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社長退任後の代表権と役職での失敗

経営者向け

2026年01月15日

社長退任後の代表権と役職での失敗

事業承継後に多くの企業が陥る「二頭政治」の罠があります。
支援の現場において、社長から 「引退後、代表権は残すべきだろうか。それとも取締役会長として一線を退くべきか」といった問いかけをいただきます。

そもそも、この問いに向き合っている時点で、多くの経営者は「事業承継の本質」を見失っています。
代表権の有無や肩書きの選定は、単なる形式に過ぎません。
考えるべきは、「これからの会社を誰が動かすのか」という点です。それを代表権の有無や肩書に現します。

承継後の主役は誰か

(1)後継者の意向を汲み取る

上記の問い「引退後、代表権は残すべきだろうか。それとも取締役会長として一線を退くべきか」に対し、解は「社長と後継者のどちらの意向を汲み取るか」で変わります。
そして事業承継が円滑に進むのは「後継者の意向」を汲み取るケースが圧倒的に多いです。

承継後の体制を考える際、多くの社長は「自分は何をすべきか」という、いわば「渡す側」の論理で思考を巡らせがちです。
しかし、本来優先されるべきは、バトンを受け取る側である「後継者がいかに経営をしやすい環境を作るか」という点です。承継後の主役は後継者であることを、忘れがちな経営者がいます。

会長職で失敗するケース

(1)対外的な実権を維持する

仮に代表取締役会長となった場合、対外的には未だ実権を会長が握っていると思われるでしょう。
「取引先や銀行が不安がるから、代表権は持っておいたほうがいい」という言葉もよく耳にします。しかし、これは外部から見ると後継者に対する不信感の裏返しに見えます。
対外的に代表権を持ち続けることは、周囲に対して「まだ新社長は一人前ではない」と宣伝しているようなものです。
後継者が「真の代表」として世間に認められる機会を奪っていることに他なりません。

(2)社内でのプレッシャー

仮に代表権をなくしたとしても、社内への影響力は変わりません。中には、会議体に出席する中で、気づけば会長の独壇場になっている会社もあります。

従業員や役員は、どうしても先代の顔色を伺います。
新社長が新しい方針を打ち出しても、「会長はどう思われるだろうか」という空気が社内に蔓延すれば、後継者は「お飾り社長」になり、求心力は削がれていきます。

役職は「任せる/任せない」意思表示

(1)代表権を外すことで任せる意思を示す

経営者にとって、会社は人生そのものであり、引退に際し、自分の居場所がなくなるような「寂しさ」を感じるのは人間として当然の感情です。
また、「自分のできるところまで会社に貢献したい」という思いを持つ方もおられるでしょう。
経営判断においてその個人的な心情を優先させることは、企業の永続性を危うくします。

役職とは、単なる事務的な呼称ではなく、組織内外に対する「意思表示」です。
代表権を完全に外し、登記上も一取締役、あるいは相談役へと退くことは、後継者に対して「これからはお前の責任でこの会社を動かせ。」というメッセージとなります。

あえて渡す側が「後継者の退路を断つ」という考え方も必要です。
そうすることで、未熟ながらも「本当の経営者」としての自覚が芽生えることもあります。
会長が傍で支える状況、ハンドルを奪い返せる状態では、「最後は会長が何とかしてくれる」という甘えが後継者から消えません。

(2)社長退任後にやってはいけないこと

もし、承継後に会長として残るのであれば、その役割を定義する必要があります。
失敗するパターンの多くは、役割が曖昧なまま、先代が「良かれと思って」経営に口を出すケースです。
会長として組織に留まるならば、以下の三つくらいは意識して控えたほうが良いでしょう。

①会議に出ない
定例の経営会議や幹部会に会長が座っていると、社員は会長に向けて話します。また、我慢できずに発言してしまう会長もおられます。

②意思決定をしない
最終判断はすべて社長に委ねるべきです。たとえ自分の考えと違っていても、会社の命的なミスでない限り、口を挟んではいけません。

③社員に指示を出さない
社員が会長に相談に来たとしても、指示は社長を通して行うべきです。
話しは聞いてあげても、「こうしなさい」と指示を出すと、後継者と食い違った時に社内が混乱します。
そこで会長の意見が尊重されると社員は「今後も会長に相談すれば良い」となってしまいます。

会長の本来の役割は、「求められたときに知恵を貸す」ことだと思います。
後継者が決断を迫られたとき、あるいは過去の経緯を確認したいとき、壁打ちの相手として機能することです。

逆に言えば、こうした「一歩引いた関わり」ができないのであれば、事業承継そのものを考え直すべきかもしれません。
トップが二人いる「二頭政治」は、組織に混乱をもたらすからです。

結論

事業承継を成功させるための最適解は、極めてシンプルです。

①後継者に任せるなら代表権の保持は避ける
②会長として残るのであれば、一歩引いて「知恵を貸す」役割に徹する

事業承継が上手くいった会社の多くで「先代が任せてくれた」という声が聞かれます。
渡した後は経営に関わらず、毎朝社内の掃除をしたり、小屋にこもって研究開発に没頭されたり、といった社長もいます。
そういった「後継者に任せる姿勢を見せる」ことが事業承継を円滑にするコツです。

承継後の役職やタイミングについて悩んでおられる方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修・筆者

上坂研祐
上坂研祐
(株)新経営サービス シニアコンサルタント
滋賀大学経済学部を卒業後、事業会社の管理業務に従事。その後大手コンサルティング会社のマネージャーを経て株式会社新経営サービスに入社。
「経営者に寄り添い、思いを具体化する」を信条とし、中小・中堅企業を中心に事業承継、ホールディングス化構築、グループ経営など財務・組織戦略をメインテーマとして活動。
これまで、親族内の紛争やオーナー家と従業員後継者との争いなど、様々な事業承継の現場に立ち会っている。部分最適に陥らない、全体最適での事業承継・ホールディングス構築支援に強みを持ち、承継後の経営戦略や組織改善の支援まで手掛ける。