経営革新計画
経営革新計画では期間の設定が必要「3年、4年、5年のいずれかを選ぶ」
2022年01月25日
中小企業などが政府の補助金や特別な融資を受けようとするとき、経営革新計画が必要になることがあります。
補助金などの申請時に、申請書と一緒に経営革新計画を提出するよう求められることがあるのです。
この経営革新計画は、3年計画、または4年計画、または5年計画でつくります。この3つの期間から、申請者(中小企業などの経営者様)が選択します。
経営革新計画づくりでは、「期間を決めること」が意外に重要になるので解説します。
もくじ
計画期間によって目標値が変わってくる
経営革新計画で期間が重要になるのは、目標が設定されているからです。
経営革新計画は、中小企業などがつくっただけでは法的な効果がなく、都道府県などに承認されてはじめて補助金の申請などに使うことができます。
都道府県の担当者は、経営革新計画の実現可能性を審査するので、申請者(中小企業など)は経営革新計画に盛り込んだ取り組みを期間内に達成し、目標をクリアしなければなりません。
期限つきの仕事がどれだけ大変かは、経営者が一番知っているはずです。
そのため、3年を選ぶか、4年を選ぶか、5年を選ぶかは、とても重要になってきます。
目標は付加価値と経常利益の2つ
経営革新計画は、新事業に取り組んで、経営の相当程度の向上を果たせるようにつくらなければなりません。中小企業庁は、「経営の相当程度の向上」について、次のような数値目標を設定しています。
計画期間 | 計画終了時の付加価値額の伸び率、または、従業員1人当たりの付加価値額の伸び率 | 計画終了時の経常利益の伸び率 |
---|---|---|
3年計画 | 9%以上 | 3%以上 |
4年計画 | 12%以上 | 4%以上 |
5年計画 | 15%以上 | 5%以上 |
チェックポイントは、1)付加価値額の伸び率、または、従業員1人当たりの付加価値額の伸び率と2)経常利益の伸び率の2つです。
どちらも計画終了時に、この数字をクリアしなければなりません。
なぜ付加価値額なのか:目標は年3%以上
付加価値額は、営業利益と人件費と減価償却費を合算した金額です。
従業員1人当たりの付加価値額は、付加価値額を従業員数で割った金額です。
したがって、営業利益を増やすだけでなく、人を多く雇用したり従業員の給与を上げたりして人件費を増やしてもよいですし、設備投資などを増やして減価償却費を増やしてもよいわけです。
つまり、事業規模を拡大させよ、ということです。
中小企業庁は、中小企業などが経営革新計画を実行することによって、付加価値額が年3%ほど上昇することを期待しています。
それで3年計画をつくったら9%以上の伸び率をマークしなければならず、4年計画なら12%以上、5年計画なら15%以上となります。
これは「年3%以上成長する中小企業などに補助金や支援策を提供する」といっているようなものです。
企業の成長を測るモノサシとしては、売上高や純利益がよく使われますが、経営革新計画ではそのどちらもチェックしません。チェックするのは営業利益と人件費と減価償却費です。
それは、経営革新計画が国の制度であり、その最終目標が日本経済の発展にあるからです。政府は、補助金や支援策によって中小企業が成長し、雇用や投資が増えることを期待しています。
ここでの経常利益は少し特殊なので注意を:目標は年1%以上
経営革新計画での経常利益は次のように算出します。
<経営革新計画における経常利益の算出方法>
- 経常利益=営業利益-営業外費用
営業外費用には、支払利息や新株発行費などが含まれます。
一般的に経常利益は、本業の儲けである営業利益に、本業以外の利益を加えたものですが、経営革新計画における経常利益はそうではないので注意してください。
経常利益の伸び率の目標値は、年1%以上です。
3年計画なら3%以上、4年計画なら4%以上、5年計画なら5%以上を達成しなければなりません。
3年4年5年、どれを選んだらよいのか
中小企業などは、経営革新計画の期間、3年、4年、5年のうち、どれを選んだらよいのでしょうか。
経営者様は次のような観点から社内で検討してみてはいかがでしょうか。
- 新事業の効果はスタートから何年くらいで出てくるか
- 計画スタート時に多くの従業員を採用するなら、短い3年計画がよいのではないか
- 計画スタート時に大型投資をするなら、短い3年計画がよいのではないか
- 計画の後半から従業員を増やしたり大型投資をしたりするなら、長い5年計画がよいのではないか
- 計画の初期で利益が見込めないなら(赤字で新事業をスタートするなら)、長い5年計画がよいのではないか
- 新事業を本業にするつもりであれば、長期的な視点が必要なので5年計画がよいのではないか
- 新事業を多角化の一環として取り組んだり、リスク分散の目的で新事業に着手したりするなら、短期で成否を見極めたいので3年計画がよいのではないか
計画に盛り込む新事業の性質や規模、投資額などによって、計画期間が変わってきます。難事業ほど、規模や投資額が大きいほど、計画期間を長く取ったほうがよいでしょう。
ここでは3年と5年について考えましたが、3年とも5年ともつかない場合は4年を選んでみてください。
目標達成は厳しくチェックされる
これから経営革新計画をつくろうとしている中小企業などとしては、中小企業庁や都道府県がどれくらい厳しく目標達成をチェックするのかが気になるところだと思います。
中小企業庁は「経営革新計画 進め方ガイドブック」を作成していて、そこに次のようなQ&Aが記載されています。
Q:付加価値額や経常利益を、計画期間内でこんなに伸ばさないとならないのか。
A:しっかりと目標を定めて経営革新計画を立てて実行すれば大丈夫。弱気にならずに取り組みましょう。経営目標を設定しているのは、経営努力をしていただくことが狙いです。
中小企業庁も、付加価値額年3%以上、経常利益年1%以上をクリアすることが簡単でないことを承知しているようです。
そして明確に「経営努力をして欲しい」と訴えています。
これから経営革新計画をつくる経営者様は、中小企業庁のこの意気込みは重く受け止めたほうがよいでしょう。
フォローアップ調査、アドバイス、成果確認、終了企業調査を行う
中小企業庁や都道府県は、目標の達成について、かなりしっかり監視します。
経営革新計画を審査する都道府県は、計画の実現可能性を重視します。
そして経営革新計画を承認したあとも、都道府県などがフォローアップ調査を行います。もし進捗状況が思わしくなければ、中小企業などに対してアドバイスもします。
計画終了時には都道府県の担当者が、どの程度成果が出たか状況確認をします。さらに、今後の経営革新施策に活かすため、終了企業調査を行ないます。
期間に迷ったら新経営サービスに相談してください
経営革新計画の計画期間を決めるには、新事業がどれくらいの期間で軌道にのるか見通す必要があります。
しかし、長く経営に携わっている経営者様でも、新事業が利益をあげる時期を予測することは簡単ではないはずです。
もし経営革新計画の計画期間の設定で迷ったら、ぜひ新経営サービスにご相談ください。
当社は中小企業の経営革新計画づくりをサポートした実績があるので、新事業を軌道にのせるまでの期間をある程度予測できます。
また、経営者様から経営状況や経営資源についてうかがうことで、適切な計画期間をアドバイスできます。
新経営サービスは、中小企業庁の認定経営革新等支援機関なので、中小企業の経営革新計画づくりのお手伝いができます。