業種別 新規事業の事例
「不動産業、物品賃貸業」の新規事業・事業再構築の方向性
2022年06月01日
業種別 新規事業・事業再構築事例の紹介として「不動産業,物品賃貸業」の新規事業・事業再構築の方向性についてお伝えします。
中小企業等が、新分野展開や業態転換などの事業再構築を通じて、コロナ前のビジネスモデルから転換する必要性は、依然として高い状況にあります。
令和3年度からスタートした「事業再構築補助金」についても、多くの不動産業,物品賃貸業の経営者が自社の事業再構築に向けて申請され、私どもも多数の申請支援および採択・交付決定を得て参りました。
不動産業,物品賃貸業の事業再構築・新規事業の方向性については、以下が考えられますので、これから「新規事業を検討しよう」「事業再構築補助金にチャレンジしよう」と思われる方は参考にしてください。
全国の不動産業,物品賃貸業の事業再構築の主なキーワードとしては、以下のものが挙げられます。
また新規事業度の高い順に並べてみました。
飲食卸売業の新規事業事例
- 不動産売買業者が自社の保有するデータを活かしたAIを開発
- 不動産賃貸業者が自社の経営ノウハウをクラウド化し、同業他社へ販売するIT業へ事業転換
- 不動産賃貸業者が、メタバース(仮想空間)ギャラリー運営、NFTアート販売を行う
- 不動産賃貸業者が、自社物件でフィットネスジムを開業する。
- シェアハウス運営業者が、完全個室のプライベートエステサロンをスタート
- 物品賃貸業者が、コワーキングスペース事業に進出
- 不動産賃貸業者が自社所有物件にてコインランドリー業を展開
- 貸会議室事業から、ウェビナー配信スタジオ施設を提供する
- 不動産業者が、建物の専門家とコロナ禍のニーズを掛け合わせ、「ビルの消毒事業」をスタート
- 不動産賃貸業者が、地域の空き家情報を集約するポータルサイトを開設
- 観葉植物レンタル事業者が、観葉植物を実際に見ながら飲食を楽しめるカフェをスタート
- 不動産業者が、解体工事業者へ事業展開(つくるよりも壊すに商機)
- テナントビル賃貸業者が、ヨガレッスン・ダンススタジオを新規にスタート
新規事業の方向性検討
新規事業を考えるにあたっての大きな方向性としては、以下のフレームワーク(思考方法)が有効です。
アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリックス(製品と市場の二軸、新規と既存の二軸を元に表を作り各々を「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」に分類するマトリックス)で、新規事業とは何かを考えてみたいと思います。
市場浸透 | 既存商品・サービスを既存の顧客・市場により浸透させる領域であり、新規事業とはいえない。 |
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多角化 | 新規商品・サービスをつくり、これまでと異なった顧客・市場に投入するものであり、大きな新規事業といえる。異なった業種をスタートすることもこの領域。 |
新市場開拓 | 既存商品・サービスであっても、BtoC→BtoB(個人用→業務用)や、海外進出等、新しい市場でビジネス展開することは新規事業といえる。 |
新商品開発 | 既存市場内での新商品開発は、これまでの顧客・市場と変わるわけではないため、単なる商品ラインナップの追加という領域といえる。新規事業かどうかというと、ケースバイケースで捉えるべきグレーゾーン。 |
アンゾフの成長マトリクス
私の考えとしては、新商品開発でも
従来ビジネスモデルを変えずに、既存事業の経営資源だけを活用した新商品・新サービスは、新規事業とは言いにくいと考えます(既存の収益の仕組みをそのまま使って、新しい商品を開発・展開することは、単に商品ラインナップが増えるだけ)。
例えば、不動産賃貸業者がオンラインでの営業をスタートしたり、IT重説を実施したりする場合は、新サービスではあるものの、既存事業のビジネスモデル並びに経営資源活用になるので、新規事業には当たりません。
そこで、新規事業と考えられる新商品開発の定義は、
- 従来と異なるアライアンスパートナーとの事業展開
- 新しいカテゴリーの商品・サービスの開発による新しい顧客ターゲットの開拓
- 流通経路の大幅な変更を伴う新商品開発
を指すと考えて良いのではないでしょうか
平たく言うと「新しい顧客に」「新しい商品・サービスを」「新しいやり方で」取り組みを行う場合に新規事業であるといえましょう。
先の不動産業,物品賃貸業の事業再構築・新規事業のキーワードを上記フレームワークに当てはめると、以下のようなイメージです。
どの業種においても、事業再構築・新規事業を検討する際には、以上のような考え方を当てはめて考えることで新規事業の方向性が見出せることでしょう。