株式信託の活用で、資金ゼロで後継者に議決権を預け、経営の凍結を防ぐ
- 株式・資金対策
- 相続争い予防
ご相談内容
お客様情報
- オーナー(90歳)、後継者社長(息子・65歳)
- 従業員60名、卸売業
ご相談の経緯
これまでも株式の暦年贈与を行っていましたが、なお現オーナーは株式80%を持ち、株価も非常に高額となっていました。近年、オーナーの物忘れが多くなり、顧問税理士より「認知症対策も含めた事業承継対策を行った方が良いがどうすれば良いか」と当社の事業承継コンサルティングに相談がありました。
主な状況
- 現オーナーは、株式80%を保有する他、多数の収益不動産も保有。
- 認知症が進みつつあり、いつ意思・判断能力を喪失するかもわからない状況。
- 現社長は息子であり、株式15%の保有に留まり、経営権(議決権)が不安。
- 息子は多額の贈与税を支払う資金力はない。
- 現社長(息子)以外に、兄弟がいる。
- 事業承継税制の利用はない。
危惧する点
- オーナーが意思・判断能力を喪失した場合は、事業の経営が凍結してしまう(契約関係を結べず、株主総会の決議もできず役員改選・定款変更・決算承認等もできなくなる)。
- 一方で、一刻も早く議決権を現社長の息子に集中させる必要があるが、高額の贈与税を支払う資金余力はない。
主な対策
① 株式信託の実施
- 判断能力がなくなれば契約が出来なくなり、経営が凍結してしまう為、オーナーが判断能力あるうちに信託契約を実施。株式信託であれば、贈与税はかからないため(※)、後継者である息子は資金なしに「議決権のみ」を得ることができるため、経営の凍結を防ぐことができる。そこで、取引先金融機関に事前承諾を得た上で、株式信託を実施した。
※株式の使用収益権はオーナーに設定することで(自益信託)、信託時の贈与税はかからない。 - その後、議決権を信託した状態で、贈与税のかからない範囲内で受益権を少しずつ息子に贈与していく。
- 現社長(息子)以外にも兄弟がいるが、オーナーが死亡した後の株式の承継先は、現社長に指定する(これで遺言と同様の効果)
担当事業承継士よりコメント
信託を活用すれば、オーナーから後継者へ元手資金なしに「議決権のみ」預けることができることができ、贈与税はかかりません。また、後継者に議決権を預けてしまうことに不安がある場合は、現経営者は「指図権」を設定することで、これまで通り経営権を持つこともできます。さらに信託契約は、定款変更や会社の登記変更も不要です。相続人が兄妹で2人いる場合も、長男には株式を信託し(後継者へ議決権の集中)、長男・長女に受益権を2分の1承継させる契約とし、その後長男に資金ができた段階で、長女の受益権を買い取るスキームにしておけば、遺留分対策までできてしまうのです。
事業承継において株式の信託方式はまさに魔法ともいえます。