マーケティング
1本3億円でもマグロを競り落とす本当の理由【すしざんまい(販促・広報)】
2019年10月22日 (2021年01月15日更新)
(とはいえ、それでもキロ10万円と非常に高額なことには変わりありませんが・・)ちなみに、総額、キロ単価共に史上最高値を付けたのは、喜代村が3億3600万円(120万円/キロ)で落札した一昨年2019年の初競りです。
では、すしざんまいは、なぜ大赤字を出してまで、初競りを落札するのでしょうか?みなさんは、もうお分かりですよね。これがすしざんまいの広報・PR戦略です。すしざんまいは東京の会社なので、私の暮らす関西にはほとんど店舗がありません。
それでも、すしざんまいの名前は、何年も前から聞いてよく知っています。理由はもちろん、毎年の初競り後の報道です。
(そして今回のコラムも、web検索すれば大量に出てくる報道記事をもとに執筆しています)史上最高値を付けた2019年は、・豊洲市場移転後初の初競り・平成最後の初競り
・2018年の初競りですしざんまいは7連覇を阻止された
・例年は年末に水揚げされたマグロが競りにかけられるが、初競り前日に上等な大間産本マグロが水揚げされた
ということで、高値で落札される条件が揃っていました。
初競りを取材に来ていた報道陣は50人を超えていたそうです。
そんな中で満を持して行われた初競り。
結果、すしざんまいが史上最高値で落札したことは、すぐに報道番組や情報番組、新聞、ネットニュースなどを駆け巡り、非常に大きな話題となったのはみなさんの記憶の通りです。TV報道は、ゴールデンタイムやプライムタイムと呼ばれる最も注目率の高まる時間帯に、全国向けニュースとして複数のテレビ局で報道されています。
新聞報道においても全国紙だけでなく、ブロック紙、地方紙と様々な新聞で記事になりました。
広報・PRの成果を数値化して可視化する手法として、正直適切な方法とは言えませんが、広告費換算という手法がしばしば用いられます。報道された新聞記事やwebニュースのサイズ、報道番組や情報番組で取り上げられた時間を算出し、もし仮に新聞やweb、TV、ラジオ等に同じ大きさ、同じ時間分の広告を出したとしたら、広告費はいくらになるかということを算出する方法です。
間違いなく、3億3600万円では収まりません。また、別のコラムでも書きましたが、報道と広告では『情報の価値』が大きく異なります。すしざんまいは、その報道価値を理解した上で、これほどまでの巨額な費用をつぎ込んで落札してきたのです。
もちろん、このような広報戦略に異を唱える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、すしざんまいはこの手法で、“初競り名物企業”のポジションを築くことができ、知名度を一気に高めました。今年2021年も然り、いまや初競りの勝ち負けに関係なく、必ずニュースで取り上げられていますね。
そして、お客様は本当に上質なマグロをお値打ちすぎる価格で食べることが出来、漁師さん、仲買人、仲卸業者は高額落札の恩恵にあずかれます。
このように、すしざんまいだけが得をするのではなく、周囲のみんなを幸せにするこの戦略は、お見事と言えるのではないでしょうか。
おさらい
- 3億円マグロの狙いは広報効果
- 仕入れで大赤字を出しても、メディアでの露出時間を広告費に換算すると投資対効果は抜群
- 報道による情報露出は、広告での露出より大きな効果が見込める