経営革新計画
製造業向け経営革新計画活用ガイド ~設備投資・新商品開発を成功に導くポイント~
2026年05月29日

設備投資や新商品開発を検討しているものの、「資金調達の見通しが立たない」「計画をどう形にすればいいかわからない」という製造業の経営者は少なくありません。
こうした場面で活用を検討していただきたいのが、経営革新計画です。
承認を受けることで融資優遇や信用保証の特例といった資金調達面の支援策につながるだけでなく、設備投資・新商品開発の計画を体系的に整理する枠組みとしても機能します。
本コラムでは、設備投資・新商品開発を検討している製造業が経営革新計画を活用するためのポイントを解説します。
本コラムのポイント
- 製造業は、自社の技術・設備・実績を活かすことで、経営革新計画における新規性を具体的に示しやすい
- 経営革新計画は、設備投資や新商品開発を「新事業」として整理し、計画として体系化する枠組みとして活用できる
- 経営革新計画の承認により、低利融資や信用保証の特例など資金調達面での支援措置の活用が可能になる
- 計画策定では、設備投資の内容と数値目標の整合性、および既存事業と新規事業の区分を明確にすることが重要である
もくじ
設備投資・新商品開発で活用できる新事業活動の類型
経営革新計画では、「新事業活動」として以下の5つの類型が定められています。
- 新商品の開発又は生産
- 新役務の開発又は提供
- 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
- 役務の新たな提供の方式の導入
- 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動
このうち「新役務の開発又は提供」と「役務の新たな提供の方式の導入」はサービス業・飲食業などの業種に親和性が高い類型です。
一方、設備投資・新商品開発を検討している製造業にとって特に活用しやすいのは、次の3つです。
① 新商品の開発又は生産
これまで手がけていなかった新しい製品の開発・生産が該当します。
既存の加工技術を転用して新分野の部品を製造する、廃棄物を活用した新素材製品を開発するといった取り組みが代表例です。
業務用製品を家庭用に小型化する、BtoB向けの技術をBtoC製品に転用するといった取り組みも、自社にとって初めての取り組みであれば新規性として認められます。
② 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
これまでの生産・販売方法を変える取り組みが該当します。
IoTを活用した生産管理システムの導入、代理店経由だった販売を自社ECや直販に転換する、受注生産から見込み生産に移行するといった取り組みがこの類型にあたります。
設備投資によって生産方式そのものが変わる場合も、この類型として申請できます。
③ 技術に関する研究開発及びその成果の利用
自社技術の高度化を目的とした研究開発が該当します。
加工が難しいとされてきた素材の大量加工技術の研究、新素材の特性を活かした製品開発などが代表例です。
研究開発の成果を自社の製造ラインや新商品に活用する取り組みであれば、この類型として申請できます。
なお、既に他社が採用している技術や方式であっても、自社にとって新たな取り組みであれば原則として承認の対象となります。
「うちの取り組みは珍しくないから」と申請を諦める必要はありません。
承認を受けることで活用できる支援措置
経営革新計画の承認を受けると、資金調達面でさまざまな支援措置が活用できます。
設備投資・新商品開発を検討している製造業にとって特に活用しやすい3つの制度を紹介します。
なお、計画の承認は支援を保証するものではなく、承認後に各支援機関による別途審査が必要です。
① 日本政策金融公庫の特別利率による融資
設備投資や運転資金について、通常より低い金利での融資が受けられます。
新工場の建設や大型設備の導入を伴う計画では、この融資優遇が資金計画に大きく影響します。
<中小企業事業>
| 新事業育成資金※1 | 新事業活動促進資金 | |
|---|---|---|
| 貸付限度額 | 7億2千万円 | 14億4千万円 |
| 貸付利率※2 | 基準利率▲0.90% | 基準利率▲0.65%※3 |
※注1:公庫の成長新事業育成審査会から事業の新規性・成長性について認定を得た者が対象となります。
