中小企業の経営ノウハウ
なぜ今、中小企業に新規事業が必要なのか「成功させるポイントを解説」
2022年04月25日
なぜ今、中小企業に新規事業が必要なのでしょうか。新規事業を興すことは難しく、軌道にのせるだけでも相当な時間と手間とコストがかかるのに、100%成功する保証はありません。
それでも中小企業が新規事業開発に取り組んだほうがよいのは、危機が迫っているからです。
国は中小企業が置かれている状況を「当面の需要や売上の回復が期待しがたい」「働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げなど今後複数年にわたり(経営に影響を与えかねない)制度変更に直面する」と述べています(*1、2)。
中小企業がこうした難しい状況に打ち克つには、新規事業を立ち上げて会社を強く太くしていかなければなりません。
この記事では、中小企業にどのような危機が迫っているのかを紹介したうえで、新規事業を成功に導くためのポイントを解説します。
*1:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo005.pdf
*2:https://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/10th/reiwakoubo_20220216.pdf
もくじ
新規事業が必要になるほどの危機とは
中小企業庁の補助金の1つに事業再構築補助金があるのですが、その公募要領に次のように書かれてあります(*1)。
<事業再構築補助金の公募要領から一部抜粋>
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待しがたいなか、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編、またはこれらの取組を通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業などの挑戦を支援する |
国(中小企業庁)は、コロナ禍によって中小企業の置かれている状況がさらに悪化していると危惧(きぐ)しています。
また、ものづくり・商業・サービス補助金(以下、ものづくり補助金)の公募要領にも次のように書かれてあります(*2)。
<ものづくり補助金の公募要領から一部抜粋>
中小企業・小規模事業者などが今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など)などに対応するため、中小企業・小規模事業者などが取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する |
ここには危機の内容がより具体的に書かれてあります。
働き方改革も被用者保険の適用拡大も賃上げもインボイス導入も、中小企業に大きな負担をかけるはずです。しかし時代と国の要請から、中小企業はそれらに応えていかなければなりません。
そして国は、危機に直面する中小企業に対して、1)新分野展開、2)業態転換、3)事業・業種転換、4)事業再編、5)規模の拡大、6)革新的サービスの開発、7)試作品開発、8)生産プロセスを改善するための設備投資、などを行うよう求めています。上記の2つの補助金も、これらを支援するためのものです。
1~8のうち1)新分野展開、2)業態転換、3)事業・業種転換、6)革新的サービスの開発、7)試作品開発は新規事業の立ち上げといってもよいでしょう。
だから中小企業には今、新規事業が必要である、といえるわけです。
中小企業が新規事業を立ち上げるときの手順
中小企業が新規事業を立ち上げるとき、手順に沿って進めるとプロジェクトがスムーズに進み、成功する確率が高くなるでしょう。
<中小企業が新規事業を立ち上げるときの手順>
マーケティング、市場調査、消費者アンケート ↓ 企画、アイデア出し ↓ プロジェクトの立ち上げ ↓ 事業性の評価(初回) ↓ 予算とスタッフの確保 ↓ 開発、試作品の作成、実証実験、β版の販売 ↓ 事業性の評価(2回目) ↓ 本格投入(新規事業の完成) |
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それぞれどのような業務になるのか解説します。
マーケティング、市場調査、消費者アンケート
企業や経営者がつくりたい新たな商品やサービスと、市場や消費者が求める商品やサービスの間にズレがあると、せっかく新商品や新サービスで新規事業を立ち上げてもうまくいかないでしょう。
