中小企業の経営ノウハウ
脱炭素社会・ビジネスとは?国内企業が取り組むべきことは?
2022年05月25日
地球環境に配慮したさまざまな取り組みが進んでいる中、ビジネスシーンにおいても「脱炭素社会」というワードが登場するようになりました。2022年現在では、脱炭素社会に向けた活動をビジネスチャンスと捉え、積極的に推進する大企業・中小企業も増えています。
当記事では脱炭素社会・脱炭素ビジネスの概要や国内企業の取り組み、日本政府による脱炭素に関するさまざまな施策を解説します。
もくじ
脱炭素社会・ビジネスとは?
脱炭素社会・脱炭素ビジネスとは何か、あらためてみていきましょう。
脱炭素社会は温室効果ガス排出量を実質ゼロにする社会
脱炭素社会とは、二酸化炭素(CO2)といった温室効果ガスの排出量を、実質ゼロにする社会およびその状態を目指す取り組みのことです。
地球温暖化対策の方針として脱炭素社会が掲げられたきっかけは、2015年に合意された、京都議定書の後継にあたる「パリ協定」です。地球温暖化の防止に対して危機感を覚えた発展途上国を含む各国が、一丸となって温室効果ガスの削減と経済成長の両立を目指すことで合意しています。
パリ協定が掲げる長期目標を以下より引用します。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- リストアイコン そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
脱炭素社会に向けた取り組みの中心となるのが、「カーボンニュートラル」の考え方です。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量から吸収量を差し引いたときに、プラスマイナスゼロにする状態を目指す活動です。おおまかではあるものの、脱炭素社会化=カーボンニュートラルを目指す活動との認識でも問題ないでしょう。
脱炭素社会への取り組みを事業とするのが脱炭素ビジネス
脱炭素に向けた取り組みを自社事業として展開することを、脱炭素ビジネスと呼びます。例えば、次の事業が脱炭素ビジネスになります。
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日本政府の見解に拠ると、「脱炭素社会へ向けた取り組みはコストではなく、国際的な成長機会と捉える時代に突入した」と示しています。
実際に、Googleといったグローバル企業や日本の大企業は、脱炭素に関する投資やビジネス展開を進めている最中です。
今後も脱炭素関係の市場は急拡大すると予想されており、脱炭素に伴う商品やサービスの需要も一気に伸びる可能性があります。
逆に脱炭素社会と逆行する企業は、他企業や消費者との方針の違いによって取引が難しくなり、淘汰されやすくなっていくとも考えられるでしょう。中小企業を含めた国内の企業は、今後脱炭素ビジネスへの参入がマストになっていく可能性が高いです。
実際に電気自動車や水素自動車の研究が進められていますし、太陽光やバイオマス発電などのグリーンエネルギー関連事業へのESG投資も活発になってきました。SDGs(持続可能な開発目標)を謳うことで、ブランドイメージの向上を狙う企業も増えつつあります。
環境省の公式ホームページでは、企業の脱炭素経営の道標となる、「脱炭素経営推進ガイドブック」が公表されています。また、環境省が運営する「脱炭素ポータル」では、カーボンニュートラルに向けた各種取組の最新情報がチェック可能です。
脱炭素社会に向けた企業の取り組み事例
日本では大企業を中心に、脱炭素社会に向けた取り組みやビジネスを展開しています。ここからは、国内企業による脱炭素社会に向けた取り組みおよびビジネスの事例をみていきましょう。
三井物産株式会社(e-dash株式会社)
三井グループの大手総合商社である三井物産株式会社は、企業・自治体の脱炭素への取り組みをサポートする企業「e-dash株式会社」を設立しています。
同社が提供する「e-dash」は、請求書スキャンによる二酸化炭素排出量の算出・分析や、二酸化炭素排出量削減に関する提案・見積もりなどを代行するクラウドサービスです。
また、三井物産はクリーンエネルギー投資会社「Aker Horizons ASA」が持株会社を通じて保有する再生可能エネルギー事業者「Mainstream Renewable Power Limited」の株式を27.5%取得。約770億円の出資を行いました。
株式会社竹中工務店
日本の最大手総合建築会社である株式会社竹中工務店は、脱炭素社会に向けたさまざまな商品開発や建物建築を進めています。
具体的な取り組みは次のとおりです。
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ヤマハ発動機株式会社
オートバイなどの輸送用機器の大手メーカーであるヤマハ発電機株式会社は、二酸化炭素の排出量を抑えるエンジンの開発や、製造過程での廃棄熱エネルギーの利用などを実施しています。
実際に2020年度は計画削減量12.5%に対し、実績15.8%と結果を残しています。
大和アセットマネジメント株式会社
株式会社大和証券グループ本社の傘下である大和アセットマネジメント株式会社は、脱炭素社会の実現に向けたプロジェクトへ投資する投資信託商品「脱炭素テクノロジー株式ファンド(カーボンZERO)」を運用しています。
当該ファンドは、温室効果ガス排出量を削減するテクノロジーやサービスを提供する企業で構成されています。こうした投資商品を提供することで、一般投資家もESG投資へ気軽に参画できるようになりました。
中小企業の脱炭素社会への取り組みについて
