経営革新計画
経営革新計画の策定ポイント ~審査員が評価する新規性の伝え方~
2026年05月27日

経営革新計画において、新規性は承認を左右する最重要の審査ポイントです。
しかし、「新規性をどう書けばいいかわからない」「何度も修正を求められてなかなか承認に至らない」というケースが少なくありません。
本コラムでは、審査員が実際に見ているポイントを整理したうえで、新規性が正しく評価される書き方を解説します。
本コラムのポイント
- 経営革新計画の審査において、新規性は計画の根幹をなす要素であり、正しく伝わらない申請書は承認が困難になる
- 経営革新計画における新規性は、「世界初・業界初」である必要はなく、個々の事業者にとって新たな事業活動であれば認められる
- 審査員に評価されるためには、新規性を「現状がどうか・何が変わるか・なぜ自社がやるのか」の3要素で言語化することが大切
もくじ
経営革新計画における新規性とは何か
経営革新計画の審査では、「新規性」と「実現可能性」の2点が主要な審査ポイントとして設けられています。
このうち新規性は、計画の根幹をなす要素です。
実現可能性がどれほど緻密に書かれていても、新規性が不明確であれば「そもそも何に取り組む計画なのか」が審査員に伝わらず、承認には至りません。
まず新規性をしっかり説明できることが、審査を通過するための条件です。
さらに新規性を理解するためには、経営革新計画の制度上の要件である「新事業活動とは何か」を押さえておく必要があります。
新事業活動とは
経営革新計画では、次の5つの取り組みを指します。
- 新商品の開発又は生産
- 新役務の開発又は提供
- 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
- 役務の新たな提供の方式の導入
- 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
新規性とは何か
新事業活動の要件を満たしたうえで、審査員が評価するのが「新規性」です。
新規性とは、「個々の中小企業者にとって新たな事業活動であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合でも原則として承認の対象となる」と定義されています。
つまり新事業活動は「何をやるか」の要件であり、新規性は「それが自社にとって新しいか」という審査上の評価軸です。
新規性が伝わる計画書の3つの要素
新規性が伝わる計画書には、共通して3つの要素が揃っています。
① 現状がどうか
計画書の中で自社の現状が整理されていないと、「何がどう変わるのか」を審査員が判断できません。
現在どのような事業を、どのような顧客に、どのような価値を提供しているのかを示すことが重要です。
現状を正確に整理することで、次に示す「変化」が際立ちます。
② 何が変わるか
新規性の核心は「変化」にあります。現状から、何がどう変わるのかを具体的に示すことが最も重要です。
「強化します」「拡充します」という表現は変化を示しているようで、実際には既存事業の継続にしか見えません。
「これまでは〇〇だったが、今後は△△に取り組む」という形で現状からの変化を明確にすることが大切です。
③ なぜ自社がやるか
変化の内容を示すだけでは、「なぜこの会社がそれをやるのか」が伝わりません。
自社の強み・蓄積してきた実績・既存の顧客基盤など、その取り組みを自社が行う根拠を添えることで、計画に説得力が生まれます。
この要素がないと、どの会社にでも当てはまる計画書になってしまいます。
この3つが揃うことで、「自社ならではの新しい取り組み」として審査員に伝わる構造になります。逆に言えば、1つでも欠けると新規性の説明として不完全になります。
新規性が伝わる書き方と伝わらない書き方
前述で示した3つの要素を踏まえたうえで、新規性が伝わる書き方と伝わらない書き方の違いを3つのパターンで整理します。\
| パターン① 現状がなく変化が伝わらない |
|---|
| ✕ 新たにEC販売を開始し、全国の個人顧客へのリーチを図ります。 |
| ◎ これまで地域の代理店経由のみで販売してきたが、今後は自社ECサイトを開設し直販モデルに転換することで、これまでリーチできていなかった全国の個人顧客への販路を初めて開拓します。 |
「何をやるか・どこへ向かうか」は書いてあるものの、現状がどうだったかが抜けているため、「自社にとってどれだけ新しいことなのか」が審査員に伝わりません。
現状の定義を冒頭に置くことで、変化の大きさと新規性が際立ちます。
| パターン② 何をやるかしか書かれていない |
|---|
| ✕ 化粧品の新商品を販売する。 |
| ◎ これまで国内の化粧品を代理店経由で海外へ輸出するBtoCモデルで事業を展開してきた。今後は蓄積してきた販売データをもとに現地ニーズに合った成分・処方を分析し、自社オリジナル商品を開発したうえで、海外の商社・代理店向けに直接販売するBtoBモデルへ転換する。 |
「化粧品の新商品を販売する」という書き方は、何をやるかは伝わっても、現状からどう変わるのかが伝わりません。
取り組みの内容だけでは新規性として成立せず、現状との変化を示すことではじめて審査員に伝わります。
| パターン③ 主語がどの会社にでも当てはまる |
|---|
| ✕ 海外市場でのニーズが高まっているため、新たな化粧品の販売を開始します。 |
| ◎ 創業以来15年間、国内化粧品メーカーの海外販路開拓を専門に手がけてきた実績を活かし、これまで取引のなかった東南アジアの商社・代理店との新たなネットワーク構築に取り組みます。 |
「海外市場のニーズが高まっている」という理由が、どの会社でも使える表現になっています。
自社の歴史・実績・専門性を根拠に置くことで、「この会社だからこそできる取り組み」として伝わります。
3つのパターンに共通しているのは、「現状・変化・なぜ自社か」のいずれかが欠けているという点です。
どれだけ意欲的な取り組みを計画していても、この3つが揃っていなければ審査員には伝わりません。
まとめ
新規性は、ゼロから生み出すものではありません。既に他社が採用している技術や方式であっても、自社にとって新たな取り組みであれば、原則として承認の対象となります。
自社の現状を起点に、何がどう変わるのか、なぜ自社がそれをやるのかを整理することで、新規性を審査員に正しく伝えることができます。
「新しい取り組みを書いた」と思っていても、現状との変化が明示されていなければ新規性としては伝わりません。
自社の歴史・実績・専門性を根拠に置くことで、審査員が「なぜ自社がやるのか」を理解できる計画書になります。
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