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数字で見る事業承継

後継者不在率の実態

「後継者不在率50%越え」というのは本当なのか?

ポイント

  • 後継者不在率は近年改善(低下)傾向ではあるもの、まだ50%以上の企業で後継者不在。
  • ただ、上記の50%以上というのは経営者が若手30~40代も含めており、後継者がまだ決まっていないことも一般的なこと。現実的な後継者不在率を見るならば、事業承継のタイミングが訪れやすい60代~70代の時をみるべきであって、その世代(経営者が60代~70代)の後継者不在率は30~40%となっている。
  • 業種別(中分類)では、最も後継者不在率が高いのは自動車ディーラーなど「自動車・自転車小売」の4%。それに病院・診療所(クリニック)など「医療業」65.3%が続いている。

地域の経済や雇用を支える中小企業。
しかし、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多く、メディアでもしばしば取り上げられています。

法的整理(倒産)となった企業のうち、後継者不在で事業継続の見込みが立たなくなったことを理由とする倒産が2022年度は過去最高の487件に上ったことが帝国データバンクの調査でわかりました。

ここでは後継者不在率の実態と推移を見てみましょう。

(1)後継者不在率の推移

(株)帝国データバンクの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2023年)」によれば、後継者不在率は 2017年の 66.5%をピークに近年は減少傾向にあり、足下の 2023年は53.9%となっております。

2023年版の後継者不在率

「後継者不在率」推移

出所:「全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」帝国データバンク

(2)全世代で後継者不在率は低下傾向

帝国データバンクの調査によると、2021年以降、50歳代と 60歳代における後継者不在率の低下が、全体の後継者不在率の低下にとくに大きく寄与しているとのことです。

それだけでなく、全年代で後継者不在率は過去最低を更新しています。

業種別の後継者不在率

出所:「全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」帝国データバンク

これらのデータを見て感じたことは、メディアは「まだ50%以上の企業で後継者不在」と取り上げますが、この50%以上というのは経営者が若手30~40代も含めており、後継者がまだ決まっていないことも一般的なこととも言えます(この世代の後継者不在率が全体を底上げした結果)。

現実的な後継者不在率を見るならば、事業承継のタイミングが訪れやすい60代~70代の時をみるべきであって、その世代(経営者が60代~70代)の後継者不在率は30~40%となっています。

(3)業種別の後継者不在率

帝国データバンクの調査によれば、業種別の後継者不在率は、全業種で前年を下回っているほか、「建設業」を除く 6 業種で不在率 60%を下回っています。

中でも「製造業」(45.5%)は全業種で後継者不在率が最低ですが、業種をより細かくみると(中分類)、最も不在率が高いのは自動車ディーラーなど「自動車・自転車小売」の 66.4%となり、病院・診療所(クリニック)など「医療業」65.3%が続いています。

年代別後継者不在率推移

出所:「全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」帝国データバンク

文責

中谷 健太
中谷 健太
(株)新経営サービス 執行役員
「事業承継&経営革新の専門家」
事業承継士は、事業承継の唯一の資格であり、その専門性は折り紙つき。経営者のハッピーリタイアメントに向けて、事業承継の全体最適・プロデュース(弁護士や税理士をコーディネートする立場)を図る事業承継の専門家です。
これまで後継者不在の会社や、事業不振で廃業を検討していた会社、親族が分裂しかかっていた会社、社長の急逝による緊急対策など、様々なややこしい事業承継を担当。
また事業承継のみならず、補助金や国の中小企業政策も活用しながら、数多くの中小企業の経営革新・組織開発の支援を手掛けている。