外に出た息子への3年での事業承継と次期社長育成
- 事業承継計画書作成
- 代表交代と成長支援
- 後継者対策
- 相続争い予防
ご相談内容
お客様情報
- 社長(72歳)、後継者(長男45歳)への事業承継
- 従業員15名、専門商社
ご相談の経緯
長男は大学卒業後、親への一種の反骨精神もあってか別の道(メーカー勤務)を進みました。しかし、長男も40歳を過ぎサラリーマンとしての成長も一つの到達点が見えたのか、逡巡していた時期に「私の後を継いではどうか」と父からの呼びかけもあって入社。後継者候補も決まり、社長から事業承継の全体プロデュースと、息子の成長を長期的に横から支える伴走者になって欲しいとの思いもあり、後継者と同年代の私にコンサルティングの相談がありました。
主な状況
- 株式保有比率:社長80%、社長の弟15%、役員5%。社長の妻は既に他界
- 社長個人の資産は、株式1.2億円、現預金3000万円、土地5000万円(その上に会社建物がある)、自宅4000万円
- 長男は専門商社の業界や経営知識は保有していない
- 長男の他、娘が2人いる
- 社長75歳(あと3年)で社長を長男に交代する計画を持つ
- 会社業績は順調であり、株価も年々上昇傾向
危惧する点
- 役員陣や古参社員の中には、社長の長男が後継することに反対する者もいる(業界未経験者であることに対する不安感や経営者としての力量に懐疑的であること)。あと3年で混乱なく社長交代に繋げる教育計画が必要。
- 現社長の相続が発生した場合、株式や個人所有の土地(その上に会社が建っている)を長男に集中させたいが、会社を継がない娘2人への遺留分に配慮しなければならない。
- また、長男には資金がなく、株式の贈与税や相続税の資金を用意するのも困難な状況である。
- 分散している株式をそのまま放置しておくと、相続が発生すれば経営に関与しない相続人から高値での買取を求められることや、少数株主権の行使など後々トラブルが発生するリスクがあり、後継者が苦労する恐れがある。
- 株価も相続時には、さらに高まる可能性が高い。
対策
① 3年での社長交代を見据えた「事業承継計画書」の作成
- 社長75歳(あと3年)で社長交代予定であり、あと3年での計画的な株式や節税対策および教育計画を社長と後継者で策定。
- 古参役員を教育係にすると共に、1年目は営業の現場に。同時に新卒採用チームを立上げ、そのリーダーに。また3カ月ごとのジョブローテーションで全部門把握することに努めた。
- 2年目は、経営知識全般の習得を目的に外部研修に参加。BCP策定リーダーとなり部門横断的なリーダーシップを発揮させる。
- 3年目で役員(専務)就任し、管理部門の統括責任者に。中期経営計画の策定し今後の成長戦略を描かせると共に、商工会議所や業界団体へのデビューを果たし経営者の仲間入り。また社外の経営者向け研修にも参加させることとした。
② 家族会議を開催し、後継者に事業用資産を集中させることへの合意を得る
- 後継者には兄妹がいたため、自社株が散逸しないように、家族会議を開催し、長男を後継者とすること、また後継者に全株式と土地を渡すこと、株式における法定遺留分の除外を一族の合意として確認。
- 長女、次女には換金性の高い資産(現預金、生命保険等)と自宅を相続させることに。
③ 株価コントロール対策と分散株式の買い取り
- 財務体質も良好であったため、現経営者が元気なうちに社長の弟や親族から株式を会社が買い取る(金庫株)。また併せて、含み損のある資産や不良在庫の処分、退職金支給を通じて株価を押し下げることにした。
- 役員退職金規程がなかった為、あらかじめ整備。
③ 経営承継円滑化法の活用
- 株価が下がったタイミングで、自己株式を社長から後継者へ贈与し、社長交代。
- 自己資金ゼロ(納税猶予)で贈与するために「特例承継計画」の策定をし、都道府県知事の認定を得て、納税猶予制度の特例を活用(※納税猶予すれば株価は関係ないとも思われるが、将来、取り消しなどペナルティーがあったとしても低い株価にしておくことが賢明)し、経営権を完全に長男に移行することができた。
担当事業承継士よりコメント
入社して3年で社長交代を混乱なく実現できましたが、今回は後継者と古参社員との関係性について先代社長との意見のズレがありました。古参社員は後継者に対して、業界未経験ということもあって、新社長になることを懐疑的に見ていました。そこで社長は、後継社長が事業運営しやすいようにと、自分が社長退任するタイミングで、一緒に引退させることも考えていたのです。
しかし、私は、古参社員との関係も本人に解決させることが重要であり、それこそが、リーダーシップを磨く絶好のチャンスでもあると捉えていました。おかげで今は、後継社長と古参社員が一丸となって、取り組んでいます。