PDCA
PDCAがまわらない理由 第1回~やりたくないから、PDCAがまわらない~
2019年08月20日
新経営サービスの山本です。
今回からPDCAというテーマで皆様にお役立ち情報をお伝えします。
さて、PDCAは、企業の経営計画や委員会活動において活用されているフレームワークですが、PDCAが満足にまわっている企業は少ないようです。
PDCAが回らない理由は、各フェーズにおいて様々な理由があり、この記事の連載を通じて言及します。
今回は各フェーズに入る以前の、「そもそもPJや経営計画に取り組みたくない」という原因についてお話します。
「コミットメント」という言葉があります。
日本語では、「公約」や「約束」という意味ですが、物事に取り組ませたり、やり切らせたりするには、このコミットメントを高める必要があります。
とあるA社様で「社内プロジェクトのPDCAがまわっていないから手伝ってほしい」、という相談を受けたことがありました。
本格的な支援に入る前に、プロジェクトメンバー全員に対して、ヒアリングを実施したことがあります。
そこで出た声としては、
- 実はプロジェクトに参加したくなかった。無理やり巻き込まれてしまった。だけど、今更そんなことも言えないし、とりあえず参加するだけになっていた。
- このプロジェクトの目的や意図、成果性が分からないから、どうしても優先順位が下がっていた。
- プロジェクト活動は、部門間の連携が必要だが、風通しが悪い職場なので、まずはそこから改善すべきではないか。
- プロジェクトの目的や意図は理解しているが、難易度が高すぎて何から手をつけて良いか分からないので、どんどんやる気がなくなっていた。
といった内容でした。
A社にてヒアリングを実施したプロジェクトメンバーは、決して仕事ができない方々ではありません。むしろ、プロジェクトメンバーに選出されるくらいですから優秀な方々でした。
しかし、コミットメントを醸成する前にプロジェクトを開始したため、メンバーの心の中のモヤモヤが残ったままのスタートとなりました。そのため、取り組みスピードが遅くなってしまっていたようです。
A社では、改めて経営トップからプロジェクトにかける想いを伝え、進め方に関する質疑応答、プロジェクトメンバーの選出などを行い、コミットメントの醸成を行いました。
面倒ではありますが、こういった事前の説明を丁寧に行ったことで、その後のPDCAは順調に進んでいったという報告をA社様から受けました。
やはり、PDCAの具体的なフェーズごとのテクニックや理論よりも、まずはコミットメントが大事だと感じる出来事でした。
そもそも、「仕事なんだから、やりたくないという言い訳は通用しない」ことは大前提にあります。
しかし、嫌々やらされることと、自ら進んでやることの進み具合や成果を考えると、後者のスタンスで取り組んだ方が、より成果が出やすいことは、頷けるかと思います。(もちろん、嫌々だろうが、自分で進んでやろうが、「仕事」なので、やらないといけないのですが…)
消極的な社員であれば、「通常の業務でさえ忙しいのに、なぜ追加で新しい(しかも自分のやったことの無い領域の)仕事を振ってくるのだ」という気持ちになることもあるでしょう。
そのため、プロジェクトや委員会活動では、丁寧に対話を重ね、不満材料をなくしていきながら、コミットメントを高めることがPDCAをまわす土台に立つポイントです。
マサチューセッツ工科大学の教授ピーター・センゲは、コミットメントに関する段階には7段階あると示しています。
1.無関心 | ビジョンに賛成も反対もなく、興味すらない。エネルギーが全くわかない。 |
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2.反抗 | ビジョンのメリットを理解せず、期待されていることも行わない。開き直っている。 |
3.嫌々ながらの追従 | ビジョンのメリットを理解していない。職を維持したいために、義務として期待されていることは一通りするが乗り気でないことも周囲に示す。 |
4.形だけの追従 | 概してビジョンのメリットを理解し、期待されることは行うがそれ以上のことは行わない。 |
5.心からの追従 | ビジョンのメリットを理解し、期待以上の行動をとる。 |
6.参画 | ビジョンの実現を心から望む。法の精神の内で新しい構造を生み出す。 |
7.コミットメントの段階 | 何が何でもビジョンを実現しようと心から望む。法の枠組みすら超えて新しい構造を生み出すことをいとわない。 |
皆様の会社の社員はどの段階にいるでしょうか。
可能であれば、最低でも5段階までコミットメントを引き上げた上で、取り組みたいものです。