴う資金調達の支援措置、投資支援、販路開拓の支援など、さまざまなメニューがあります。
もし、不適切な経営革新計画を承認してしまうと、これらの支援メニューを不適切に利用されてしまうかもしれません。
こうした事情から、支援策の利用には高くて厚いハードルが置かれ、その1つが経営革新計画の承認というわけです。
新事業を明確に示さないとならないから
経営革新計画には新事業を盛り込まなければなりません。
事業規模が大きくなく従業員数が限られている中小企業などは、簡単に新事業を始めることはできません。新事業に取り組まなければ、そもそも経営革新計画をつくることができません。
京都府が承認した経営革新計画には、例えば次のようなものがあります。
<実際に承認された経営革新計画のテーマ>
- 蓄積したノウハウを結集した2大製品の開発・製品化による新たな市場獲得
- 半製品からつくる見込み生産によって、低コストと短納期を実現した、デザイン性の高いオリジナル照明製品の開発
- ポータブル3DスキャナーとCADを連携させた施工図面制作手法を新たに開発し、他社との差別化を図る
- 効率的な鉄道架線の保守・点検業務と山間部における災害リスクの可視化の実現
どれも「簡単な新事業」ではありません。簡単な新事業では、審査で弾かれてしまうでしょう。
数値目標を掲げ、目標達成時期を示さないとならないから
経営革新計画には必ず盛り込まなければならない項目があり、そのなかに次の3つがあります。
- 経営革新の目標
- 経営革新による経営の向上の程度を示す指標
- 経営革新の計画期間
経営革新計画には、目標を書かなければならず、しかもその目標の達成は指標で示さなければなりません。つまり、数値目標を示さなければなりません。
さらに計画期間を明示しないとならないので、経営革新の事業(新事業)は期間内に成果を出さなければなりません。
経営者様なら、数値目標と目標達成時期の両方を示すことがどれだけ重大なことか理解できると思います。期限内に目標を達成できないとき、経営責任を問われるからです。
そのため数値目標も目標達成時期も「甘め」に設定したくなりますが、それでは経営革新計画は審査をパスしないでしょう。
経営革新計画の承認を得るためのポイント
高くて厚い壁ですが、超えられない壁ではありません。
都道府県に承認される経営革新計画のつくり方を紹介します。
新事業を考案する
経営者様は、まずは最も難しい課題の解決から取り組んだほうがよいでしょう。
新事業の考案です。
なぜ新事業の考案が最優先になるのかというと、経営革新計画に必ず盛り込まなければならないこともありますが、企業の存続にとって欠かせないからです。
経営革新計画や補助金などを抜きにしても、中小企業は新事業を考えなければなりません。
経営者様は経営戦略のなかに新事業を盛り込み、それを経営革新計画に書き写せばよいわけです。
数値目標と目標達成時期を定める
数値目標と目標達成時期を定めることも、「経営革新計画や補助金などを抜きにしても」経営者様がやらなければならないことであり、経営戦略に盛り込むべき項目です。
このように考えていくと、経営革新計画は、わざわざつくるものではなく、経営者様が自社の将来ビジョンを描くなかで自然にできてくるもの、といえます。
普段から、新事業を考え、目標を社内外に示し、プロジェクトの期限を区切っている経営者様なら、経営革新計画づくりの第1ハードルはやすやすと越えることができるはずです。
ヒト・モノ・カネをどう手配するか考える
経営革新計画を審査する都道府県の担当者は「本当に実現できるのか」という目線を持っています。
「確かに新事業である、目標も明確だ、期限も区切ってある。でも実現できるのか」と考えています。
したがって経営革新計画の内容は「~だから、この目標を期限内に実現できるといえます」としなければなりません。
経営革新計画に信憑性を持たせるには、ヒト・モノ・カネをどのように調達するか示さなければなりません。
例えば、新事業を始めるのであれば、既存の従業員の人数やスキルだけでは足りないかもしれません。
新事業を始めるには新しい機械や設備や販売ルートが必要になるでしょう。
そして新事業に着手するには投資が必要で、しかも新事業なのでしばらくは利益を期待できません。利益が生まれるまで新事業の活動を支えるには、これまでより多くの資金が必要になります。
都道府県の審査担当者は「これだけの規模の事業を新たに始めるのに、人手は足りていますか、設備は十分ですか、お金はありますか」と問います。
経営者様は経営革新計画に、その問いに対する答えを用意しておかなければなりません。
頼りになる認定支援機関を選ぶ
経営革新計画づくりは、中小企業などの経営者様にとって難題になるはずです。
そこで中小企業庁は、経営革新計画づくりをサポートする仕組みをつくりました。
それが認定経営革新等支援機関(略称、認定支援機関)です。
中小企業庁は、中小企業支援に関する専門的知識と実務経験を有する税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士、商工会、商工会議所、金融機関などを、認定支援機関に認定します。
そして認定支援機関は、中小企業などの経営革新計画づくりをサポートすることができます。
経営革新計画は、企業が自らつくることもできますが、盛り込まなければならない項目を、都道府県が求める高いレベルで盛り込むには、認定支援機関の力を借りることは有効です。
そして都道府県の審査担当者も、認定支援機関のサポートを受けてつくられた経営革新計画かどうかチェックしています。
頼れる認定支援機関を選ぶことは、経営革新計画づくりの第1歩となるでしょう。
新経営サービスは認定支援機関です。だから経営革新計画づくりをお手伝いします
新経営サービスは、認定支援機関です。
新経営サービスはこれまで、中小企業の経営者様の経営革新計画づくりをサポートして、承認を得てきました。
新経営サービスなら、経営革新計画が条件になっている補助金や融資の優遇措置、経営支援策などを経営者様にアドバイスできます。
「承認されて終わり」ではなく「承認されてからのこと」も、新経営サービスは提案していきます。