補助金
採択は難しい?ものづくり補助金の採択率とは?
2022年04月12日
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)とは、自社事業の生産性向上を目的とした革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセスの改善を計画する企業を支援する制度です。750~1,250万円の補助金が受けとれる可能性があります。
ものづくり補助金は、提出した事業計画書が事務局に採択されなければ受給できません。また、事前に決められた「中小企業生産性革命推進事業」の予算が終了次第、その年度の採択は終了します。2022年時点での平均採択率は半分以下となっており、「採択は難しいのでは」と悩む経営者もいるのではないでしょうか。
しかし、加点項目や支援者の関与の有無によっては、採択率が約70%となるケースが多数存在します。当記事ではデータから見るものづくり補助金の採択率と、採択率を上げるためのポイントを解説します。
もくじ
ものづくり補助金の平均採択率|データから分かる通過する事業計画とは?
2022年3月時点の最新公募である10次公募では、基本の制度となる「一般型(デジタル枠や回復型賃上げ・雇用拡大枠含む)」と、海外事業の拡大・強化を計画する事業者を支援する「グローバル展開型」が公募されています。
以下では、当補助金の公式サイトの「ものづくり補助金総合サイト」で公表されている第1次~第8次の採択結果から、一般型・グローバル展開型の採択率を算出しました。
一般型 | |||
---|---|---|---|
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
1次 | 2,287 | 1,429 | 62.5% |
2次 | 5,721 | 3,267 | 57.1% |
3次 | 6,923 | 2,637 | 38.1% |
4次 | 10,041 | 3,123 | 31.1% |
5次 | 5,139 | 2,291 | 44.6% |
6次 | 4,875 | 2,326 | 47.7% |
7次 | 5,414 | 2,729 | 50.4% |
8次 | 4,584 | 2,753 | 60.1% |
合計 | 44,984 | 20,564 | 45.7% |
グローバル型 | |||
---|---|---|---|
締切回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
4次 | 271 | 46 | 17.0% |
5次 | 160 | 46 | 28.8% |
6次 | 105 | 36 | 34.3% |
7次 | 93 | 39 | 41.9% |
8次 | 69 | 27 | 39.1% |
合計 | 698 | 194 | 27.8% |
平均採択率は一般型で45.7%、グローバル型で27.8%となっています。おおよそ30~50%での推移です。半数以上の企業が採択されないと考えると、申請すればもらえる助成金と比べ、ものづくり補助金の受給難易度は高いといえるでしょう。
しかしデータを細かく見ると、申請内容の違いで採択率に違いが見られます。
以下ではとくに変化幅が大きかった「加点項目の数」「支援者の関与」「補助金申請額」「過去3年間の交付回数」がかかわる場合の、採択率の変化をまとめました。
加点項目の数の違いによる採択率の変化
加点項目とは、必須審査項目にプラスして一定の基準を達成することで、審査時に加点が受けられる制度です。ものづくり補助金の採択率は、加点項目の達成数が多いほど上昇傾向が見られました。
ものづくり補助金総合サイトのデータポータルで公表されている、加点項目の数による採択率の違いは次のとおりです。
第1次~8次公募全体の加点項目ごとの平均採択率を、以下の表でまとめました。
加点項目の数 | 平均採択率 |
---|---|
0個 | 20.0% |
1個 | 32.9% |
2個 | 48.5% |
3個 | 61% |
4個 | 69.3% |
0個と4個で比べると、4個の採択率が約50%も高いことが判明しています。他の要素での変動幅と比べても非常に大きな数値です。加点項目の達成数は、ものづくり保補助金の採択における重要なファクターといえるでしょう。
支援者の関与による採択率の変化
支援者の関与とは、「申請した補助金に対する比率」のことです。公表データによると、「補助金額のうち10%以上の報酬」が出る契約を支援者と交わしている場合、ものづくり補助金の採択率が上昇傾向にあるとの結果が出ています。
「報酬比率10%以上~」は約50~60%が多いのに対し、「支援なし」は約30~40%と数値が下がっています。
補助金申請代行の相場は着手金+成功報酬の10%前後と言われています。相場どおりの金額で外部へ申請サポートを依頼することで、採択率も上がっているようです。
補助金の申請金額による採択率の変化
一般型通常枠のものづくり補助金の場合、自社従業員数に応じて以下の上限額まで補助金額を申請できます。
事業者の従業員数 | 補助上限額 |
---|---|
5人以下 | 750万円 |
6人以上20人以下 | 1,000万円 |
21人以上 | 1,250万円 |
そして少し意外ですが、公表データによると補助金の申請金額が高いほど、採択率も高くなる傾向が出ていました。
申請額250万円以下は約20%であるのに対し、申請額750万円超~1,000万円は約50%と2倍以上の差が開いています。
理由は定かではないものの、「補助金額が大きいとよい設備を導入でき、計画における新しい製品の開発や生産性の向上の説得力が上がる」と推測されます。ものづくり補助金の目的にある「革新的な」という言葉に則り、大胆な計画を提出したほうが採択確率も上がるかもしれません。
