中小企業の経営ノウハウ
「新商品開発」は新規事業なのか
2021年11月20日
「新商品開発は新規事業ではないのか?」といった声を聞くように、新商品開発は新規事業なのでしょうか?
そこで、アンゾフの成長マトリックス(製品と市場の二軸、新規と既存の二軸を元に表を作り各々を「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」に分類するマトリックス)で、新規事業とは何かを考えてみたいと思います。
既存市場×既存商品=「市場浸透」・・・当然のことながら新規事業ではない
新規市場×新規商品=「多角化」・・・典型的な新規事業といえる
新規市場×既存商品=「新市場開拓」・・・例えばBtoC向けの既存商品をBtoB(業務用向け)に展開したり、海外進出することは、新しい市場(新たな顧客層の開拓)に繋がり、新規事業といえる
既存市場×新規商品=「新商品開発」・・・一般的には既存市場内での新商品開発は、新たなステージではないため、新規事業とは言えないが、これまでの顧客と全く異なる場合は、新規市場寄りとなり、新規事業と言える。
つまり、新商品開発でも
従来ビジネスモデルを変えずに、既存事業の経営資源だけを活用した新商品・新サービスは、新規事業とは言いにくいと考えます(既存の収益の仕組みをそのまま使って、新しい商品を開発・展開することは、単に商品ラインナップが増えるだけ)。
例えば、飲料メーカーが新しいブランドの缶コーヒーを発売したり、ペットボトルを出したりするといった類のものは、ほぼ既存事業のビジネスモデル並びに経営資源活用になる場合が多く、新商品ではあるが、既存事業の範疇です。
新商品開発が新規市場にあたるかどうかは、
既存のビジネスモデルや経営資源をそのまま使わない場合に該当する
平たく言うと
「新しい顧客に」
「新しい商品・サービスを」
「新しいやり方で」
取り組みを行う場合に新規事業であるといえましょう。
それに当てはまる場合は、新商品開発でも新規事業といえます。
実際には、その企業にとっての新規事業かどうかは主観的なもので決まる
このように新規事業と新商品は区分することができそうですが、
実際には、
「新規事業」と言う存在は、その企業のリーダーが新たな事業を興すと言えば、それは新規事業となるでしょう。
このように、それぞれの企業で新規事業の定義は、主観的なもので決まると言わざるをえません。
ニッチな新規事業とは「この世界で誰もやったことがない」ものを指すのか
中小企業は「シロイワヤギ」のように、小さな市場であっても、ほかが参入しにくい独自のポジションを築く必要があり、そのような小さな市場(ニッチ市場)は、未開拓の市場ではなく、「既に市場」として現存していることをお伝えしてきました。
ニッチな新規事業とは「この世界で誰もやったことがない」ものを生み出さなければならないといった「発明」的な感覚をお持ちの方も中にはいますが、これでは思考が停止し、なかなか前に進むことができません。
ニッチな新規事業の『新規』という言葉は「この世界で誰もやったことがない」と言う意味でとらえる必要はなく、「これまで自社で取り組んだことがほとんど無い」という程度に捉えれば良いでしょう。
そう考えれば、「自社で取り組んだことがない」事業は、この世の中にいくらでもあるはずです。