補助金
ものづくり補助金の審査における加点項目とは
2022年04月05日
中小企業庁などが実施する補助金制度「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、制度の対象となるサービスや試作品開発などについて金銭的な支援を行います。
当補助金の採択を受けるには、審査時に考慮される「加点項目」の基準を満たし、採択の可能性を上げることが有効です。
当記事ではものづくり補助金の加点項目について解説します。
※当記事は2022年3月時点の「ものづくり補助金の第10回公募」および「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 令和3年度補正予算の概要」をもとに執筆しています。
もくじ
ものづくり補助金とは?対象事業者や種類について
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者が「生産性向上を目的とした革新的サービスの開発・試作品開発・生産プロセスの改善など」を行うための設備投資を、金銭的に支援する制度のことです。
具体的な補助金額は、「当補助金の対象となる経費(機械装置・システム構築費や技術導入費など)×補助率」で算出されます。
ただしものづくり補助金を始めとする各補助金は、助成金と違って申請するだけでは支給されません。申請時に提出する事業計画書の内容が、事務局の審査を経て採択される必要があります。
ものづくり補助金における、主な必須審査項目は次のとおりです。
ものづくり補助金の審査項目 | 概要 |
---|---|
補助事業実施機関 | 発注・納入・検収・支払などの事業手続きに関するすべてが、交付決定から10ヵ月以内で完了すること(グローバル展開型は12ヵ月以内) |
補助対象事業としての適格性 | ・3~5年の事業期間内で、基本要件をすべて満たす計画を策定すること ・一般型の通常枠以外の枠は、基本要件に加えて枠ごとの条件を満たすこと |
基本要件
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|
技術面 | ・取組内容の革新性 ・課題や目標の明確さ ・課題の解決方法の優位性 ・技術的能力 |
事業化面 | ・事業実施体制 ・市場ニーズの有無 ・事業化までのスケジュールの妥当性 ・補助事業としての費用対効果 |
政策面 | ・地域経済への波及効果 ・ニッチトップとなる潜在性 ・事業連携性 ・イノベーション性 |
(参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 10次締切分)
上記の必須の審査項目に加えて、審査時には「加点項目」が考慮されます。事務局は審査項目+加点項目の総合点で、ものづくり補助金を支給するかを判断します。
ものづくり補助金の通常枠の補助金額と対象業者
第10回公募以降における、通常枠のものづくり補助金の補助内容は次のとおりです。
事業者の従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 750万円以内 |
|
6人以上20人以下 | 1,000万円以内 | |
21人以上 | 1,250万円以内 |
対象事業者は、中小企業基本法で決められた業種(製造業・卸売業・サービス業・小売業)のうち、業種ごとに決まった一定規模以下の資本金額または従業員数の事業者です。2022年からは、法律で定められる特定事業者も対象になります。
【2022年度3月時点】ものづくり補助金の種類
ものづくり補助金の種類には、通常枠が含まれる「一般型」の他にも、海外事業の拡大・強化が対象の「グローバル展開型」、ビジネスモデル構築・事業計画策定のための支援プログラムを補助する「ビジネスモデル構築型」が存在します。
さらに2022年現在では一般型に、以下の枠が新設されました。
新設されたものづくり補助金の枠 | 対象事業者 |
---|---|
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 前年度の事業年度の課税所得がゼロの事業者 |
デジタル枠 | DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するサービス開発や生産プロセス変更などを実施した事業者 |
グリーン枠 | 温室効果ガスの排出削減に関するサービス開発や生産プロセス変更などを実施した事業者 |
それぞれの枠で補助金額や条件が異なっています。ものづくり補助金の加点項目は、上記の枠すべてで適用されます。
ものづくり補助金が採択された事業の事例
ものづくり補助金に採択された事業の事例は次のとおりです。
- ベアリング部品のメーカー:切断機導入による切断工程改善で部品加工までの一括生産体制が整備された
- 動物病院:獣医師をサポートする画像解析・自動診断プログラムの実現による診断データの蓄積やヒューマンエラーの防止、診療のスピードアップなどが実現した
- そば関係の飲食店:焙煎機開発や生産ライン構築などによる:国産そば茶スイーツの小売展開が実現した
ものづくり補助金の加点(項目)とは? メリットや4つの条件を解説
ものづくり補助金の加点項目とは、ある決められた基準をクリアすることで、採択審査時に加点を受けられる制度のことです。加点条件を満たした数に応じて、加点数が増えます(最大6項目・デジタル枠のみ7項目)。
加点されると、普通に審査基準を満たすだけよりも、採択される可能性が上がるメリットがあります。また、加点項目には経営に関する計画策定も含まれることから、計画の作成・実行を通じた経営上のさまざまなメリットにつながります。
ものづくり補助金の加点項目は次の4つです。
- 成長性加点
- 政策加点
- 災害等加点
- 賃上げ加点等
加点を希望する場合は、加点項目を満たしたことを証明する書類の提出が必要です。以下では加点項目の概要と必要書類を解説します。
加点項目1.成長性加点
