中小企業の経営ノウハウ
老舗が老舗たる所以
2021年09月20日
毎年1000社以上の創業100周年企業が生まれる日本
“企業長寿大国” である日本
日本は、世界と比べて業歴の長い企業が多く存在し、毎年1000社以上の企業が創業100周年を迎えているとされます。
株式会社帝国データバンクが2019年1月に公表した「老舗企業の実態調査(2019年)」によれば、
- 2019年中に業歴100年となる企業を含めた「老舗企業」は全国に3万3259社存在(老舗企業出現率 2.27%)
- 業種別では、老舗企業の社数が最も多かったのは、「製造業」(構成比25.1%)となり、「小売業」(同23.4%)、「卸売業」(同22.1%)が続く
- 業種の細分類別では、「貸事務所」がトップ(※創業時は別事業を主業としていた企業が、所有する土地にオフィスビルなどを建て、賃料収入が増加し、貸事務所業へと業種が変わったケースが多い)。 2 位は「清酒製造」(※清酒は 1300 年前から日本に存在していたと伝えられており、古くから定着している産業のひとつとなっている)。その他、「旅館・ホテル」や「酒小売」「呉服・服地小売」「婦人・子供服小売」など、BtoC 関連の業種が上位を占める
- 年商規模別に見ると、老舗企業数が最も多かったのは「1億円未満」(構成比41.5%)で、「1億~10億円未満」(同39.0%)がこれに続く
- 都道府県別に見ると、老舗企業出現率が最も高かったのは「京都府」の4.73%(社数では東京都がトップ)
また老舗企業のうち、上場企業は 532 社判明しています。
主な上場老舗企業として、1586 年に創業した建築工事を主業とする松井建設(株)や、1602 年に創業した薬用酒メーカーの養命酒製造(株)、1691 年に住友家の別子銅山開坑に伴い発足した住友林業(株)などが並んでいます。
老舗企業は100年以上の歴史の中で、業態を変えてきた
これらの100年以上続く「老舗企業」は、なぜ永く事業を継続することが出来たのでしょうか。
100年と言えば、第二次世界大戦といった“戦争”、バブル崩壊やリーマン・ショックなどの“金融・経済危機”、阪神淡路大震災・東日本大震災といった“災害”など、幾多の困難を乗り越えてこなければならない世界です。
戦争や経済危機、災害を乗り越え、企業を存続させることは容易ではありません。
老舗企業の中には、100 年以上の歴史の中で成功や失敗を繰り返し、その過程で業態を変えた企業も見受けられます。
1907年に創業し日本で初めて板ガラスの工業生産を開始した旭硝子株式会社(現AGC株式会社)は、様々な外部環境の変化に対応してきた結果、今では社名から「硝子(ガラス)」の文字も消え、エレクトロニクス、化学品、セラミックスを中心としたメーカーに変貌することにより、従業員数55,000名超、グループ企業213 社、売上高15,180億円の巨大企業に成長しました。
江戸時代に開業した寿司店も、戦時中は洋食を提供することで苦難を乗り切ってきたところもあります。
老舗が老舗たる所以は「外部環境の変化に対して、心折れることなく前向きに変化への対応を継続してきた」点にあるといえましょう。
コロナによる新たな時代の幕が開けた今、時代の変化に対応するお手本として「老舗企業」から学ぶことは多いはずです。