経営革新計画
経営革新計画とは、会社の道しるべであり、支援制度を利用するときに必要
2021年12月07日
中小企業の経営者や総務部長であれば「経営革新計画」という言葉を聞いたことがあると思います。
ただ、経営革新計画の定義まで知っている方は、それほど多くないのではないでしょうか。
経営革新計画は、中小企業庁などの支援制度を使うときに必要になるだけでなく、企業経営の道しるべになるものです。
この記事では、経営革新計画の概要を紹介します。
もくじ
この計画がないと支援制度が使えない:事前承認が必要
経済産業省の外局である中小企業庁などは、中小企業の経営を支援する制度を数多く持っています。
その支援制度の利用を希望する中小企業は申請を行うわけですが、そのとき経営革新計画が必要になることがあります。
そして経営革新計画は、支援制度を利用する前に中小企業庁の承認を得ておかなければなりません。
中小企業が経営革新計画をつくろうと考えたら、まずは都道府県の商工部署や地元の商工会や商工会議所などに相談することになります。
その後、サポート機関が決まるので、その支援を受けながら経営革新計画を作成します。サポート機関については後述します。
実際に経営革新計画の承認の事務を行うのは都道府県になることが一般的です。まれに、経済産業省の地方機関が承認することもあります。
いずれの場合でも承認されれば、その経営革新計画は「有効」になります。
どのような支援があるのか
経営革新計画の添付が必要となる中小企業支援策は、都道府県によって少し異なります。例えば東京都と北海道と福岡県には、次のような支援策があります(*1、2、3、4)。
<東京都の場合>
- 政府系金融機関による低利融資制度
- 中小企業信用保険法の特例
- 中小企業投資育成株式会社法の特例
- 起業支援ファンドからの投資
- 特許関係料金減免制度
- 海外展開事業者への支援制度
- 東京都の関連制度(制度融資、専門家フォローアップ、優秀賞)
- 市場開拓助成事業
<北海道の場合>
- 保証・融資の優遇措置
・道による融資制度
・信用保証の特例
・日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
・高度化融資制度
・食品等流通合理化促進機構による債務保証
- 海外展開に伴う資金調達の支援措置
・スタンドバイ・クレジット制度
・中小企業信用保険法の特例
・日本貿易保険(NEXI)による支援措置
- 投資・補助金の支援措置
・企業支援ファンドからの投資
・中小企業投資育成株式会社からの投資
・経営革新関係補助金
- 販路開拓の支援措置
・販路コーディネート事業
・新価値創造展
<福岡県の場合>
- 福岡県中小企業融資制度の経営革新支援資金
- 高度化融資制度
- 福岡県ものづくり中小企業新製品開発支援補助金
- 福岡県新商品の生産による新事業分野開拓者認定制度
- 福岡県中小企業経営革新サービス開発等支援補助金
- 信用保証の特例
- 中小企業信用保険法の特例
- スタンドバイ・クレジット制度
- 投資による支援措置
- 特許関係料金減免制度
- 福岡県中小企業技術・経営力評価制度
- 福岡県競争入札参加資格審査における地域貢献活動評価(加点)制度
共通のものや、都道府県独自のものがあります。
これだけ豊富な支援メニューがあるので、将来の備えとして経営革新計画をつくっておくことは賢明な考えだと思います。
支援制度を利用しなくてもつくったほうがよい理由
経営革新計画をつくらないと使えない支援制度があるので、中小企業はこの計画をつくっておいたほうがよい、といえるのですが、経営革新計画には他の目的もあります。
中小企業庁は経営革新計画づくりの主な目的は、中小企業が新事業活動に取り組み、経営の相当程度の向上を図ることにある、としています。
中小企業庁は、中小企業に「現状から将来のあるべき姿に到達するために、経営革新計画をつくりましょうと」と呼び掛けています。
経営革新計画は、中小企業庁の支援制度を受けなくても、厳しい競争を生き残るための道しるべとなるのでつくっておいたほうがよいと考えることができます。
経営革新計画づくりの対象となる中小企業
経営革新計画づくりの対象となる企業は、中小企業等経営強化法第2条に規定する中小企業者のことです。
第2条はとても長い条文でしかも読みにくいので、ここでは箇条書きと表で対象企業の条件を紹介します。
<経営革新計画づくりの対象となる企業>
