• 事業承継コラム

30代の後継者が業況を好転させている

30代の後継者が業況を好転させている

前回のコラムでは、経営者が高齢化することのデメリットをお伝えしました
→ 前回コラム「後継者が高齢化することのデメリット」

30代の後継社長が業況を好転させる

東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)」によれば、30 代で事業を引き継いだ経営者は、事業承継後に前向きな取り組みを行うことで、業況を好転させている割合が高いとされています。
そういう意味では、後継者の年齢が30代の間に、事業承継を検討すべきともいえそうです。

事業承継の実態に関するアンケート調査

また別の統計として経営者年齢別に増収企業の割合を見たものがあります。
これを見ると、経営者年齢が30代の企業では増収割合が6割程度であり、経営者の年齢が若くなるにつれ、増収である中小企業の割合が高くなっていることがわかります(2021年版中小企業白書)。

これらより、売上高、利益ともに経営者年齢と負の相関があると考えられます。
その背景としては、年齢が若いほど、トライアンドエラーを許容する組織風土であり、新事業分野への進出や設備投資にも積極的であることが考えられます

また、東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)」においても、30代~40代で事業を承継した経営者は、事業承継のタイミングをちょうどよい時期であると評価しています。

30代と60代経営者における取組内容の差

30 代で事業を引き継いだ経営者は、業況を好転させている割合が高いということがわかりましたが、どのような前向きな取り組みを行っているのでしょうか? 

東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)」をもとに、30代と60代経営者における取組内容を比較してみます。

 

 

30代
経営者

60代以降
経営者

業績拡大に
向けた取り組み

新たな販路開拓・取引先拡大

43%

32%

新商品・サービスの開発

34%

19%

異業種への参入

6%

3%

経営管理強化に
向けた取り組み

中期計画等、事業計画の策定

30%

19%

管理会計の導入等、経営の見える化

19%

15%

ビジョン、ミッション、経営理念等の明確化

38%

17%

30代と60代経営者における取組内容

上記全ての項目において、60代以降の経営者に比較して、30代経営者の前向きな取り組み姿勢がわかります。
とくに、新たな販路開拓や、新商品開発など業績拡大に向けた前向きな取り組みや、中期計画の策定、経営理念の明確化等など経営管理強化に向けた取り組みで差があります。

東京商工会議所「事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)」

事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)①事業承継の実態に関するアンケート調査(平成30年)②

事業承継は企業の成長のチャンス

これまでの分析から、経営者の若返りは事業に好影響を与えやすいことがわかりました。

先代経営者や後継者は、事業承継が単なる経営者交代の機会ではなく、企業の更なる成長・発展の機会であることを認識した上で、事業承継に向けた準備や承継後の経営に臨むことが重要です。

事業承継の真の目的は、
「事業承継を契機に、経営革新を果たすこと」です。

事業承継を成功させて、経営者はようやく100点

経営学の権威的な著者であり、経営理論の先駆者の一人であるピーター・ドラッカーは「事業承継は偉大なる経営者と呼ばれるための最後のテストである」と述べています。

また、創業者や現社長が事業を発展させ、安定した利益のあがる企業を築いたことは大いなる功績であることは間違いないですが、その功績がどれほど偉大であっても「経営者としては50点」にすぎないとも言われています。

では残りの50点は何でしょうか?
それは「最適な後継者を選び、育て、交代することで、未来に向けて存続・発展できる企業をつくること」です。
社長は安易に自分の代で終えるのではなく、お客様、取引先のためにも、そして従業員とその家族のためにも会社を存続させ、さらに発展させなければなりません。

ドラッカーも最後のテストと言った所以は、
事業承継こそが、未来に向けて存続・発展できる企業をつくることになるからです。

創業者の代で事業が成功したとしても、事業がさらに継続し成長し続けるためには、経営者の世代が交代し、新たなリーダーシップが導入されること(後継者が経営を引き継ぐこと)が不可欠であること。

そして、新たなリーダーシップが導入されることで、新しいアイディアやイノベーションが生まれると信じ、事業承継によって、企業の競争力や成長が促進されると考えたことからです。

経営者の責任とは、ずばり「会社を存続させる責任」であり、言い換えれば「事業承継を成功させる責任」があると言えます。

しかし、事業承継は、社長交代はすべての経営者が一度だけ通る関門です。
未経験のテーマながら、それでも失敗は許されません。

社長交代や事業承継については、社長のまわりの人たちは誰も言い出すことはできないテーマです。
事業承継に向けて、後継者を見つけ、育て、それに向けて具体的な承継計画をスタートするのは社長にしかできません。

文責

中谷 健太

株式会社新経営サービス 経営支援部マネージャー
事業承継士/中小企業診断士/認定経営革新等支援機関/補助金コンサルタント

なかなか進まない事業承継にお困りの方は、新経営サービスにご相談ください。事業承継と経営革新の専門家が現経営者と後継者の間に入り、相続・節税対策、経営権・知的財産の引継ぎと円滑な事業承継を実現します。