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HOME > 経営革新計画の策定ポイント ~「経営の相当程度の向上」の目標設定~
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経営革新計画

経営革新計画の策定ポイント ~「経営の相当程度の向上」の目標設定~

2026年06月01日

経営革新計画の策定ポイント ~「経営の相当程度の向上」の目標設定~

経営革新計画の申請において、「数値目標をどのくらいに設定すればよいかわからない」「根拠のある数字の作り方がわからない」という経営者は少なくありません。

経営革新計画では、新事業活動に取り組むことで「経営の相当程度の向上」を図ることが求められます。
この「相当程度の向上」には明確な数値基準が設けられており、それを正しく理解したうえで現実的な目標を設定することが承認への近道です。

本コラムでは、「経営の相当程度の向上」の定義を整理したうえで、現実的かつ根拠のある数値目標の設定方法を解説します。

本コラムのポイント

  • 「経営の相当程度の向上」とは、付加価値額または一人当たりの付加価値額と給与支給総額の2指標の伸び率で判断される
  • 事業期間3年なら付加価値額9%以上・給与支給総額5%以上が目標伸び率の基準となる
  • 数値目標は「大きければよい」ではなく、新しい取り組みの内容と整合した根拠が求められる
  • 現状値を起点に、新規事業がどの指標にどれだけ影響するかを順序立てて整理することが重要

もくじ

  • 「経営の相当程度の向上」とは何か
  • 2つの指標と目標伸び率の基準
  • 現実的な数値目標の作り方
  • 数値目標でよくある失敗パターン
  • まとめ

「経営の相当程度の向上」とは何か

中小企業等経営強化法では、「経営革新」を「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義しています(第2条第9項)。

この「経営の相当程度の向上」は、感覚的な表現ではなく、具体的な指標と数値基準が設けられています。
経営革新計画として承認されるためには、事業期間の終了時点でこの基準を満たす目標を設定することが必要です。

重要なのは、「向上を図ること」であり、計画時点での確約ではなく「目標として設定すること」が求められているという点です。
ただしその数値は、新規事業の内容と整合していなければ審査員には根拠のない数字にしか見えません。
現実的な根拠に基づいた数値目標を示すことが、承認への近道です。

2つの指標と目標伸び率の基準

「経営の相当程度の向上」は、次の2つの指標で測られます。

① 付加価値額または一人当たりの付加価値額

付加価値額とは、営業利益・人件費・減価償却費の合計額です。
企業が生み出した価値の総量を示す指標であり、売上高だけでは見えない経営の実態を反映します。

付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

一人当たりの付加価値額は、この付加価値額を従業員数で割った値です。
人員が増える計画の場合は一人当たりの指標が下がりやすいため、どちらの指標を使うかは自社の計画に合わせて選択できます。

② 給与支給総額

給与支給総額とは、役員報酬・給料・賃金・賞与・各種手当の合計です。
経営の向上が従業員への還元につながっているかを確認するための指標です。

給与支給総額 = 役員報酬 + 給料 + 賃金 + 賞与 + 各種手当

この2指標について、事業期間終了時点での目標伸び率の基準は以下の通りです。

事業期間 付加価値額または一人当たりの付加価値額の伸び率 給与支給総額の伸び率
3年 9%以上 4.5%以上
4年 12%以上 6.0%以上
5年 15%以上 7.5%以上

現実的な数値目標の作り方

数値目標の設定で大切なのは、「基準を超えていれば何でもよい」ではなく、新規事業の内容と数値の変化に整合性があることです。
審査員は「なぜその数字になるのか」を見ています。
その根拠を示すために、次の3つのステップで進めることが重要です。

ステップ① 現状値を確認する

直近2〜3期の決算書から、付加価値額・給与支給総額の現状値を算出します。
過去の推移も確認しておくことで、目標値の根拠が立てやすくなります。 

ステップ② 新規事業の売上・コストへの影響を試算する

新しい取り組みによって、いつ・どのくらい売上が上がるかを試算します。
その際、以下の点を意識して分解することが重要です。

  • 誰に・何を・どう売るかを明確にして売上を積み上げる
  • 売上増加に伴って増える原価・人件費・外注費を見積もる
  • 設備投資がある場合は減価償却費の増加も反映する
  • 初年度は投資が先行して利益が出にくいなど、年度ごとの立ち上がりを現実的に想定する

ステップ③ 伸び率が基準を満たしているか確認する

ステップ②で積み上げた数値をもとに、計画期間終了時点での付加価値額と給与支給総額の伸び率を必ず確認してください。
事業期間3年であれば付加価値額9%以上・給与支給総額4.5%以上が基準です。
基準を下回っている場合は、売上の上積みやコスト削減の余地がないかをステップ②に戻って見直します。

数値目標でよくある失敗パターン

数値目標の作成でよく見られる失敗パターンを3つ整理します。

パターン① 根拠なく大きな数字を置いている

「基準を超えていればよい」という考えで、根拠のない大きな数字を設定してしまうケースです。
審査員は数値の大きさではなく、「なぜその数字になるのか」の根拠を見ています。
3年後に売上を2倍にする目標を設定する場合であれば、新規顧客開拓による受注増の見込みや単価・件数の試算など、数値の裏付けをセットで示すことが必要です。

パターン② 売上目標しか書いていない

売上高の目標だけが記載されており、付加価値額・給与支給総額への影響が整理されていないケースです。
経営革新計画で審査されるのは売上高ではなく付加価値額と給与支給総額の伸び率です。
売上増に伴う原価・人件費・減価償却費の変化を年度別に整理し、付加価値額の推移まで示すことが求められます。

パターン③ 既存事業の延長で計算している

既存事業の自然成長を前提にした数値計画で、新規事業の影響が反映されていないケースです。
経営革新計画は新事業活動による経営向上を示すものであるため、既存事業分と新規事業分を分けて試算し、新規事業がどの指標にどれだけ寄与するかを明示することが重要です。

まとめ

「経営の相当程度の向上」の数値目標は、基準を超えていれば足りるというものではありません。
新規事業の内容と数値の変化に整合性があることが、審査員に対する説得力につながります。

現状値を起点に、新規事業の売上・コストへの影響を年度別に試算し、付加価値額と給与支給総額の伸び率として整理する。この流れを意識することで、根拠のある数値目標が作れます。

  • 指標は付加価値額(または一人当たり)と給与支給総額の2つで判断される
  • 数値目標は売上だけでなく、原価・人件費・減価償却費の変化まで織り込む
  • 既存事業と新規事業を分けて試算し、新規事業の寄与を明示する
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この記事の筆者・監修

コンサルタント
本田 優平
幼少期に父親が事業失敗したことを契機に、中小企業の支援に強い使命感を抱き、銀行にて中小企業向け融資業務に従事。資金繰りや相続対策など多様な経営課題に対し、総合的な支援を実施。 現在は、強みである財務コンサルティングのみならず、人事、教育も含めた総合的な経営支援を通じ、企業とそこで働く社員の豊かさの実現を目指し日々活動している。
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