★経営革新計画が要件を満たしている
- 直近1年間の事業実績がある
- 当該期間に決算を行っている
- 中小企業だけでなく個人事業主も対象になる
- 対象企業の条件は以下のとおり。資本金基準か従業員基準のいずれかを満たせば該当となる(東京都の場合)
主たる事業を営んでいる業種 | 資本金基準 (資本金の額又は出資金の総額) |
従業員基準 (常時使用する従業員の数) |
|
---|---|---|---|
製造業、建設業、その他の業種 | 下記以外 | 3億円以下 | 300人以下 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルトを除く) |
3億円以下 | 900人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
サービス業 | 下記以外 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 | |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 | |
小売業、飲食業含む | 5,000万円以下 | 50人以下 |
「★」の「要件」については次の章で紹介します。
要件について
経営革新計画は、
1)新事業活動に取り組む計画であること
2)経営の相当程度の向上を達成できる計画であること
の2つの要件を満たす必要があります。
ここでも東京都の場合で紹介します。
1 新事業活動に取り組む計画とは
経営革新計画に盛り込むのは、新事業活動になります。中小企業がこれまで営んできた既存事業を盛り込むことはできません。
その新事業活動は、次の4つの類型のいずれかに該当する必要があります。
<新事業活動に該当する4つの類型>
- 新商品の開発または生産
- 新役務(サービス)の開発または提供
- 商品の新たな生産または販売の方式の導入
- 役務(サービス)の新たな提供の方式の導入、その他の新たな事業活動
商品とサービスにわかれていて、「新商品の開発と生産」「商品の新生産、新販売」「新サービスの開発と提供」「サービスの新提供と新事業」となります。
2 経営の相当程度の向上を達成できる計画とは
経営革新計画には数値目標を盛り込む必要があります。
計画期間は3年、4年、5年のいずれかを選びます。それぞれの数値目標は以下のとおりです。
計画期間 | 付加価値額、または1人当たりの付加価値額 | 経常利益 |
---|---|---|
3年間 | 9%以上 | 3%以上 |
4年間 | 12%以上 | 4%以上 |
5年間 | 15%以上 | 5%以上 |
つまり、年3%程度の成長が見込める新事業の計画をつくらなければならない、ということになります。
計画づくりを手伝う組織があります「新経営サービスにご相談を」
経営革新計画はかなりのボリュームになります。また、国や都道府県の担当者を納得させる内容にしなければなりません。
さらに、新事業でなければならなかったり、数値目標が課せられたりと縛りがあるので、経営計画づくりに慣れている中小企業でも、経営革新計画をつくることは簡単ではないでしょう。
そのため中小企業庁は、経営革新計画づくりに取り組む中小企業をサポートする仕組みを用意しています。
サポート機関のことを認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)といいます。
認定支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会、商工会議所、金融機関などのことです。
当社、株式会社新経営サービスの専任コンサルタントである中谷も、認定支援機関に登録しています。
当社は経営革新計画についての相談を、無料で承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ~ 会社の将来を見える化する
経営革新計画は、国の支援を受けるときに必要なものですが、中小企業庁はそれを第1目的にしていません。
中小企業が経営革新計画をつくれば、会社の将来が見えてくるはずです。中小企業が生き残るには、新事業活動が必要になるのは明白です。そして経営者は、数値目標を設定してそれに向けて経営を進めていく必要があります。
その2つの要素を盛り込むので、経営革新計画は経営の道しるべになるわけです。