資金繰り
新規事業にメリットが多い!「資本性劣後ローン」とは
2021年12月03日
一般的な借入や補助金に代わる、資金調達の選択肢「資本性劣後ローン」をご紹介します。
資本性劣後ローンは、日本政策金融公庫などが行う融資商品です。融資商品と言っても、一般的な融資商品とは大きく異なる特徴があり、特に新規事業の立ち上げを考える企業にとってはメリットが多く、魅力的な制度です。
資本性劣後ローンとは
新規事業等に取り組む中小企業の「安定資金の確保」と「財務体質の強化」のために、資本性資金(※)を供給する融資制度です。
※資本性資金とは、負債ではなくみなし資本として調達できる資金です。
資本性劣後ローンは以下のような企業にお勧めです。
- 事業再構築補助金に採択された企業で、追加資金や立替資金が必要な企業
- 事業再構築補助金にチャレンジしたが、不採択となった企業
- 地域未来牽引企業として選定を受けている企業
- 財務体質がぜい弱(自己資本比率が低い)であり、事業活性化に資金を要する企業
- 金融機関からの借入を優位に進めたい企業
- 当面の間、返済不要の資金を活用し、資金繰りを安定化させたい企業
新規事業を立ち上げる企業にとっての資本性劣後ローンの活用メリットは以下の通りです。
- 金融機関からの資金調達が容易になる
- 無担保・無保証人
- 新規事業立上げ時の赤字を考慮した金利設定(業績低調時には低金利)
- 最大3億円、最長15年間、返済不要(期日一括返済)であり、当面資金繰りが安定する。
ここからは、日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度(資本性劣後ローン)」についての解説を行っていきます。
資本性劣後ローンと一般的な融資商品の違いは以下の通りです。
もくじ
①利率
資本性劣後ローンの利率は、業績連動型となっています。
業績が低調なときには、金利が安くなり、業績が好調な時には金利負担が大きくなります。四半期に一回、経営状況の報告が求められ、決算の業績に応じて、毎年利率が見直されます。
適用利率は以下の通りです。
借入金4,000万円以下の場合(国民生活事業)
借入金4,000万円超3億円以下の場合(中小企業事業 新事業立上げや既存事業の強化のための資金の場合)
②審査上重要なポイント
資本性劣後ローンは、「技術・ノウハウ等に新規性と必要性があるか、将来性や実現可能性、地域経済の活性化につながるか」を事業計画書(※)上で表現する必要があります。
ここが一般的な融資商品との大きな違いです。
※日本政策金融公庫のHPには、事業計画書のフォーマットが公開されていますが、上記のことを表現するにはフォーマットの項目だけでは不十分です。
担当窓口に問い合わせたところ、事業計画書のフォーマットに頼る必要はないとのことでした。
日本政策金融公庫フォーマットリンク
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/jigyou_tyousenn191029c.pdf
また「技術・ノウハウ等に新規性があるか、将来性や実現可能性、地域経済の活性化につながるかが問われること」、「資本性劣後ローンは、中小企業庁の金融政策の一環であること」から、同じく中小企業庁の政策である事業再構築補助金や地域未来牽引企業との相性が良いと考えられます。
そのため、事業再構築補助金採択済み企業や、不採択であっても事業計画の見直しにより、資本性の資金調達を行いたい企業、地域未来牽引企業選定企業にはお勧めの制度です。
③返済方法
期日一括返済であり、期間中は利払いのみとなります。期間中は返済不要ですので、当面の資金繰り安定化に寄与します。
④金融検査上の取り扱い
本制度の大きな特徴の一つです。資本性劣後ローンは金融検査上、負債ではなく自己資本としてみなすことができ、金融機関から見た自己資本比率を引き上げることができます。
つまり、資本性劣後ローンで資金調達を行えば、金融機関の格付けが上がり、取引金融機関からの資金調達の難易度が下がり、かつ借入条件も現状より優位な条件で借入ができるようになります。
⑤担保・保証人
資本性劣後ローンは、担保も保証人も不要です。
最後に資本性劣後ローンのメリット・デメリットをまとめます。
メリット
- 業績低調時に、金利負担が少なくなる
- 借入期間中の元金返済不要
- 取引金融機関から借入がしやすくなる
- 無担保・無保証人
デメリット
- 業績好調時には、金利負担が大きい
- 四半期に一回、経営状況の報告が必須
資本性劣後ローンは、特に新規事業の立ち上げや財務体質を改善したいと考える企業にとってはメリットが多く、魅力的な制度です。ぜひ資金調達の選択肢として、検討してみてはいかがでしょうか。
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