事業承継の悩み、自社株買いが解決! 非上場企業の賢い選択
2025年01月16日
もくじ
自社株買い(金庫株)とは
自社株買いとは、『金庫株』とも言い、会社が株主から自社の株式を購入するスキームのことです。株主は株式を会社に売却し、会社は対価として現金を支払います。
事業承継対策としては比較的一般的であり、簡単に言うと、会社が株式を買うことで、『オーナーに資金が回り、後継者の株式買い取りに要する負担金額が減る』スキームです。
業歴が長く株価が高騰している企業や後継者の株式買い取り資金が不足している場合には有効な手法です。
また、汎用性も高く、以下のようなケースに多く用いられます。
- 後継者の株式買い取り資金を減らしたい
- 株価が高騰している
- 相続人の納税資金対策が必要
- 株式保有者(オーナー家)に資金を残したい
- 株式を分散させずに後継者に集約させたい
- 株主が複数に分散しており、集約させたい
自社株買い(金庫株)の効果
1.後継者の議決権を確保する
経営者が会社に40,000株を売り渡し、会社が対価として現金を支払います。これにより、現経営者の株は60,000株に減少します。
残り6万株を後継者に渡すのですが、自社株買いでは議決権が発生しません。したがって、後継者は6万株しか買っていないのに議決権が100%を維持できるという仕組みです。
結果的に、自社株買い(金庫株)の活用により、後継者の必要資金が10億円 ⇒ 6億円に減少します。
ただし、純資産に4万株分のマイナスが入るので注意が必要です。
2.株式を現金に換えることで様々な対策ができる
- 会社に関わらない相続人に対しては、会社が買い取ることで、現金に換えることができ、納税資金対策になります。
- オーナーが存命の内に自社株買いを行うことで、株式を現金に換えることができ、老後の資金として残すことや相続人に現金を渡すことができます。
⇒これらによって、会社を承継する後継者には株式を、承継しない親族には現金を渡すことができ、承継後の後継者の経営もスムーズに行うことができます。
3.分散した株式を集約させる
業歴の長い会社などでありがちな株主が数十人いるケースなどの対策にも自社株買いは有効です。会社で買い取り請求を行い、議決権を集約することができます。
自社株買いのデメリット
上記で少し触れていますが、デメリットは大きく3点あります。
- キャッシュ減少に伴うキャッシュフローの悪化
前提として会社が株式を買い取るための資金が必要です。そして資金を対価に株式を購入するため、キャッシュフローが悪化します。 - 純資産の減少に伴う財務体質の悪化
自社株式購入分はダイレクトに純資産にマイナス勘定として入るため自己資本比率の低下など、財務体質の悪化に繋がります。
⇒自社株買いは自社のキャッシュフローや財務体質を見極めて実行することが極めて重要です。
本コラムでは細かく記載しませんが、財源規制など実際に実施できる金額に制限があり、幾らでもできるわけではない点には注意が必要です。 - みなし配当、みなし譲渡などの税務リスク
自己株式の売買価格の設定によって、過大な税務コストが発生する懸念があります。
例えば、税務上の時価よりも低い場合には、譲渡所得課税・みなし配当課税に加え、税務上の時価と対価の差額について、みなし譲渡課税が課せられる懸念があるなど、注意が必要です。
自社株買いのメリット・デメリットまとめ
メリット | デメリット |
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自己株式は事業承継対策として、広く使われているスキームではありますが、メリットだけでなくデメリットも考慮した実行が不可欠です。