成長性加点は、有効な期間の経営革新計画の承認を、国・都道府県知事から受けた場合に加点されます。
経営革新計画とは、「今までの事業と異なる新事業に取り組む」および「新事業によって付加価値額や給与支給額を一定以上向上させる(経営の相当程度の向上)」の2つを目的として作成する、中長期的な経営計画書です。
経営の相当程度の向上と認められるには、以下に示した条件をどちらも満たす必要があります。
計画の期間 | 付加価値額または一人当たりの付加価値額 | 給与支給総額の伸び率 |
---|---|---|
3年計画 | 9%以上 | 4.5%以上 |
4年計画 | 12%以上 | 6%以上 |
5年計画 | 15%以上 | 7.5%以上 |
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
※給与支給総額=役員・従業員の給与等+給与所得に当たる手当
必要書類は「経営革新計画承認書」です。なお当計画の承認を受けると、各種融資制度の優遇や、その他の資金調達・販路拡大の支援などを利用できるメリットもあります。
加点項目2.政策加点
政策加点は、事業者が以下の条件に当てはまる場合に加点されます。
- 創業・第二創業してから5年以内
- パートナーシップ構築宣言を実施
- 再生事業者
- デジタル技術の活用およびDX推進の取組(デジタル枠のみ)
必要書類は「開業届」または「履歴事項全部証明書」です。デジタル枠へ応募する場合は、「デジタル技術の活用およびDX推進の取組状況」も添付します。
加点項目3.災害等加点
災害等加点は、有効な期間の事業継続力強化計画の認定を受けると加点されます。
事業継続力強化計画認定制度とは、経済産業大臣から「防災・減災の事前対策に関する計画」について認定を受けられる制度のことです。「事業継続力強化計画作成指針」などに則り、災害が発生したときの安否確認や発信手順などの初動対応や、ヒト・モノ・カネ・情報を災害から守るための具体策などを記載します。
必要書類は「(連携)事業継続力強化認定書(計画の写しを含む)」です。なお当計画が認定を受けると、税制措置や金融支援などが利用できるメリットがあります。
加点項目4.賃上げ加点等
賃上げ加点等は、事業計画内において基本要件を超える賃上げ要件を実施すると加点されます。具体的な条件は次のとおりです。
- 「給与支給総額の年率平均が2%増加」と「事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より60円以上高い水準」を満たす計画し従業員に表明
- 「給与支給総額の年率平均が3%増加」と「事業場内の最低賃金が地域別最低賃金より90円以上高い水準」を満たす計画し従業員に表明
- 被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む
上記のいずれか1つでもクリアすると、加点対象になります。被用者保険の適用拡大を申請する際には、「特定適用事業所該当通知書」の提出が必要です。
減点項目は「過去の類似補助金の受給」
ものづくり補助金には減点項目も存在します。具体的には「応募締切日から過去3年の間に、類似の補助金交付決定を1回受けている」です。
また、回復型賃上げ・雇用拡大枠を申請する際には、「繰越欠損金によって課税所得が控除されることで申請要件が満たされている」も減点項目になります。
ものづくり補助金の採択率は45.7%!採択のために経営革新計画を!
ものづくり補助金は、実際にはどれほどの確率で採択されているのでしょうか。ものづくり補助金総合サイトで公表されている、一般型(9次公募で終了した低感染リスク型ビジネス枠を含む)の応募数・採択数から採択率を計算しました。
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
1次 | 2,287 | 1,429 | 62.5% |
2次 | 5,721 | 3,267 | 57.1% |
3次 | 6,923 | 2,637 | 38.1% |
4次 | 10,041 | 3,123 | 31.1% |
5次 | 5,139 | 2,291 | 44.6% |
6次 | 4,875 | 2,326 | 47.7% |
7次 | 5,414 | 2,729 | 50.4% |
8次 | 4,584 | 2,753 | 60.1% |
合計 | 44,984 | 20,564 | 45.7% |
採択率はおおよそ40~50%で推移しています。半数以上が採択されないと考えると、楽観視できる数値とはいえません。つまり、ものづくり補助金を受けるには、いかに加点項目をクリアして採択の可能性を上げるかが重要になります。
実際に「ものづくり補助金総合サイトのデータポータル」のデータによると、第6次~第8次公募の採択率は加点項目0個が24.4%に対し、加点項目1個は44.8%・加点項目4個は75.5%です。加点項目が多いほど、採択率が跳ね上がっているのがわかります。
「どの加点項目を狙えばいいか」とお悩みであれば、成長性加点に当たる経営革新計画の作成がおすすめです。経営革新計画を策定すると、さまざまな優遇・支援制度が利用できるのはもちろんのこと、今後の経営指針が定まるというメリットがあります。
新型コロナウイルスや不安定な世界情勢、情報化社会への加速などを踏まえ、あらためて現状分析・将来の事業展開などを、経営革新計画作成を通じて実施してみてください。
経営革新計画の作成については、経営支援の専門家である認定経営革新等支援機関にサポートを依頼できます。
経営革新計画の作成は新経営サービスまで!
ものづくり補助金の採択を受ける可能性を上げるには、加点項目を満たせるかが重要なポイントになります。
弊社「新経営サービス」は、認定経営革新等支援機関の認定を受けている、経営コンサルティングや補助金申請などに関するスペシャリストです。中小企業診断士の国家資格も取得した専門家が、補助金の申請から活用計画作成などを、ものづくり補助金に関して全面的なサポートを行います。電話やメールなどからお気軽にお問い合わせください。