資金繰り
一般の借入とは異なる資本性劣後ローン特有の留意点
2021年12月10日
今回資本性劣後ローンを検討される際に注意が必要な点について解説を行います。
資本性劣後ローンは、一般の借入とは異なり、借入期間中の返済は不要ですが、返済が始まる前に出口戦略を立てておく必要があります。
特に新規事業の立ち上げや、資本力が成長過程にあるベンチャー企業にとっては魅力的な借入制度ですが、以下のようなデメリットがありますので、注意しましょう。
もくじ
資本性劣後ローンのデメリット
①既存ローンの借り換えはできない。
②繰り上げ返済ができない。
③償還期限が5年を切ると、みなし資本が毎年20%ずつ減少。
④出口戦略が必要。(多額の借入を一括返済する用意をしておく必要がある)
①既存ローンの借り換えはできない。
現在借りている資金が一定期間返済不要になると魅力的ですが、残念ながら既存ローンの借り換えはできません。あくまでも新規借入のみが対象となります。
②繰り上げ返済ができない。
借入期間中の繰り上げ返済はできません。ですので、返済期日に一括返済ができるよう、資金を蓄積もしくは、別の手段で資金を確保しておく必要があります。
③償還期限が5年を切ると、みなし資本が毎年20%ずつ減少。
以下の図のように、償還期限が5年を切ると、みなし資本が毎年20%ずつ減少します。
例えば、借入期間10年、借入金額5000万円の場合、借入後5年経過時点からみなし資本が1000万円ずつ減少します。それは、つまり毎年徐々に金融機関から見た資本力が減退することを意味します。
対策としては、以下の3点です。
- できるだけ長期の期間での借入を打診すること
- 地元の金融機関に日本政策金融公庫との協調融資を打診し、地元金融機関からサポートを受けられる状態にしておくこと
- 償還期限が5年を切るまでの間に、利益が取れる体制を作り上げることです
利益が積み上がれば、純資産の利益準備金が増えます。また、それには、実現可能性の高く、収益性を伴う事業計画策定と、実行力のある組織づくりが必要です。
④出口戦略が必要。
多額の借入を一括返済する用意をしておく必要があるため、出口戦略を考えておく必要があります。
出口戦略には、以下のような例があります。
- 利益を積み増し、自己キャッシュを蓄えておく。
- みなし資本がなくなる前に、他の金融機関からできるだけ長期の借入を行う。
- ベンチャーキャピタルから資本注入。
- 株式上場。
資本性劣後ローンは使い方次第で、多くの魅力がある借入制度ですが、以上のように留意すべきことが多いです。ただ、以上の留意点をクリアできる体制を作り上げることができれば、結果、事業は着実に成長できている状態になります。
計画的な事業運営で、着実に事業を成長させる良いきっかけになる制度です。ぜひ参考にしてください。
本件に関するご相談
また、実現可能性の高く、収益性を伴う事業計画策定と、実行力のある組織づくりについてのご相談はこちらから
資本性劣後ローン利用事例(日本政策金融公庫)
- ベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をしたが、事業化に至るまで少額の運転資金が必要となった。少額だとVCから調達しにくいので、日本公庫から資金を調達した。
- VCからの出資ばかりに頼っては、VCの株式数のシェアが高くなり、経営の関与度合が高まる。経営権を維持するためにも、日本公庫からも資金を調達した。
- 他社での経営実績を買われ、当社の代表取締役を務めているが、当社の株式を保有していないため、借入にあたって、連帯保証人になることに抵抗がある。公庫の資本性劣後ローンであれば、無担保・無保証人であるため、安心して利用できる。
- 今後、銀行からの融資も考えている。創業時の赤字による資本毀損を日本公庫の資本性劣後ローンによりカバーし、民間金融機関からの支援に繋げたい。
- クラウドファンディングにより試作品の開発資金を調達し、製品ニーズのマーケティングを実施した。相応のニーズが見込まれることから、量産化に向けた資金として資本性劣後ローンを利用した。
その他事例
- J-Startupプログラム選定先、中小機構ファンド出資先、VC投資先等、高い成長が期待される企業
- リスケ先、金融機関による事業再生計画策定企業
- 一時的な資金繰り悪化、自己資本比率が悪化、債務超過企業
- 新事業への投資が必要な企業
本件に関するご相談は以下からどうぞ