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事業承継にホールディングス化を活用する3つのメリット

事業承継にホールディングス化を活用する3つのメリット

近年、ホールディングス化を検討される企業が増えてきております。

ホールディングス化というと大企業が複数の有名子会社を束ねる、M&Aによる規模の拡大というイメージを持たれることが多いのですが、実は中小企業でもホールディングス化は進んでいます。

なぜ、中小企業でホールディングス化が進んでいるのか、今回は事業承継の視点からその理由を解説していきます。

なぜ今、ホールディングス化が注目されているのか

中小企業庁が指摘するように、中小企業経営者の高齢化が進む中、円滑な事業承継は重要な経営課題となっています。

こうした状況を背景に、従来の後継者に自社株式をそのまま引き継がせるという方法だけでなく、持株会社を設立して株式や経営権を集約するホールディングス化も事業承継の選択肢として注目されています。


(出典:2024年版中小企業白書(中小企業庁))
(参照:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_3_6.html

また、株式会社Compalyzeの調査では、社名に「ホールディングス」「HD」「Holdings」を含む会社の年間新設数が、2016年の960社から2025年には1,999社へと増加しています。

(出典:「ホールディングス」を名乗る会社が10年で約2倍 ─ 会社を「分けて束ねる」経営の広がりを全国2.4万社の登記から読む)
(参照:https://compalyze.co.jp/journal/holdings-formation-trend

もっとも、これらの数字には、事業承継だけでなく、M&Aやグループ再編、資産管理などを目的とする会社も含まれているため、事業承継目的のホールディングス化だけがどの程度増えたかを示すものではありません。

しかし、持株会社という経営形態が企業規模を問わず広がる中、自社株式の集約や経営権の安定、複数の後継者への役割分担などを図る方法として、事業承継の場面でも活用が検討されるようになっています。

ではなぜ、単純な株式承継ではなく、持株会社という段階を経て承継するスキームが選ばれるのでしょうか。
その背景には、従来型の承継が抱えるいくつかの構造的な課題があります。

従来の事業承継が抱える3つの課題

事業承継において特に課題となっているのが株式の承継です。
まずは、株式を承継するうえで課題となっている点について整理します。

① 株式分散リスク

経営者に複数の相続人がいる場合、遺産分割協議によって株式が各相続人に分散してしまうことがあります。

株式が分散すると、後継者が経営権(議決権)を確保できなくなり、意思決定のたびに他の株主の同意が必要になるなど、経営の機動力が損なわれるリスクがあります。

そのため、株式の承継においては分散するリスクをできる限り排除することが重要です。

② 株式の買い取り、または納税資金の負担

非上場株式は、純資産価額方式や類似業種比準方式(2026年8月現在)によって、株式の評価額を算定しますが、業績が好調な会社や、含み益の大きい資産(土地や有価証券等)を保有する会社ほど、株式の評価額が高額になりやすい傾向があります。

評価額が高くなるほど、後継者は先代から株式を譲渡してもらうための資金を用意しなければなりません。

もし、先代から贈与または相続という形を取ったとしても、相続税・贈与税を負担するため、いずれにしても資金の確保が承継の大きな障壁となります。

③ 経営と所有の未分離

中小企業では、経営者個人が会社の借入れに対して個人保証を入れているケースや、個人資産と会社の事業資産が切り分けられていないケースが少なくありません。

こうした状況では、事業承継に伴い経営権だけでなく、個人保証や事業に関わる資産についても後継者への引継ぎが必要になります。

その結果、後継者は会社を経営する責任に加え、個人としても資産や債務に関するリスクを負うことになり、承継そのものが大きな負担となりかねません。

事業承継でホールディングス化が活用される3つの理由

こうした各課題に対応する手法として、持株会社への移行が注目されています。

実際の手法について以下の三点からお示ししたいと思います。

① 持株会社への株式集約による経営権の一元化

事業会社の株式を新設した持株会社に集約し、後継者は持株会社の株式のみを所有すればよいという体制を作ることで、事業会社の株式が外部に分散することを防ぎ、経営権をホールディングスに一元化できます。