そのズレを事前に埋めるのが、マーケティングや市場調査、消費者アンケートです。
マーケティングとは、顧客の本音や心理を探り、顧客が求める商品やサービスを考える作業です。そして市場調査を行うことで、市場に何が足りなくて何が余っているのかがわかります。消費者アンケートを行えば、満足しているものと不満に感じているものがわかります。
企画、アイデア出し
マーケティング、市場調査、消費者アンケートの結果を分析すると、自社がつくるべき新商品や新サービスの姿がみえてきます。
その段階で社内で企画会議やアイデア出し会議を開いて新規事業の「種」を探していきます。
プロジェクトの立ち上げ
どのような新商品・サービスをつくっていくのかを決めたら、プロジェクトを立ち上げます。
プロジェクトの立ち上げとは具体的には、責任者とスタッフを決めてプロジェクトチームをつくることです。
中小企業であれば、プロジェクトチームのリーダー(責任者)に経営者が就任してもよいでしょう。もちろん任せられる人材がいれば、その人にリーダーになってもらってもかまいません。
事業性の評価(初回)
プロジェクトチームが新規事業案を作成したら、経営者や経営陣は、その企画に事業性があるかどうか評価します。つまり売上高を確保できるのか、利益を上げることができるのか、事業を継続していけるのか、雇用を増やせるのか、会社を強くしていけるのかを判断します。
予算とスタッフの確保
経営者が「新規事業案には事業性がある」と評価、判断したら、経営者は予算とスタッフを確保します。
プロジェクトチームが仕事をするには、人・モノ・カネが必要になります。
プロジェクトチームは、新たなメンバー(スタッフ)を加えてより大きな組織になります。
開発、試作品の作成、実証実験、β版の販売
プロジェクトチームは新商品・サービスの開発に取り組みます。
開発に一定の成果が出たら試作品をつくり、試験を行います。
試験に一定の成果が出たら、実際の市場で実証実験を行ったり、β版を販売したりします。
実証実験を行うことで、トラブルが出たり課題がみつかったりするので、本当に事業として成立するのかどうかがわかります。
β版とは、完成品と試作品の中間くらいので出来の商品のことで、本物の消費者にβ版であることを伝えたうえで無料で配布したり格安で販売したりして実際に使ってもらいます。
事業性の評価(2回目)
実証実験やβ版の販売が完了した時点で、経営者は「本当に事業化するのかどうか」決めます。
新規事業をつくるのはプロジェクトチームのメンバーたちですが、新規事業の成否に責任を負うのは経営者です。
本格投入(新規事業の完成)
経営者がゴーサインを出したら、新商品・サービスを市場に本格投入します。
これで新規事業は完成します。新規事業が立ち上がりました。
しかしここではまだ「完成しただけ」であり、「成功した」とまではいえません。
そこで次に、立ち上げた新規事業を成功に導くためのポイントを紹介します。
新規事業を成功させるためのポイント
せっかく新規事業を立ち上げたものの、しばらくして撤退に追い込まれることがあります。
これは本業でもいえることですが、経営者であれば、事業を立ち上げることより事業を継続させることのほうが断然難しいことを知っているはずです。
ここでは新規事業を成功させるためのポイントとして、以下の5点を紹介します。
- 中長期の視点
- 資金確保
- PDCA
- 社外の経営資源
- M&A
1つずつみていきます。
5年10年の中長期の視点が必要
ある会社が新規事業を立ち上げて失敗したものの、別の会社が同じ事業を手掛けて成功することは珍しくありません。
新規事業は市場や消費者にとっても新しいものなので、いくらよいものでも短期間で浸透するわけではなく、そのためすぐに成功するとは限りません。
5年10年経ってようやく日の目をみた新規事業はたくさんあります。
経営者は中長期の視点を持って、新規事業開発に臨みましょう。
資金確保
中長期の視点を持つとは、新規事業が5年10年にわたって黒字化できなくてもあきらめずに継続・改善していくことです。
そのため資金が必要です。
中小企業が新規事業を始めるときの資金調達方法についてはあとであらためて解説します。
PDCAサイクルを回す
計画(Plan)→実行(DO)→評価(Check)→改善(Action)を繰り返すPDCAサイクルは、新規事業を立ち上げたあとも回していかなければなりません。
新規事業を始めたものの顧客の反応が芳しくなかったら、改良の計画を立てて実行して評価して改善していきます。