過去のものづくり補助金の交付回数による採択率の変化
公表データによると、過去3年間のうち1度以上ものづくり補助金の交付を受けた事業者は、採択率が下がる傾向にありました。一度も交付されていない事業者を優先して採択しているようです。
逆にいえばものづくり補助金は、公募がある度に新しい事業計画書で申請すれば、複数回受け取れる可能性があります。
採択される可能性を上げるためのポイント
過去の採択率の動きや弊社「新経営サービス」のこれまでの実務経験から、ものづくり補助金に採択される可能性を上げるポイントを4つご紹介します。
ポイント1.補助金の目的に合う実現性・可読性がある事業計画書を作成する
ものづくり補助金を始めとする補助金制度は、「国や自治体が目指す政策目標にマッチする事業者の取り組みをサポートする」という目的を掲げています。
つまり、どれだけ生産性向上を期待できる事業を計画しようとも、ものづくり補助金の政策目標に沿った内容でなければ採択されません。応募予定のものづくり補助金の枠に応じた目的や申請条件を確認しておきましょう。
ものづくり補助金の目的を以下で引用しました。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
(引用:トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト)
枠ごとの詳細な審査項目は、公募要領にすべて記載されています。
事業計画書を作成する際は、数値や根拠にもとづいた具体的な内容を盛り込む必要があります。また、計画書をチェックする審査員が読みやすいよう、図やグラフを使ったり専門用語の使用を抑えたりなど可読性を上げる工夫も必要です。
事業計画書の書き方については、当ホームページのコラム「中小企業の新規事業・経営革新計画の作り方塾」でもご紹介しています。
【関連記事】 経営革新計画の書き方:7つのポイントを押さえれば作成できる |
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ポイント2.自社の経営や業務の分析をしっかり実施する
現状の経営状態や課題、強み・弱みなどを分析し、理想論ではない「自社にとっての現実的な事業内容」を達成できる事業計画書を策定しましょう。
「どのような製品を開発すべきか」「設備の機能はどうすべきか」「本当に今より売上が伸びる事業なのか」時間をかけて自社で話し合い、実現可能な内容に仕上げてください。
例えば公式サイトの公表データでは、事業計画書の作成時間が多いほど採択率が少し増加する傾向が見られます。
ポイント3.加点項目はできる限り達成する
先述のとおり、ものづくり補助金は加点項目の達成数が多いほど採択率が大幅に上昇します。公募要領に記載された加点項目を確認し、加点項目の基準も満たせる事業計画書を作成しましょう。
第10次公募における、加点項目の概要は次のとおりです。
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【関連記事】 ものづくり補助金の審査における加点項目とは |
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ポイント4.認定経営革新等支援機関の支援は最大限活用する
認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)とは、国から能力・実務経験を認められた中小企業支援の専門家です。事業計画書の作成・申請や経営分析などを、専門家の目線からサポートしてくれます。
国としても経営分析や事業計画の策定などにおいて、事業者は認定機関からサポートを受けることを推奨されています。例えば他の補助金制度の「事業再構築補助金」の申請においては、認定支援機関と事業計画を策定することが申請条件の1つです。
また、認定支援機関の活用によって、利益増加や方針決定などの面でメリットを受けることが可能です。
中小企業庁の「2020年版小規模企業白書」によると、企業経営や事業運営などの話題を日常的に相談できる人(専門家以外も含む)がいる事業者のほうが、直近5年間の経常利益の増加幅・事業の現状把握度などが高いと回答していました。
認定支援機関に相談すれば、経営状態や補助金・助成金の申請・活用についても効果的なサポートを受けられるはずです。
【関連記事】 経営革新計画づくりをサポートする認定支援機関とは:企業が利用するメリットを解説 |
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ものづくり補助金採択のために経営革新計画を!
ものづくり補助金採択のためには、経営革新計画の作成をおすすめします。理由は次のとおりです。
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経営革新計画として認められるには、国や都道府県から承認を受けなければなりません。経営革新計画についての相談は、認定支援機関や中小企業支援センターなどが受け付けています。
経営革新計画の作成は新経営サービスまで
ものづくり補助金に採択される経営革新計画を作成するには、ものづくり補助金に強く、かつ中小企業支援実績が豊富な認定支援機関に依頼できるかが重要です。
弊社「新経営サービス」は、認定支援機関として認定を受ける経営相談や補助金申請などに関するスペシャリストです。中小企業診断士の国家資格も取得した専門家が、補助金の申請から活用計画作成などを、ものづくり補助金に関して全面的なサポートを行います。電話やメールなどからお気軽にお問い合わせください。