※注2:貸付利率は信用リスク、融資期間等に応じた所定の利率が適用されます。
※注3:5億4千万円超及び土地にかかる資金は基準利率となります。
<国民生活事業>
| 新事業活動促進資金 | |
|---|---|
| 貸付限度額 | 7千2百万円(うち運転資金4千8百万円) |
| 貸付利率※1 | 基準利率▲0.65%※2 |
| 担保・保証人 | 希望に応じて要相談※3 |
※注1:貸付利率は、融資期間等に応じた所定の利率が適用されます。
※注2:土地にかかる資金は基準利率となります。
※注3:担保を不要とする融資なども取り扱っています。詳しくは、公庫支店の窓口までお問い合わせください。
(経営革新計画進め方ガイドブックより抜粋)
② 信用保証の特例
中小企業者が金融機関から融資を受ける際の信用保証について、経営革新計画の承認を受けることで通常の付保限度額に加えて別枠が設けられます。
設備投資を伴う製造業にとって、借入可能額の拡大は事業計画の実現可能性を高める重要な要素です。
| 保証の種類 | 通常限度額 | 別枠 |
|---|---|---|
| 普通保証 | 2億円(組合は4億円) | 同額の別枠を追加 |
| 無担保保証 | 8,000万円(うち2,000万円) | 同額の別枠を追加 |
| 新事業開拓保証(研究開発費用) | 3億円(組合は6億円) |
③ 高度化融資制度
高度化事業とは、中小企業者が共同で工場団地を建設したり、商店街にアーケードを設置する事業などに対し、都道府県と独立行政法人中小企業基盤整備機構の診断・助言を受けた上で、長期・低利で融資が受けられるものです。
1社では導入が難しい設備を複数社で共同導入する場合に特に有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 貸付利率 | 1.00%(2025年度貸付決定の場合)または無利子 |
| 貸付対象 | 土地・建物・構築物・設備 |
| 償還期限 | 据置期間を含む20年以内であって、都道府県が適当と認める期限 |
| 貸付割合 | 原則として貸付対象施設の整備資金の80%以内 |
新規性の示し方
製造業が経営革新計画を申請する際に、特に意識すべきポイントは以下の3つです。
① 自社の技術・設備・実績を根拠にする
製造業の新規性を示すうえで最も有効なのは、自社が蓄積してきた技術・設備・顧客基盤を根拠に置くことです。
「なぜ自社がその取り組みをやるのか」という必然性を、自社の歴史と実績から説明することで、審査員に伝わる計画書になります。
「これまで培った〇〇技術を活かし、初めて〇〇分野に参入する」という形で、現状との変化を明示することが重要です。
② 設備投資の計画と数値目標を整合させる
設備投資を伴う計画の場合、設備導入後の生産能力向上・コスト削減・新製品の販売計画が数値目標と整合していることが重要です。
「この設備を導入することで、生産能力が〇〇%向上し、売上に〇〇万円の増加が見込まれる」という形で、投資内容と数値変化のつながりを示してください。
③ 既存事業と新規事業を明確に分けて説明する
製造業の申請でよくある失敗は、既存の製造事業の強化と新規取り組みの区別が曖昧になることです。
「これまでやってきた〇〇事業」と「今後新たに取り組む〇〇」を明確に分けて記載することで、新事業活動としての新規性が伝わりやすくなります。
まとめ
製造業は技術・設備・顧客基盤という強みを持ち、経営革新計画の新規性を示しやすい業種です。
設備投資・新商品開発を検討しているタイミングは、経営革新計画の申請を検討する絶好の機会でもあります。
- 製造業の技術・設備・実績は「なぜ自社か」という新規性の根拠として活用できる
- 設備投資・新商品開発・技術開発は新事業活動の類型に該当しやすく申請との相性がよい
- 承認を受けることで融資優遇・信用保証特例など設備投資に直結する支援策が活用できる
- 既存事業と新規取り組みを明確に分けて記載することで新事業活動としての新規性が伝わる
新経営サービスでは、経営革新計画の策定支援を行っています。
「設備投資・新商品開発で経営革新計画を活用できるかわからない」「申請に向けて何から始めればよいかわからない」という段階からご相談いただけます。
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