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事業承継に最も大切な「家族会議」 ~争族防止の切り札~

事業承継のアレコレ

2025年08月18日

事業承継に最も大切な「家族会議」 ~争族防止の切り札~

同族企業においては、血縁関係があるがゆえに生じる軋轢が、大きな問題となる場合が多い

事業承継においては、株式や事業用資産をいかに後継者に集中させるか、という論点もありますが、後継者の決定や財産の分配などで、家族の反発を招き、争族やトラブルに繋がり「事業承継=家族、一族崩壊」ということも残念ながら十分にあり得る話です。
そうなってしまえば、事業承継は「失敗」となります。

当然、家族も争いごとは望んではいません。
しかし、どうしても争いごとになりやすいのも、事業承継の時です。
同族企業においては、血縁関係があるがゆえに生じる軋轢が、大きな問題となる場合が多いのです。
そういう意味では、家族というのは、一番近しい存在でありながら、一番遠い存在でもあるように感じます。

家族会議こそ最重要なステップ

そこで、事業承継を進める上で最も大切なステップが「家族会議」です。

家族会議は、事業承継を本格的に進める上で、家族内のコミュニケーションや意思決定を円滑にするための重要なステップとなります。
経営者の思いや、家族それぞれの事業承継に関する意見や考えや、不安などを共有することで、お互いの理解を深め、事業承継とその後の会社の運営に向けて協力関係を築くことができます。

家族会議は、経営権や財産争いなどで大きなトラブルを呼び込まないうちに、主催者である経営者が元気でリーダーシップのある時に、また一族が集まることが可能なうちに実施しましょう。
また、この家族会議では、私のような事業承継士が一番、必要とされる場面でもあります。

事業承継において最も大切な段階は、この家族会議といっても過言ではありません。
社長交代の混乱を最小限に抑え、争族防止の切り札になるだけでなく、より家族の団結力を高めて後継者を盛り立てていく機会にもなります。

事業承継の本格的な第一歩となるのです。

家族会議の一例:後継者指名と、資産の集中

例えば「家族会議」では以下のような点について、決定します。

(イ)事業を承継する後継者の指名
(ロ)後継者へ事業用資産を全て集中させる
(ハ)後継者以外への配慮

これらを社長が元気なうちに決定し、事業承継時や相続時の混乱を防ぎ、一族と安寧を目指します。
家族会議の最大の目的は、家族の安寧と結束力を高めることに尽きます。

(イ)事業を承継する後継者の指名

後継者を指名する場所として「家族会議」を開くことで、またこの「家族会議」は力を発揮します。
後継者を決めることは、事業承継の本格的な第一歩となります。
後継者を指名した際に、家族から後継者に対する想いや考え方を知ることが出来、今後の要らぬトラブルを未然に防ぐ効果があるのです。

後継者として指名を受けた人にとってもこの先の重責を担う覚悟を自覚してもらい、この日から本格的な準備に入ることができます。
後継者が家族に対して所信表明し、「自分が継ぐんだ!」という覚悟が決まると、その後の姿勢も変わってきます。

(ロ)後継者への事業資産「全て」を集中させる

事業承継では、後継者を指名し会社を任せるということはシンプルに言えば「後継者に株式を渡す」ということになります。

後継者に株式を集中するのは一般論だとしても、後継者以外の家族にとっては理解できないことでもあります。
家族会議で後継者に株式を集中させなければならないことをしっかりと理解してもらえなければ、後々トラブルになりかねません。

株がバラバラに分散してしまえば、経営に支障が出てくる可能性があります。

後継者に集中させなければならないのは株式だけではありません。
個人所有の土地が共同で相続になったとしても、その上に会社建物があれば、ややこしい問題も出てきます。
よって、株式だけでなく、「事業資産も全て」後継者に相続させなければならないのです。

(ハ)後継者以外への配慮

後継者に株式や事業用資産(不動産等)の集中をすべきですが、一方で経営者の資産の大半が株式や事業用資産であることも多く、その場合、会社経営にタッチしない後継者以外に対しての相続財産はどうすべきか?という問題もあります。

とくに、遺留分の件です。
相続の「遺留分」とは、亡くなった人の遺産相続人に最低限保障される遺産取得分のことです。
例えば、もし亡くなった人が長男にだけ遺産を相続させるように遺言を書いていたとしても、次男や三男にも遺産を相続する権利があります。

相続財産に経営者の資産の大半である株式が含まれていると、後継者以外の相続人の遺留分も多額に及ぶことになり、後継者に全株を集中することも難しくなります。
その点で、この家族会議では、当社株式の法定遺留分の除外を承認してもらうことも重要となります。

他の子どもたちには、家や現金、保険金の受取り権利などを与えてバランスをとらなければなりません。

家族会議は、事業承継&ファシリテーションのプロに同席してもらう

家族会議の重要性を理解できたとしても、いざ自分たちで家族会議を実施したら

「考えについて理解してもらえなかった・・・」
「税金面など、具体的な事業承継の進め方など、その場で質問に答えられないことも多々あった・・・」
「感情的なやり取りとなり、冷静に話をすることができなくなった・・・」
「何度か家族会議をすでに開いているが、結論が出ない・・・」

といったお悩みも聞くところです。

家族会議は重要であると共に、非常に難しいものです。
家族会議の進め方を失敗すれば、家族の同意を得られなくなり事業承継が暗礁に乗り上げてしまいます。

家族会議は感情的な要素も含む場面ですが、冷静な議論と意見交換を促進することが重要です。異なる意見や懸念を尊重しながら、最良の結論を導かなければなりません。
また、事業承継は法的、税務、財務など専門的な知識が必要となり、家族会議の場で専門的な観点から回答をすることも求められます。

家族だけでの家族会議に不安がある場合は、家族会議は事業承継の専門性があり、かつ家族会議運営ノウハウを持っている第三者に同席してもらい進行してもらうことがおススメです。

「なぜそういうことが必要になるのか」を、専門家が意見を伝え、家族が冷静に判断できるようにもなります。

「家族同士では直接聞きづらいこと」も、家族会議内でしっかり結論を出さなければならないこともありますし、家族の対話が促進するようにファシリテーションできる存在が必要です。

この記事の監修・筆者

中谷 健太
中谷 健太
(株)新経営サービス 執行役員
「事業承継&経営革新の専門家」
事業承継士は、事業承継の唯一の資格であり、その専門性は折り紙つき。経営者のハッピーリタイアメントに向けて、事業承継の全体最適・プロデュース(弁護士や税理士をコーディネートする立場)を図る事業承継の専門家です。
これまで後継者不在の会社や、事業不振で廃業を検討していた会社、親族が分裂しかかっていた会社、社長の急逝による緊急対策など、様々なややこしい事業承継を担当。
また事業承継のみならず、補助金や国の中小企業政策も活用しながら、数多くの中小企業の経営革新・組織開発の支援を手掛けている。