経営革新計画
経営革新計画には数値目標を盛り込まなければならない
2022年03月08日
経営革新計画を策定するときのハードルの1つに、数値目標の設定があります。
数値目標を決めることは、その数値をクリアすることを約束することでもあるので、実現可能なものにしなければなりません。
しかし経営革新計画は都道府県から承認を得なければ公式のものにならず、簡単にクリアできる数値では審査に通りません。最低ラインをクリアできる数値にしなければなりません。
この記事では、経営革新計画に関わる数値について解説します。
もくじ
なぜ数値目標が必要なのか
なぜ経営革新計画に数値目標を盛り込まなければならないのかというと、法律にそう書いてあるからです。
経営革新計画の根拠法は中小企業等経営強化法で、この第14条に次のように書かれてあります。
中小企業等経営強化法第14条(一部抜粋)
経営革新計画には次に掲げる事項を掲載しなければならない
- 経営革新の目標
- 経営革新による経営向上の程度を示す指標
- 経営革新の内容及び実施時期
- 経営革新を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
ここに出てくる「指標」「時期」「資金の額」は数値で示さなければなりません。それで、経営革新計画には数値目標を盛り込む必要がある、と読み取ることができるわけです。
経営革新計画には盛り込まなければならない事項はたくさんありますが、この記事では数値について集中的に解説します。
最初に決める数値は計画の期間「3年か4年か5年か」
経営革新計画をつくるときに最初に出てくる数値は計画期間です。つまり、経営革新につながる事業をどれくらいの期間で実行するか、です。
経営革新計画では、3年または4年または5年の事業期間を設定します。
どの年数にするかは経営革新計画をつくる企業が選ぶことができます。
経営革新計画の数値目標には最低ラインが設けられていますが、計画年数が短いほど最低ラインは低くなっています。最低ラインの数値については後段で紹介します。
企業が短期間で成果を出したいと考えたら、3年を選ぶとよいでしょう。
計画の実行当初は成果が出づらいが中盤から終盤にかけて成果を出せる場合は、4年や5年がよいかもしれません。
何をするかを四半期ごとに書く
計画の期間(3年または4年または5年)は、経営革新につながる事業を始めて終了するまでの期間になります。
例えば製造業の企業が3年計画を立てれば、1年目に企画を立てて開発に着手して、2年目に試作品を完成させて、3年目に量産して販売する、といった流れになるでしょう。
経営革新計画には、四半期(3カ月)ごとに何をするか書いていきます。
経営の相当程度の向上の数値目標
経営革新計画制度では、企業が経営革新に取り組むと経営が相当程度向上するはずである、と考えています。もしくは、経営の相当程度の向上を果たせる計画を練らなければならない、ともいえます。
そしてこの「経営の相当程度の向上」が数値目標になります。
経営の相当程度の向上の指標となるのは、1)付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額の伸び率と、2)経常利益の伸び率、の2つになります。2つともクリアしなければなりません。
2つの指標の最低ラインの数値は計画年数によって異なります。
付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額の伸び率 | 経常利益の伸び率 | |
3年計画の場合 | 9%以上 | 3%以上 |
4年計画の場合 | 12%以上 | 4%以上 |
5年計画の場合 | 15%以上 | 5%以上 |
この表の見方ですが、3年の経営革新計画をつくった場合、付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額の伸び率が、3年後に計画スタート時点比で9%以上になっていなければならず、なおかつ経常利益の伸び率は3年後に同3%以上になっていなければならない、という意味になります。
付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額の伸び率は、3年計画は9%以上、4年計画は12%以上、5年計画は15%以上となっているので、年率はいずれも3%以上になります。つまりどの計画でも、1年間で前年より3%以上増やせばよいということになります。
経常利益の伸び率は、どの計画でも年率1%以上です。
以下、付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額と経常利益を紹介します。
付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額とは
経営革新計画における付加価値額は、次の計算式で算出します。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
つまり経営革新計画では、営業利益の上昇と人件費の上昇と投資(減価償却費)の上昇に数値目標を設けていると理解できます。
そして総計が年率3%以上上昇すれば、営業利益、人件費、減価償却費のうちどれを増やしてもいいし、総合的に増やしてもよい、というルールになっています。
従業員1人当たりの付加価値額は次の計算式で算出します。
従業員1人当たりの付加価値額=付加価値額÷従業員数
付加価値額の伸び率と従業員1人当たりの付加価値額の伸び率のどちらかが最低ライン(3年計画なら9%以上、4年計画なら12%以上、5年計画なら15%以上)をクリアできれば、目標達成とみなされます。
経常利益とは
経営革新計画における経常利益は、通常の会計ルールとは異なりますので注意してください。計算式は以下のとおりです。
(経営革新計画における)経常利益=営業利益-営業外費用(支払利息や新株発行費など)
ここに営業外収益が含まれていません。
必要な資金の額も盛り込む
経営革新につながる事業や経営の相当程度の向上が見込める事業を行うには、投資が必要になるはずです。そこで経営革新計画には、当該事業に取り組むのに必要になる資金の額と、その調達方法を盛り込む必要があります。
必要な資金を算出するには、売上高や原価、経費、利益などを予測しなければなりません。
そしてもちろんこれらの額は、先ほど紹介した「経営の相当程度の向上」の目標となる付加価値額や経常利益と整合性が取れていないとなりません。
つまり、手元資金とこれから調達する資金があれば経営革新につながる事業を十分に実施でき、その結果として目標にしている付加価値額や経常利益に到達できる、ということを説明できなければなりません。
これも高いハードルとなるでしょう。
経営革新計画づくりは新経営サービスがサポートします
経営革新計画を承認する都道府県は、数値目標が計画のなかに盛り込まれているかどうかをチェックするのはもちろんこと、その数値目標が実現可能かどうか審査します。
また、経営革新計画には、実際に実行する新事業活動も盛り込まなければならないのですが、これが法律が求める新事業活動になっているかどうかも審査します。
新経営サービスは、企業様の経営革新計画づくりをサポートしてきた実績があります。
新経営サービスは企業様にヒアリングをしてうえで、有効な新事業活動と実現可能な数値目標をアドバイスさせていただきます。新経営サービスは、都道府県がどの項目を重視するのか知っていますので、企業様と一緒に「承認される経営革新計画」をつくっていくことができます。
経営者様が「経営革新計画をつくろう」と思い立ったら、新経営サービスにお気軽にご相談ください。