これにより、後継者の意思決定がスムーズになり、承継後も安定的な経営が実現できます。

② 株価対策としての機能

後継者は、新設した持株会社の株主として、事業会社の信用を背景に銀行あるいはファンドから融資を受け、先代からの株式買い取り資金に充てるという流れです。

後継者個人が直接資金を拠出することなく、持株会社を通して事業会社を支配下に置くことができます。

また、持株会社を活用したグループ再編は、株式等保有特定会社(※)に該当しないよう事業実態を持たせるなど、適切に設計することで株式評価額の圧縮につながる場合があります。

評価額を抑えることは、オーナーに万が一のことがあった場合の相続税の負担軽減や、後継者による株式買い取り資金の負担軽減になります。

※株式等保有特定会社:保有する総資産のうち、株式や出資金などの割合が50%以上である会社

③ 経営と資産、リスクの整理がしやすくなる

ホールディングス化に伴うグループ再編では、事業会社が保有する不動産などを持株会社や資産管理会社に集約し、事業運営と資産保有の役割を分けることができます。

これにより、後継者が引き継ぐ事業・資産・リスクの範囲が明確になり、会社と経営者個人の資産や債務が混在した状態を整理しやすくなります。

事業承継を機に財務基盤や資産関係を見直すことで、後継者が個人として負うリスクの軽減につながる可能性があります。

ただし、個人保証はホールディングス化によって自動的に解除されるものではなく、金融機関との協議が必要です。

ホールディングス化にあたっての注意点

一方で、ホールディングス化は万能の解決策ではありません。

会社の設立や組織再編には一定のコストと手続きに手間がかかりますし、設計を誤ると株式等保有特定会社に該当し、評価額が上昇するケースもあります。

ホールディングス化が有効に機能するかは、既存の事業内容、資産構成、後継者候補の状況など、会社の実情によって大きく異なります。

導入を検討される際は、専門家の関与のもとで、自社にとって最適な設計を検討することをお勧めします。

まとめ

事業承継は、単なる経営者交代の機会ではなく、企業がさらに成長・発展するための重要な転換点です。

ホールディングス化は、株式分散の防止、株式の買い取り・納税負担の軽減、リスク分離といった複数の課題にアプローチできる手法として、多くの中小企業から注目を集めています。

ただし、事業承継だけを目的としたホールディングス化は後悔する会社も多く存在しています。

その理由は、ホールディングス化があくまで事業承継を円滑に進めるための手段であり、それ自体が承継後の経営課題を解決してくれるわけではないからです。

目的や将来の経営体制を十分に整理しないまま進めると、組織構造が複雑になり、管理コストや税務・法務上の負担が増えるなど、かえって経営の柔軟性を損なう可能性があります。

詳細は、また別のコラム『ホールディングス化の成功と失敗の分かれ道』にて紹介しますので、是非そちらもご参考いただければと思います。

 

自社の株式評価や資産構成を早期に把握し、承継の選択肢の一つとしてホールディングス化を検討することが、円滑な事業承継への第一歩となるでしょう。

この記事の監修・筆者

柿本 亮輔
柿本 亮輔
コンサルタント
大手IT企業、製薬会社、M&A仲介会社を経て当社に入社。
幅広い業界での知見を活かし、直近ではメディカル業界におけるM&A支援に従事。
様々な事業承継案件に携わる中で、経営支援から事業承継の実現まで伴走できるコンサルタントの必要性を実感し、現職に至る。
少子高齢化や国際情勢の変化など、中堅・中小企業を取り巻く環境が大きく揺れ動く中、オーナー経営者様一人ひとりに寄り添ったきめ細かいコンサルティングを心掛けている。