PDCA
PDCAがまわらない理由 第6回~なにを検証すれば良いのか分からない~
2020年01月21日
私は、
- 1.D(実行)に関する量と質の評価
- 2.計画を立案した時の、読み(仮説)と実行した結果の差異
を検証すべきだと考えます。
1.D(実行)に関する量と質の評価
実行に対するチェックは、多くの会社で実施している内容ではないでしょうか。
下記のようなフォーマットで管理している会社もあるでしょう。
計画 | 実行結果 | 次月への計画 |
---|---|---|
新規営業件数訪問10件 | 7件 | 既存顧客訪問の際に、併せて訪問できるよう、段取りを組みながら進めていく |
過去顧客訪問訪問5件 | 1件 | 既存顧客への対応で手いっぱいになっていた。改めて過去顧客への訪問に力を入れたい |
新規受注××万円 | 目標に対して30%未達 | 予定していたA社の受注が先送りになってしまったので、今月はしっかりと受注したい |
新商品販売数5件 | 7件 | 来月も5件達成できるよう、顧客先で紹介していきたい |
このフォーマットでも悪くは無いのですが、会議の場で想定されるのは、できなかったことに対する、もっともらしい言い訳と次月への活動計画の報告です。
参加者や会議の上位者も、あまりにも言い訳が上手なので、「そ、そうか。それなら仕方ないか」と流してしまうケースもあるでしょうし、情熱的な上位者であれば、「そんな言い訳は聞きたくない!いいから次月への活動を具体的に、いつまでに、何をするかを聞きたいんだ!」と熱くなるケースもあるでしょう。
そもそも、「なぜ毎月会議を行い進捗確認しているのか」という目的に立ち返ると、経営目標の達成に近づくことです。
となると重要なのは、短期的に次月どうするか?を詰めることよりも、「なぜそれができなかったのか?」といった原因を追求し、同じ失敗をしないことが重要です。
原因追及の方法で有名な「なぜなぜ分析」などもありますが、一定の訓練や慣れがないと「なぜ」の深堀ができず、浅い部分での「なぜなぜ分析」になったり、ぐるぐるとループしてしまうことがあります。
なぜ、原因を特定することを避けて、人は言い訳に逃げるのでしょうか。PDCA 推進の現場を見る限り「怒られたくないから」「できなかったことに対して後ろめたいから」といった意見や風通しの良い職場ではないということが多いように感じます。
そこで、フォーマットを変更し、「できなかったことを受け入れる姿勢」を持ってみるのはいかがでしょうか。
例えば、下記のように、達成できた理由とできなかった言い訳を書かせることは、PDCAをまわすうえで非常に有効です。
計画 | 実行結果 | 達成できた理由orできなかった言い訳 | 次月への計画 |
---|---|---|---|
新規営業件数訪問10件 | 7件 | 新規営業をするためのアポイント取りに腰が引けていた。 | 既存顧客訪問の際に、併せていけるよう、段取りを組みながら進めていく |
過去顧客訪問訪問5件 | 1件 | 過去客に接点が無いので、行く理由が見当たらなかった。理由をつけるのに消極的になっていた(迷惑になると思っていた) | 既存顧客への対応で手いっぱいになっていた。改めて過去顧客への訪問に力を入れたい |
新規受注××万円 | 目標に対して30%未達 | A社は確実に受注できると思っていたので、アフターフォローが欠けていた | 予定していたA社の受注が先送りになってしまったので、今月はしっかりと受注したい |
新商品販売数5件 | 7件 | 訪問時に自作のパンフレットで新商品の紹介をしたことが良かった。 | 来月も5件達成できるよう、顧客先で紹介していきたい |
達成できた理由を書かせることは、組織の成功体験の蓄積をする上でとても大切です。うまくいったこと(マイセオリー)を独り占めすることなく、共有することは組織の大きな財産となります。
また、達成できた人に対するヒーローインタビューは、達成した本人は嬉しく、聞いている参加者にも非常に参考になる内容が多いことでしょう。
達成できなかった言い訳を書かせることは、本人の「怒られるかもしれない」「後ろめたい」という感情を一旦空にさせます。この会議は、できなかったことを叱る場ではなく、できるようになるための会議なのだ、という認識を持ってもらうことが重要です。
過去に体験した事例では、「新規の飛び込み営業はお客様の時間を無駄にさせるから、あまり行きたくない」と書いた営業社員のBさんがいました。確かに気持ちは分からなくはありません
言い訳を書く前までに行われていたBさんの上司からのアドバイスは、「飛び込みなんて、相手は覚えていないんだから、できるだけ多く回れ」
「効率よく1日1日回っていけば、相手は覚えてくれて、そこから注文がとれるよ。
だから深く考えずに大きな声で訪問しなさい」というものでした。
言っていることは確かに正しいのですが、どうもBさんには響いていなかったようです。
言い訳を書いてもらった時に、私からBさんに下記のようなアドバイスを行いました。
“確かに気持ちは分かります。ただ、捉え方を変えると、営業とはお困りごとを解決する仕事ではないでしょうか。
けれど、信頼感の無い人にお困りごとを言うでしょうか?言わないですよね。でも、実際に目の前にいるお客様は何か困っていることがある。
では、最初の一歩として、遠回りになるかもしれないけれど、顔を頻繁に出して、「この人になら、困っていることを伝えてもいいかな」と思われる存在になることが必要ではないでしょうか”
とお伝えさせて頂きました。
すると、これまでの上司の方からのアドバイスがすとんと腹に落ち、活動件数が大幅に上昇しました。同じ失敗を繰り返さないためにも、口には出せない本人の想いや考えに寄り添うことはとても重要です。