経営革新計画
経営革新計画と経営力向上計画の違いとは
2022年01月11日
中小企業庁は中小企業などに対し、経営革新計画と経営力向上計画の2つの計画をつくるように推奨しています。
補助金などの申請に、この計画が必要になることもあります。
この2つの計画は異なるものですが、どことなく似ています。経営革新をすれば経営力が向上しますし、経営力を向上させるには経営革新が必要です。
しかも両方とも、中小企業等経営強化法という法律で規定されています。
ではなぜ、2つの計画があるのでしょうか。
2つの違いはなんなのでしょうか。
そして中小企業などがそれぞれの計画をつくると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
経営革新計画と経営力向上計画の違いを解説します。
もくじ
経営革新計画と経営力向上計画の法律上の違い
まずは中小企業等経営強化法での、経営革新計画と経営力向上計画の違いを確認していきます。
経営革新計画の概要
中小企業等経営強化法は経営革新を、次のように定義しています。
<経営革新の定義>
- 事業者が新事業活動を行うことによって、経営の相当程度の向上を図ること
経営革新に関わることを盛り込んだ計画が、経営革新計画になります。
この制度を所管している中小企業庁は、中小企業などが経営革新計画をつくることを推奨しているのですが、なぜでしょうか。
その狙いは次のとおりです。
中小企業庁の狙い
- 中小企業などの発展が日本経済の活性化に寄与するから
- 新たにできた企業の事業を支援するため
- 中小企業などの経営力を高めるため
- 中小企業などの事業継続を支援するため
- 中小企業などの経営強化を図るため
この狙いは、次に紹介する経営力向上計画も同じです。
要するに中小企業庁は、日本経済を支えている中小企業などを強くするために、中小企業などに経営革新計画や経営力向上計画をつくってもらおうとしています。
しっかりした経営革新計画と経営力向上計画ができていれば、政府や行政機関などはそれに沿って支援をすることができます。
経営力向上計画の概要
中小企業等経営強化法は経営力向上を次のように定義しています。
<経営力向上の定義>
- 人材育成、財務分析、商品・サービスに関する情報の活用、情報システムの構築、経営資源の高度な利用によって経営能力を向上させること
- 吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転、株式交付、事業・資産の譲り受け、他社の株式の取得などを行なって経営能力を向上させること(M&A)
自社で体力をつけるだけでなく、M&Aの手法を使って経営能力を高めることも含まれています。
これらは経営力を向上させるための取り組みメニューと考えることができます。
そして、経営力向上メニューを盛り込んだものが、経営力向上計画になります。
違いを項目ごとに整理する
法律上の経営革新計画と経営力向上計画の違いを確認しましたが、文言が違うことは理解できても、「いっていること」はやはり似ている印象を受けます。
つまりどちらも、中小企業などが強くなるには計画をつくってそれに沿って進めていく必要がある、といっています。
そこでここからは、項目をわけて両者の違いを確認していきます。
対象の事業が異なる:経営革新は新規事業、経営力向上は既存事業
経営革新計画は、新規事業に取り組むときにつくります。
経営力向上計画は、既存事業を向上させるときにつくります。
この2つは最も大きな違いになります。
経営革新は定義のなかでしっかりと「事業者が新事業活動を行うことによって、経営の相当程度の向上を図ること」と書かれてあり、新規であることが強調されています。
一方の経営力向上で課題になるのは、人材、財務、商品、サービス、情報システム、経営資源、M&Aであり、これらはすべて既存事業を強化するために考慮しなければならない項目です。
中小企業の経営者が、経営課題として新規事業の展開を挙げていれば経営革新計画をつくり、既存事業の強化が必要なら経営力向上計画をつくることになります。
計画を承認・認定する機関が異なる
経営革新計画も経営力向上計画も、企業が作成しただけでは法的な効力を持ちません。計画をつくって承認・認定してもらわないとなりません。
中小企業などがつくった経営革新計画は、都道府県知事に提出して、その内容で適当であることの承認を受けなければなりません。
中小企業などがつくった経営力向上計画は、主務大臣に提出して、内容が適当であることの認定を受けなければなりません。
- 経営革新計画:都道府県知事による承認
- 経営力向上計画:主務大臣による認定
得られるメリットが異なる
2つの計画は、作成してそれを実行すれば経営の安定が見込めます。これが第1の、計画を作成するメリットです。
そして2つの計画には、第2のメリットもあります。それは、国や公的機関などから経済的な支援が受けられやすくなることです。
つまり、国や公的機関などからの経済的な支援を受けるには、いずれかの計画か、または2つの計画をつくっておいたほうがよい、といえます。
経営革新計画と経営力向上計画では、対象となる支援が異なり、次のとおりです。
<経営革新計画を必要とする支援>
- 保証・融資の優遇措置
(1)信用保証の特例
(2)日本政策金融公庫の特別利率による融資制度
(3)高度化融資制度
(4)食品等流通合理化促進機構による債務保証 - 海外展開に伴う資金調達の支援措置
(1)スタンドバイ・クレジット制度
(2)中小企業信用保険法の特例
(3)日本貿易保険(NEXI)による支援措置 - 投資・補助金の支援措置
(1)起業支援ファンドからの投資
(2)中小企業投資育成株式会社からの投資
(3)経営革新関係補助金 - 販路開拓の支援措置
(1)販路開拓コーディネート事業
(2)新価値創造展
<経営力向上計画を必要とする支援>
- 即時償却などの中小企業経営強化税制による税制面からの支援
・生産性を高めるための設備を取得した場合 - 計画に基づく事業に必要な資金繰りの支援
・融資や信用保証など - 補助金における優先採択
- 不動産の権利移転にかかる登録免許税と不動産取得税の軽減
・他社から事業承継などを行った場合 - 準備金の積立を損金に算入することによる法人税の軽減
・他社から事業承継などを行った場合 - 業法上の許認可の承継を可能にするなどの法的支援
2つに共通したメリットは、資金調達がしやすくなることです。
経営革新計画のメリットで特徴的なのは、海外展開や販路開拓といった具体的な支援が含まれていることです。
経営力向上計画のメリットで特徴的なのは、税制面での優遇が多いことです。
経営革新計画と経営力向上計画の比較表
ここまで解説したことを、一覧表にしました。
経営革新計画の特徴 | 経営力向上計画の特徴 | |
---|---|---|
根拠法 | 中小企業等経営強化法 | |
狙い |
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定義 | 事業者が新事業活動を行うことによって、経営の相当程度の向上を図ること |
|
対象事業 | 新規事業 | 既存事業 |
承認・認定機関 | 都道府県知事による承認 | 主務大臣による認定 |
得られるメリット | 計画を作成してそれを実行すれば経営の安定が見込める | |
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