ここまでは大企業を中心に解説しましたが、2022年現在では中小企業も脱炭素社会に向けた取り組みを実施中です。例えば環境省の「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」では、印刷会社や製造会社の事例を確認できます。
同ハンドブックには、他にも中小企業向けの脱炭素経営の在り方や計画策定の方法、ケーススタディなどがまとめられています。2022年現在では、中小企業の脱炭素ビジネスを支援する補助金の公募もスタートし始めました(詳細は後述)。
将来的に脱炭素ビジネスの展開を検討中の経営者や担当者の方は、一度目を通してみてはいかがでしょうか。
脱炭素社会に向けた日本の現状
日本国として本格的に脱炭素社会を目指す考えが示されたのが、2020年10月の管元首相による所信表明演説です。同年には、2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略が発表されました。
さらに2022年4月には「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の改正法が施行されています
日本が2050年までに掲げている、脱炭素社会に向けた目標は次のとおりです。
2030年目標 | -46%(2013年度比)(50%の高みに向け、挑戦を続ける) |
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2050年目標 | 二酸化炭素の排出量と吸収量の収支ゼロ達成 |
データから見る日本の脱炭素社会の状況
日本でも脱炭素社会に向けた取り組みが進められています。国立研究開発法人 国立環境研究所の「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)」によると、2013年度から2020年度にかけて、二酸化炭素の排出量が-約3億360万トンと約21.5%減少しています。
2020年度の数値は、1990年度以降の最小値です。新型コロナウイルスによる製造業の生産量や航空機・船舶などの稼働率の減少なども影響しているものの、7年連続で総排出量が減少しているのを見ると、脱炭素に向けた活動の効果が出ているといえます。
また日本では、気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)、脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)に取り組んでいる企業数が、2022年3月時点でも世界でもトップクラスとなっています。
とはいえ日本の脱炭素社会への取り組みは、まだまだ遅れていると言われています。国際社会に後れを取らぬよう、日本では今後も脱炭素社会に関する施策が進められるでしょう。
日本が実施している具体的な施策
以下では、日本国内で行われている脱炭素に向けた取り組みを一部ご紹介します。
グリーン成長戦略の実施
「グリーン成長戦略」とは、温室効果ガス排出を伴うエネルギー利用から、グリーンエネルギー(太陽光・風力・地熱・バイオマス)利用にシフトすることで、カーボンニュートラルや経済成長の達成を狙う日本の政策です。
グリーンエネルギーに関する事業活動やそれらに寄与する技術・開発などを支援するため、金融関係の整備や税制優遇制度などを実施します。
主な施策内容は次のとおりです。
グリーンイノベーション基金設立 | 10年間で2兆円規模の基金を予算とし、研究・開発・実装などの支援や民間企業の活動促進を狙う |
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カーボンニュートラルに向けた税制 | 脱炭素効果を持つ製品に関する設備や生産工程における脱炭素化を達成する設備などを導入した企業の税金を優遇する |
金融関係 | 脱炭素社会への取り組みに関する融資制度や金融市場の整備を実施する |
規制改革・標準化 | 脱炭素化に伴う新技術などに関して、導入や活用がしやすいよう、新しい規制強化や古い規制の撤廃などを行う |
グリーン枠の補助金制度の設立
中小企業向けの脱炭素ビジネスの支援策として、各種の補助金制度拡大や新設が行われています。具体的な補助金制度は次のとおりです。
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 | 新手法による再エネ導入・価格低減や関連する運転制御設備等導入促進などに関しての補助金 |
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事業再構築補助金のグリーン成長枠 | ウィズコロナ時代の環境変化に対応する際に、グリーン成長戦略の14分野に課題解決のための取り組みを行う事業者を支援する補助金 |
ものづくり補助金のグリーン枠 | 生産性を向上するための革新的な改善に際し、温室効果ガスの排出削減に関連する改善を実施した事業者を支援する補助金 |
上記した補助金の採択を受けられれば、最大数千万円~数億円の補助金を受け取れる可能性があります。将来的に脱炭素ビジネスを展開したい中小企業にとって、心強い味方になるでしょう。
弊社のコラム記事では、補助金採択に関するさまざまな情報を掲載しています。ぜひ一度ご覧ください。
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脱炭素ビジネスは、大企業の取引先となる中小企業も、今後取り組むべき事業の1つとなりました。
しかし各種制度や補助金が充実してきたものの、実際に脱炭素ビジネスの新規立ち上げの労力は多く、重い腰が上がらない事業者の方も少なくありません。
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