中小企業の経営ノウハウ
グリーン成長戦略とは?概要や関連する補助金制度について解説
2022年05月18日
世界中でSDGs(持続可能でよりよい世界を目指す国際指標)やESG投資(環境・社会・ガバナンスを考慮した投資)など、環境への配慮を前提としたビジネスが広がりつつあります。
そんな中で日本政府が2021年6月に発表したのが「グリーン成長戦略」です。グリーン成長戦略の施策の中には、中小企業も利用できる税制などもあります。アフターコロナや中長期的なビジネスを見据えている事業者の方は、一通りチェックしておきましょう。
当記事ではグリーン成長戦略の概要や日本・各国の状況、グリーン成長ビジネスに関する補助金制度などを解説します。
もくじ
グリーン成長戦略とは?
グリーン成長戦略とは、グリーンエネルギーと呼ばれるエネルギーの導入・拡大によるエネルギーシフト(現状のエネルギーからグリーンエネルギーへ変更すること)によって、経済成長と環境改善の好循環を促す「グリーン成長」を目指す日本の政策です。
グリーンエネルギーとは、温室効果ガス(CO2やメタンなど)を排出しないエネルギーを意味します。例えば、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなどです。
そのうち、原発エネルギーの代替となるものを「再生可能エネルギー」、低減させるものを「省エネルギー」と呼びます。
これまで、地球環境の改善に関わる取り組みは、あくまで制約やコストとして捉えられてきました。しかし、2022年現在はこれらを「成長の機会」と捉える時代だと、世界中で考えられています。
しかし実際のところ、中小企業が上記の取り組みを実施するには、これまで培ってきたビジネスや戦略を大きく変えなければ難しいケースも多いです。グリーン成長戦略では、そうした企業へ国が投資を行い、前向きなチャレンジを支援します。
グリーン成長戦略の支援・改革の取り組み内容としては、大枠として以下のとおりです。
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グリーン成長戦略の大きな目的は、2020年10月に宣言された「カーボンニュートラル」の実現です。以下ではカーボンニュートラルの概要や、グリーン戦略における14分野について解説します。
グリーン成長戦略と関係の深い「カーボンニュートラル」について
カーボンニュートラルとは、植林・森林管理による温室効果ガスの吸収量を、温室効果ガスの排出量と同等以上にすることで、差し引きゼロを目指す施策です。
以下では2050年の達成に向けた、計画の概要図をご紹介します。
カーボンニュートラルの主な取り組みは、「植林や緑化の促進」「バイオ燃料の使用」など、脱炭素化の社会を目指すものです。
世界的な潮流を考えると、今後は事業者の新商品・サービスや事業拡大も、カーボンニュートラルを意識する必要があります。
「中小企業だから関係ない」と思われるかもしれませんが、元請けの大企業や取引先、消費者のニーズなどの市場全体にカーボンニュートラルが浸透した場合は、対応が求められるでしょう。
グリーン成長戦略における14産業分野とは
グリーン成長戦略には、今後の成長が見込まれる「エネルギー関連産業」「輸送・製造関連産業」「家庭・オフィス関連産業」から14分野が選定されています。
以下では14分野に加えて、2021年時点での目標も併せてご紹介します。
14分野 | 主な目標 |
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洋上風力・太陽光・地熱 |
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水素・燃料アンモニア |
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次世代熱エネルギー |
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原子力 |
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自動車・蓄電池 |
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半導体・情報通信 |
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船舶 |
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物流・人流・土木インフラ |
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食料・農林水産業 |
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航空機 |
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カーボンリサイクル・マテリアル |
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住宅・建築物・次世代電力マネジメント |
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資源循環関連 | リデュース・リユース・リサイクル・リカバリーに関する技術の高度化・設備の整備、低コスト化など |
ライフスタイル関連 |