そしてこれが意外に重要なのですが、新規事業を立ち上げてすぐに成功したときも、PDCAを回す必要があります。
新規事業を立ち上げてすぐに成功した場合、まぐれ当たりの可能性があります。もしその成功がたまたまだったら、その事業は長続きしません。
「なぜ新規事業なのに最初からヒットしたのか」を調べることで、事業を継続させるためのヒントがみつかります。繰り返しになりますが、事業は興すことより継続させることのほうが難しいのです。
社外の経営資源をフル活用する
新規事業の立ち上げでは、社内の経営資源をフル活用すると思いますが、社外の経営資源も有効に使っていきましょう。
例えば、高い技術力を持っているのに販売が弱い企業は、販売を外注してはいかがでしょうか。インターネット通販などのEC事業者は、インターネット上で売れるモノを探しています。EC事業者とタッグを組めば、販売手数料を支払うことで多くの商品を売ってもらえます。
そして顧客の購買力も外部の経営資源と考えることができます。顧客に自社のファンになってもらえれば、SNSなどでクチコミを広げてもらうことができます。これは宣伝を手伝ってもらうのと同じです。
そして最近では、同業者も外部の経営資源になります。つまり、ライバル企業と協力する方法です。
例えば、トラックメーカーのライバルである日野自動車といすず自動車が水素分野で協力したり、ビール大手4社が共同配送に取り組んだりしています(*3、4)。
少子高齢化と景気低迷に見舞われた国内市場は、大手でも同業者協業を進めないと生き残れない状態です。「いわんや中小企業をや」です。
*3:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC287O80Y2A220C2000000/
*4:https://www.gs1jp.org/forum/pdf/2018_beergroup.pdf
M&Aも視野に入る
新規事業の立ち上げで「最後のピース」が足りないことに気がついたら、M&A(合併と買収)を検討してもよいかもしれません。
新規事業は「新」というだけあって鮮度が重要です。つまり、新規事業は「やる」と決めたら早く開始したほうがよい、といえます。
M&Aはいわば時間を買う経営手法なので、新規事業を始めるまでの時間を短縮できます。
新規事業に必要な資金の調達方法
新規事業に必要な資金の調達方法として、補助金と融資を紹介します。
ものづくり補助金と事業再構築補助金
冒頭で紹介したものづくり補助金と事業再構築補助金は、新規事業を始める中小企業にピッタリはまるはずです。
ものづくり補助金は、中小企業などが革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善を行うときに設備投資が必要になったら、その費用の一部を国が補助する内容です。補助額は最大3,000万円です。
事業再構築補助金は、事業の再構築を図ることで中堅企業に成長しようとしている中小企業や、海外展開を強化する中小企業を支援するもので、補助額は最大1億円です。対象となるのはコロナ禍によって売上高が大幅に減少した中小企業などです。
事業再構築とは、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編、雇用の拡大、生産性の向上、企業規模の拡大などのことを指します。
補助金はそのまま運転資金や設備投資に使え、しかも返済の必要がないので、実効力が高い資金調達法といえます。
日本政策金融公庫の新事業活動促進資金
新規事業の立ち上げに取り組む中小企業を支援する融資は複数ありますが、ここでは日本政策金融公庫の新事業活動促進資金を紹介します。
新事業活動促進資金は、経営革新計画や経営力向上計画の認定を受けた企業や、新たに経営の多角化や事業転換を図る企業などに対し、最大7,200万円を融資します。
利率は年1.41~2.55%。返済期間は、設備資金は20年、運転資金は7年で、いずれもそのうち2年は返済を据え置くことができます。
新経営サービスは企業の新規事業立ち上げをサポートします
経営者様が「よし新規事業を立ち上げるよう」と決断しましたら、ぜひ新経営サービスにご一報ください。
新経営サービスには、中小企業様の新規事業立ち上げをサポートするメニューがそろっています。
まずは気軽に無料相談をご利用ください。新規事業を立ち上げるために何が必要で、今何が足りなくて、新経営サービスに何を頼ることができるのかがわかります。
相談していただくことが、新規事業プロジェクトの第一歩目になります。