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所在不明株主からの株式買取り ~所在不明株式の株式売却許可申立~

株価対策・株式譲渡

2023年12月14日

所在不明株主からの株式買取り ~所在不明株式の株式売却許可申立~

所在不明株式のような株主の所在がわからない株式をそのままにしておくと、突然、所在不明株主が現れ、会社の重要な事項に反対する議決権の行使をされてしまうという可能性があります。

このような事が起これば、事業承継を円滑に進めることも難しくなってしまいます。

そのため事業承継に向け株式集約するためや、株主管理コストを削減したいということから、所在不明株主の保有株式をどのように強制的に取得できるかが問題になります(所在不明株主と直接交渉して任意に株式を取得することは不可能であるため)。

所在不明株主とは

この点、会社法197条では、所在不明株主の株式の競売等の制度があります。

これは、①所在不明株主に対する通知・催告が5年以上継続して到達せず、かつ、②当該所在不明株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかった場合には、会社が、当該所在不明株主の保有株式について、その承諾を得ることなく、競売するかまたは一定の方法により売却することができるというものです。

所在不明株主が保有する株式の競売または売却の流れ

そして、この制度により会社が所在不明株主の保有株式の競売または売却を行うには、

  1. 会社法198条1項および会社法施行規則39条に定める事項についての公告と当該所在不明株主およびその登録株式質権者に対する各別の催告を行ったうえで、
  2. 当該所在不明株主その他の利害関係人が異議を述べずに会社が定めた3か月以上の異議申述期間が経過することが必要となります(会社法198条1項)。
    なお、異議申述期間内に所在不明株主その他の利害関係人が異議を述べなかったときは、当該所在不明株主の保有株式に係る株券は無効となります(会社法198条5項)。

 所在不明株主の保有株式の換価の方法としては、競売と売却があります。

市場価格のある株式の場合

市場価格として会社法施行規則38条で定める方法により算定される額をもって売却する必要があります(会社法197条2項1文前段)。

市場価格のない株式の場合

取締役全員の同意により裁判所に対して売却許可の申立てを行い(会社法197条2項2文)、裁判所の許可を得て売却する必要があります(会社法197条2項1文後段)。
この申立ては、本社所在地を管轄する裁判所にて行ないます。

 

申立に必要な書類は以下の通りです。

  • 履歴事項全部証明書
  • 株主名簿
  • 株主総会招集通知及び返戻封筒(5年分)
  • 剰余金配当送金通知書及び返戻封筒(5年分)
  • 催告書及び発出がわかる資料
  • 株価鑑定書
  • 取締役全員の同意書/取締役会議事録

また、申立を行う際には、申立手数料とし1,000円分の収入印紙が必要となります。

このように、
所在不明株式を競売以外の方法で売却する場合には、競売以外の売却を行うための事由
5年間継続して通知を行ったけれど到達しなかったということを明確に示す必要があります。

上記必要書類の「株主総会招集通知書及び返戻封筒」「剰余金配当送金通知書及び返戻封筒」は必須となります。

会社は、このようにして売却する株式の全部または一部を自ら買い取ることができます(会社法197条3項)。

会社による所在不明株主の保有株式の競売または売却により、当該所在不明株主は株主の地位を失うことになります。
競売または売却の代金の所在不明株主に対する支払は、供託する方法により行います(民法494条)。

※供託の手続き
所在不明株主に対する通知・催告が5年以上継続して到達しない場合の当該所在不明株主に対する会社の義務の履行地は会社の本店所在地とされているため(会社法196条2項、4条)、供託の手続は会社の本店所在地を管轄する法務局で行います(民法495条1項)。

経営承継円滑化法の認定を受けた中小企業は「5年」が「1年」に短縮できる

都道府県知事から経営承継円滑化法12条1項1号ホの認定を受けた中小企業については,「5年」を「1年」に短縮でき、株主が1年以上継続して所在不明な場合に株式売却許可申立てをすることができます。

なお,特例による申立ては,都道府県知事の認定を受けてから2年以内にすることが必要です(経営承継円滑化法施行規則8条9項)。

この記事の監修・筆者

中谷 健太
中谷 健太
(株)新経営サービス 執行役員 経営支援部部長
「事業承継&後継者育成の専門家」
大手コンサルティング会社、事業会社の役員を経て、現在は事業承継・後継者育成の専門家として活動。
これまで約300社以上の中小企業に対し、全体最適をコンセプトとした承継設計から、後継者・幹部育成、承継後の組織改革までを一気通貫で支援している。
単なるスキーム設計や税務対策にとどまらず、承継の成否を分ける「人と組織」に焦点を当てた実践型コンサルティングを展開。
事業会社での役員経験や経営当事者としての経験を活かし、理論だけでは終わらない「現場で機能する承継」を設計する実践派コンサルタントとして定評がある。
後継者不在や事業不振による廃業予定案件、争族問題に発展した家族経営、社長急逝による緊急承継など、難易度の高い案件を多数担当。