納税猶予の特例を活用。資金ゼロで事業用資産の全てを後継者に贈与し、早期社長交代を実現
- 事業承継計画書作成
- 代表交代と成長支援
- 後継者対策
ご相談内容
お客様情報
- 社長(75歳)、後継者(長男・45歳)
- 従業員30名、半導体検査業
ご相談の経緯
社長も75歳を迎え、検査入院を経て健康不安も感じ始め、一刻も早く後継者である長男に社長交代したいと考えていました。
社長から長男には、これまでも株式の暦年贈与をコツコツと実施してきましたが、いまだ株式の保有比率は、社長60%、長男20%、その他親族20%でした。
そんな中、私が講師を務める事業承継セミナーに参加され、経営承継円滑化法の納税猶予の特例を知ることになり、相談と事業承継診断を経て、事業承継コンサルティングをする運びとなりました。
主な状況
- 社長交代の時期は遅くとも2~3年以内の実施を予定している。
- 法定相続人は、長男、次男である(妻は既に他界)。
- 外部環境および会社の収益性も良好であり、今後も株価が上昇し続ける見込み。
- 社長の財産の大半が自社株式、会社で使用している個人所有の土地であった(株式1億円、土地6000万円、現金2000万円)。
- 社長が後継者である長男には、相続財産の大半を占める全株式に加え、会社で使用している個人所有の土地も相続させたいと考えているが、次男の遺留分への配慮もあって、遺言書の財産分与もどうすべきか迷っていた。
危惧した点
- 分散している株式をそのまま放置しておくと、相続が発生すれば経営に関与しない相続人から高値での買取を求められることや、少数株主権の行使(3%以上で、総会招集請求や、役員の解任請求、会計帳簿閲覧請求。1%以上で、株主提案や、総会検査役選任請求が可能になる)など後々トラブルが発生するリスクがあり、後継者が苦労する恐れがある。
- 相続が発生した場合、社長の資産1億8000万(+加えて死亡前10年以内の社長から長男への贈与も基礎財産に含まれる)は長男、次男での相続となり、次男にも遺留分として約5000万円程度を相続する権利がある。
- 仮に遺留分侵害額請求を受けた場合には、長男が次男に対して多額の現金を支払う必要が出てくるが、長男には資産がない。
主な対策
① 事業用資産の後継者への集中
土地はたしかに個人所有のものであるが、その土地を兄弟仲良く半々で相続したとしても、経営にタッチしていない弟が、後々換金したいと言いだすケースはある。その場合、兄が資金を工面して買い取ることも実務的にはよく起こる為、個人所有の土地であっても、その上に会社がある場合は、事業資産としてみなすことが望ましい。
そこで、個人所有の土地は会社で買い取り、会社所有にすることに。後継者が自己株式を取得することで、実質的に土地も所有することに繋がる。
② 株式の贈与税納税猶予と、分散した株式も後継者に集約
資産も多く贈与税や相続税も高くなるため、「特例承継計画」の策定をし、都道府県知事の認定を得て、納税猶予制度の特例を活用。
それによって、自己株式(分散した株式も全て)を社長や親族から後継者へ自己資金ゼロ(納税猶予)で贈与することができ、速やかに経営権を完全に長男に移行することができた。
③ 遺留分に関する民法特例を申請
併せて経営承継円滑化法の民法特例を活用し、生前贈与した自社株式を推定相続人全員(長男・次男)で合意することにより、遺留分算定基礎財産から除外した(除外合意)。
④ 後継者以外の次男への配慮
事業用資産を全て長男に贈与したことから、後継者ではない次男への配慮が必要となる。それについては換金性の高い資産(現預金、生命保険金等)を全て次男に渡すことに。
コメント
ご相談から2年で、ご希望する通り、事業用資産を長男に全て承継し経営権を完全に移行することができ、また事業承継税制の特例措置を活用し、贈与税の納税猶予を得ることができました。
とくに、今回は後継者以外の次男への相続財産の配慮がポイントであり、丁寧な説明を通じて、事業用資産を後継者に集中させた方が良い理由なども含めて理解を得ていただくことができました。