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従業員承継(非同族経営)で会社を守れるのか?

事業承継のアレコレ

2025年11月10日

従業員承継(非同族経営)で会社を守れるのか?

従業員承継(非同族経営)とは

従業員承継とは、自社の従業員や役員に事業を託すことを指します。オーナー家ではない、会社に属する個人であり、親族外承継の中で、最も会社に近しい存在です。
親族外承継には従業員承継の他に、M&Aによる売却やIPO(上場)、外部のプロ経営者を招聘するなど様々な手法があります。
しかし、自社のことをよく理解していない第三者が承継先になった途端、上手く行かない企業が急増します。
従業員が退職する、2年で社長が退任する、再度会社を売却されるなど、承継に失敗した企業が後を絶ちません。
従業員承継(非同族経営)とは

親族内承継親族外承継
従業員・役員その他の第三者
MBO・EBOM&AIPO(上場)外部招聘
経営者の子や兄弟姉妹・甥・姪などの親族に引き継ぐ自社の従業員や役員に引き継ぐ株式や事業を売却して引き継ぐ株式公開により証券取引所に上場するプロ経営者・取引先・起業希望者などから後継者を招聘して引き継ぐ

従業員承継で会社を守るには

従業員承継に二の足を踏む経営者が多いことも事実です。その理由は「従業員に会社を任せると経営が不安」だからです。
しかし、従業員承継は以下の3つの壁を乗り越えることができれば上手くいきます。

経営者と従業員との間にある「価値観の壁」

価値観とはすなわち、「覚悟の差」です。私は経営能力よりも「価値観」が肝であると考えています。
オーナーは自社のためなら個人保証を辞さず、自身の生活資金を会社につぎ込み、何としてでも会社を存続させます。
オーナー経営者は自社という船が沈むときは一緒に沈みます。自社と一蓮托生であり、一心同体な経営者が特に非上場企業には多いのです。
一方、従業員はどうでしょうか?いざとなれば転職を行い、船を移ることができます。
最近では年収を上げる手段として転職が一般化し、「転職は悪ではない」というイメージが浸透しつつあります。
すなわち、従業員は今勤める会社(船)と一緒に沈む必要がありません。

価値観の壁≒覚悟の差がなぜ生じるのか。これは育ってきた環境が大きく異なるからです。
育つ環境が異なれば、考え方、お金の遣い方、経営の仕方は異なるものです。

これを乗り越えるには「経営感覚」を養うことが不可欠です。すなわち、「意思決定の判断軸」です。
オーナー社長とは全く同じではなくとも、後継者なりの正しい判断軸を持つことです。
ある経営者は最終決定を「良心に従う」と決めています。
また、かの有名な稲森和夫氏は「人として正しいのか」を軸とされていました。

私が思う、後継者が持つべき軸とは「自分より相手のことを優先した判断か」です。
自分の感情や個人的な都合よりも、「従業員にとって良いことか」「会社全体の未来にとって最善の道は何か」という視点から言動や行いを選択する。
その積み重ねこそが、後継者の人格を磨き上げると思います。そして、その過程で、能力は自然と身につくはずです。
まず、社長は後継者へ自分なりの軸を持たせるように指導をしてください。

後継者の資産不足による「株式の壁」

オーナー家が株式を手放す場合、株式を分散させずに、後継者が過半数以上の議決権を抑えることが理想です。
しかし、個人で一定割合の株式を保有すると、必然的に株価が高くなり、必要資金が増加します。
実現するためには、配当還元方式や自社株買い、役員持株会などを活用してできる限り後継者の負担を減らすことが必要になります。

以下の資料やコラムも参考にしてください。

株価低減の徹底攻略法
なぜ、非上場企業が持株会を設立するのか?

家族や他の従業員に生じる「感情の壁」

① 後継者の家族

後継者の家族はサラリーマンの家庭であり、経営者ではありません。したがって、会社という存在に対する考え方が経営者とは異なります。
会社とは「給与を安定してもらう場所」と考えています。
したがって、後継者が会社を継ぐとなった時に「会社を継いで家庭に悪影響は無いのか?」という不安や疑問が生じます。
子供がいる場合などは、特に顕著ですが、リスクに対して感度が高いことが特徴です。
したがって、リスクを潰して安心して頂くことを念頭にコミュニケーションを取らなければなりません。

個人保証の解除、経営状況の説明、報酬の説明など配慮するべきことが多くあります。
特に、後継者に負担を強いる場合は、社長のポストを渡す前に必ず後継者のご家族へ説明の場を設けてください。

② 他の従業員

従業員が後継者に指名されるとき、あるいは後継者が社長になるときには「後継者以外の従業員」にも目を向けなければなりません。
後継者には、年の近い先輩後輩、あるいは古参の大先輩がいることも多く、そういった方から後継者が未だに認められていない場合は、社内に混乱や内紛が生じることもあります。
社長の独断で突然決定すると「私は認めていない」となることもしばしば起こり得ます。

特に若い後継者を指名するときは、今までの上司が将来的に部下になることが予想されるため、より一層配慮が必要です。
オフィシャルな場で後継者を指名する前に、古参社員と個別で食事に行き本音で意見交換を行うことなども必要です。
また、後継者自身も古参社員から認められるために日々の行動や発言を改めていく必要があります。
そういったことを指導することも社長の責務です。

 

重ねてですが、従業員承継は

(1)価値観の壁
(2)株式の壁
(3)感情の壁

を乗り越えることができれば上手くいきます。

従業員承継をすべきかどうか悩んでいる経営者はご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修・筆者

上坂研祐
上坂研祐
(株)新経営サービス シニアコンサルタント
滋賀大学経済学部を卒業後、事業会社の管理業務に従事。その後大手コンサルティング会社のマネージャーを経て株式会社新経営サービスに入社。
「経営者に寄り添い、思いを具体化する」を信条とし、中小・中堅企業を中心に事業承継、ホールディングス化構築、グループ経営など財務・組織戦略をメインテーマとして活動。
これまで、親族内の紛争やオーナー家と従業員後継者との争いなど、様々な事業承継の現場に立ち会っている。部分最適に陥らない、全体最適での事業承継・ホールディングス構築支援に強みを持ち、承継後の経営戦略や組織改善の支援まで手掛ける。