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上記の施策を進めることで、政府は2050年時点で約290兆円の経済効果と、約1,800万人の雇用効果を見込んでいます。
14項目の各目標値は、下記の引用図をご覧ください。
具体的な目標内容は、経済産業省・環境省が公表するグリーン成長戦略の資料や、公式サイトで確認できます。
グリーン成長ビジネスを巡る日本の状況
2020年の第203回臨時国会において、菅元総理が2050年カーボンニュートラル、脱酸素社会の実現を目指すことを宣言しました。
宣言以降、日本におけるグリーン成長ビジネスについては、グリーン成長戦略に基づいてさまざまなサポートが整えられています。
例えば、技術開発や設備投資までの企業ニーズをカバーする政策や、意欲的な目標設定などです。こうした支援策の実施には、企業の現預金約240兆円(2021年時点)を投資に向かわせたい目論見もあります。
以下ではグリーン成長戦略の内容やグリーン成長に関する制度から、グリーン成長ビジネスを巡る日本の状況をみていきましょう。
予算(グリーンイノベーション基金)
グリーン成長戦略の予算となるグリーンイノベーション基金として、「国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発気候(NEDO)」に、10年間で2兆円の基金を造成しました。今後は事業者の研究開発や実証、社会実装について、基金から継続してサポートを行います。
また、政府は2兆円を呼び水として、民間企業による活発な研究開発や設備投資の誘発も期待しています。あくまで弊社の予想ですが、日本中でグリーン成長ビジネスの成果が上がれば、予算の増額や支援策の拡充などが期待できるかもしれません。
カーボンニュートラルに向けた税制
カーボンニュートラルを目指した「大きな脱炭素化効果を持つ製品の設備導入」や「生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入」に関して、以下いずれかの税制の優遇措置を適用します(2023年度末まで)。
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また、他にも新型コロナなどの影響で欠損金を抱えた事業者が「カーボンニュートラル実現等を含めた新たな日常に対応するための投資」を行う場合に、欠損金の繰越控除の上限を100%まで引き上げる特例も創設しています。
同じくコロナ禍の影響でコロナ前より売上が2%以上減少してもなお試験研究費を増額させている事業者は、研究開発税制の控除上限を法人税額の25%から30%に引き上げるという制度拡充も実施されます。
金融関係
グリーン成長ビジネスに関する金融関係の施策として、主に以下のものが計画されています。
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規制改革・標準化
新技術の需要が創出される規制の強化や、新技術を想定していない規制の緩和、新技術を世界で活用しやすくなる国際標準化などを実施します。
例えば、以下のものが計画されています。
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グリーン成長ビジネスを巡る各国の状況
グリーン成長ビジネスに関しては、米国、欧州、アジア、アフリカなど世界各国で取り組みが報告されています。日本貿易振興機構(ジェトロ)の記事では、各国の注力分野や技術開発の発表、サミットの開催などが確認できます。
以下では、世界全体の動向についてまとめました。
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グリーン成長ビジネスを行う中小企業が使える補助金制度
政府はグリーン成長ビジネスを行う中小企業を対象に、既存の補助金制度の拡充を実施しました。具体的には「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」です。
どちらも一般枠の補助金制度よりも、補助金額が拡大されています。
補助金制度 | 概要 |
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事業再構築補助金のグリーン成長枠 |
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ものづくり補助金のグリーン枠 |
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上記の補助金を受け取るには、それぞれの公募要領に従った事業計画書を作成し、事務局による審査で採択される必要があります。
弊社のコラム記事では、採択されるためのコツや事業計画書の書き方なども解説していますので、ぜひご覧ください。
グリーン成長ビジネスの新規立ち上げ支援は新経営サービスにお任せください
世界のトレンドとしてグリーン成長ビジネスが広がる中、中小企業による開発・研究・販売なども、将来的には環境に配慮したものが求められる可能性があります。
実際に、グリーン成長ビジネスを実施する事業者を対象にした補助金制度の拡充も行われています。今後はますます民間企業の協力を前提とした、カーボンニュートラルの達成のための施策が取られるでしょう。
グリーン成長戦略の税制・金融や、関連した補助金制度などの利用を視野に入れた新規事業の立ち上げ・拡充をご検討中の事業者の方は、ぜひ弊社「新経営サービス」にご相談ください。
新規事業のアイデア出しやビジネスモデルの構築、事業計画書の作成、事業再構築補助金制度の活用まで、事業者の方のグリーン成長ビジネスについて、一貫してサポートいたします。