【解説】「後継者不在&高齢社長」の会社は、周りからどう見られているのか

後継者不在で、かつ社長が高齢化している会社が増え続けていますが、そのような会社は従業員・取引先・金融機関からどのように見られているのか、経営者は気づいていないことが多いです。
後継者不在状態を放っておくと、長期的には、社員や顧客からの不安や不信感が高まり、競合他社との競争力が低下する可能性もあります。
従業員からはどう見られているのか
優秀な人材や若い人材ほど他社に転職する
後継者不在で社長が高齢化している会社は、中長期的な事業展望や経営戦略の立案も困難になり、それはその会社の将来に不透明感を与えます。
そのような会社で働いている従業員は「今後の自身の雇用やキャリアはどうなるのか」など不安や不満を抱くことに繋がります。
そうなれば、若くて優秀な人材ほど、転職ができる年齢のうちに他社に転職するでしょうし、また若い人材を新しく採用できたとしても、時間が経てば、後継者不在や会社の将来性が不透明であることに気づき、早々に転職しようとします。
取引先からはどう見られているのか
取引先の離脱や、新規取引先からも敬遠される
後継者不在で社長が高齢化している会社が、例えば下請けの部品メーカーである場合などサプライチェーンの一端を担っている場合、社長が急逝した時に、部品供給を続けてもらえなければ、サプライチェーンが途絶し、生産ラインがストップしてしまいます。
「後継者不在」という状態は、周りの取引先企業から見て、非常に大きなリスクなのです。
長年取引をしている大口取引先からも、後継者問題に対する懸念(今後の経営体制への不透明感)や不安を持ち、信頼を失うこと(取引からの離脱)にも繋がりかねません。
そのため取引先からは、事業継続性やリスク管理の対策がしっかりと整っているかどうかを求められます。
実際に「BCP」を求められることも増えてきました。
BCP(Business Continuity Plan)とは、事業継続計画のことであり、企業や組織が災害や緊急事態などが発生した際に、事業を継続し、最小限の被害で済ませるための計画です。
事業継続性を確保するためにも、企業がリスクを予測し、それを回避・軽減するための取り組みが考えられてなければ、取引に入れなくなる時代になってきたのです。
そういった面では、後継者不在もリスクそのものであり、事業承継に向けて具体的な対策を考えられているのかは求められて当然となります。
最近では、下請け構造のトップ、代理店網の大元、FC本部などが「事業承継計画書」の提示を要求するケースも増えつつあります。
「事業承継計画書」は今後のスタンダードになります。
金融機関からはどう見られているか
業績が良くても、融資姿勢は厳しくなる
後継者不在で社長が高齢化している会社は、経営者の健康状態や突然の退職などのリスクに対しても脆弱であると見られ、中長期的な事業展望や経営戦略の立案も困難であり、それはその会社の将来に不透明感を与えます。
そのため、金融機関からの融資は、より厳しい審査や要件が課せられることがあります。
具体的には
- 経営安定性が低い
(経営者が突然亡くなった場合、後継者不在であるため、経営継続が困難になると考えられます) - 業績が不安定とみなされる
(後継者不在の会社は、将来の経営者不在のリスクがあることから、将来の業績が不安定であると見なされる場合があります) - リスク管理体制が不十分
(将来の経営者不在のリスクがあることから、リスク管理体制が不十分であると見なされる場合があります。銀行は、顧客のリスク管理能力を評価するため、リスク管理体制を重視します)
と判断され、後継者不在の会社は、たとえ業績が今良くても、銀行格付けで低い評価を受けることに繋がり、借入の難易度は高まります。
逆に、金融機関からはM&Aの提案(手数料ビジネス)をされることの方が多くなるでしょう。
高齢化した社長の会社で、後継者不在という状態は、会社経営において大きなリスクです。
社長が高齢化する前に、後継者問題に早め早めに取組んで後継者候補を擁立しなければなりません。

文責
中谷 健太
株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/認定経営革新等支援機関/補助金コンサルタント
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